聖書の預言
私たちは各国の勢力関係や政治、経済事情を分析して、将来の見通しをつけようとします。それは時に成功しますが、また時には思いもよらぬ事件が起こって、私たちの期待を裏切ってしまいます。
聖書は「あなたがたは、あすのこともわからぬ身なのだ。あなたがたのいのちは、どんなものであるか。あなたがたは、しばしの間あらわれて、たちまち消え行く霧にすぎない」(ヤコブの手紙4章14節)と言っています。明日の自分の生命さえわからない人間が、遠い将来を確実に見通すことはむずかしいのです。神はこの世界に対して持っておられるご自分の計画を示すために、預言者をおつかわしになりました。預言者は旧約聖書のある場所では、「先見者」とよばれていますが、これは「見る者」という意味です。すなわち神の知恵によって将来を見た、あるいは示された人です。聖書の中には多くの預言が与えられています。それは私たちの前途の道しるべとなり、神ご自身が歴史を支配しておられることを示しています。また神がどのように人類の救いの計画を実行されるのかを明らかにしています。
ダニエル書2章に預言された世界歴史
今から約2500年前に、神は世界歴史のアウトラインをお示しになりました。それは旧約聖書のダニエル書2章に記されています。ダニエル書の信頼性は長い間、一部神学者の攻撃の的でしたが、考古学の発達はその記録の正しいことを証明し、歴史の歩みはその預言の正確さを証拠だてました。
古代バビロンの王ネブカデネザルは、ある夜、夢を見ました。その夢は彼の心に深い印象を与えたのですが、目がさめたときには、その夢の一部始終を忘れてしまったのです。そこで王は博士、法術士、魔術士、カルデヤ人等の側近の者を召してこの夢を尋ねました。これらの知者たちは、もし夢が示されたならば何とか夢を解き明かすことができたでしょうが、夢そのものがわからないので手のくだしようがありませんでした。怒った王はバビロンに住むすべての知者を死に定めました。
これに先立って、ネブカデネザルの軍隊がエルサレムを占領したとき、多くのユダヤ人を捕虜としてバビロンに連れてきました。王はその中から優秀な青年を選んで、バビロンの大学で教育を授け、宮廷に仕えさせていました。その中にダニエルと3人の青年がいました。
学者や魔術士たちとともに死に定められたことを聞いたダニエルたちは王にしばらくの猶予を求め、天の神に夢が示されるように祈りました。ダニエルはその夜、幻の中にこの秘密を示されたのです。
王の前に立ったダニエルは、「しかし秘密をあらわすひとりの神が天におられます。彼は後の日に起るべき事を、ネブカデネザル王に知らされたのです。あなたの夢と、あなたが床にあって見た脳中の幻はこれです。王よ、あなたが床におられたとき、この後どんな事があろうかと、思いまわされたが、秘密をあらわされるかたが、将来どんな事が起るかを、あなたに知らされたのです」(ダニエル書2章28、29節)と言いました。この幻によって歴史のアウトラインが示されたのです。
幻の内容は、聖書には次のように簡潔に記されています。
「王よ、あなたは一つの大いなる像が、あなたの前に立っているのを見られました。その像は大きく、非常に光り輝いて、恐ろしい外観をもっていました。その像の頭は純金、胸と両腕とは銀、腹と、ももとは青銅、すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。あなたが見ておられたとき、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみがらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました」(ダニエル書2章31~35節)。
人類の歴史が人体をもってあらわされたことは興味深いことです。歴史発展の生命的なつながり、そしてその背後にこれを支配し、制御し、生命を与えておいでになる方があることを暗示しています。
この像の意味も、ダニエルは神の示しに従って王の前に解明しました。
像の夢の解説
まず金の頭はバビロンをあらわしていました。
これは実に的確な象徴でした。バビロンは古代における世界の驚異の一つでした。バビロンの廃墟の中から発掘された石片には「われ、バビロンの防壁を完全に強化せり。この都に永遠の栄えあれ」と記されていました。
要害堅固で決して滅びることはないと思われたこの都も、「あなたの後にあなたに劣る一つの国が起ります」(ダニエル書2章39節)という言葉の成就をはばむことはできませんでした。
この預言が与えられてから約70年後、バビロンは一夜のうちに滅び去ったのです。しかしこの新興国メド・ペルシャは、その繁栄においてはバビロンに劣っていました。
「また第三に青銅の国が起って、全世界を治めるようになります」(ダニエル書2章39節)。
メド・ペルシャに次いで、さらに一つの国が起こります。世界歴史をひもとくと、それはアレキサンダー大王を指導者とするギリシヤでした。このようにして世界の指導権は、アジアからヨーロッパに移りました。しかるにティベル河畔に6世紀にわたって勢力を蓄積しつつあったローマは、紀元前168年ピュドナの戦いにおいて、古代文明世界の覇者としての地位を勝ち得ました。
「第四の国は鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべての物をこわし砕くからです。鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう」(ダニエル書2章40節)。
「鉄の王国ローマ」という表現を用いています。しかし、鉄の王国ローマも永久に世界を支配することはできませんでした。
「あなたはその足と足の指を見られましたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄であったので、それは分裂した国をさします」(ダニエル書2章41節)。
はたして、西暦351年から467年に預言通りのことが起こりました。ローマ帝国は、10か国に分裂したのです。その後、カール5世、ナポレオン、ドイツ皇帝のウィルヘルム2世、ドイツ総統のヒトラーたちが、欧州を統一しようと企てましたが、不成功に終わりました。
預言の次の言葉は、「あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、それらは婚姻によって、互に混ざるでしょう」(ダニエル書2章43節)です。武力でできないところを外交的手段、国際結婚をもって補おうとしたのです。数世紀にわたって欧州の王室は国際結婚によって結ばれてきました。しかし統一は実現されませんでした。
これまで幾多の同盟、条約が結ばれてきましたが、ヨーロッパの国々は統合できませんでした。「しかし鉄と粘土とは相混じらないように、かれとこれと相合することはありません」(ダニエル書2章43節)との預言通りの状況が現在まで続いています。
神の光に照らされるとき、人間の野望や勢力に支配されているかに見える人類の歴史の中においても、その背後で働いている神ご自身の力を悟ることができます。国家の興亡、民族の繁栄衰微は、すべて神の御手の中にあります。そしてそこに、「正義は国を高くし、罪は民をはずかしめる」(箴言14章34節)という不変の原理が働いているのです。神は「時と季節とを変じ、王を廃し、王を立て……られる」(ダニエル書2章21節)のです。この全能の神の前には、「地に住む民はすべて無き者のように思われ、天の衆群にも、地に住む民にも、彼はその意のままに事を行われる。だれも彼の手をおさえて『あなたは何をするのか』と言いうる者はない」(ダニエル書4章35節)のです。
聖書の言葉に照らして見るとき、世界歴史の推移がよく理解できます。これは皆様にとっては、新しい歴史観でしょうが、その真実性をご覧になることができると思います。国家が神の願われる道に背を向け、国民が堕落していくとき、滅亡を招くに至るのです。歴史を支配する不変の原理があることを考えると、「歴史は繰り返す」という言葉は興味深いものがあります。
わたしたちの時代
さて、次に来るものは何でしょうか。これは私たちの時代です。私たちは現在、世界で繰り広げられている一大ドラマを、毎日深い関心をもってながめていますが、聖書の言葉は、世界の動きの意味と、その将来を確実に示しています。
「それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです」(ダニエル書2章44節)。
神は間もなく一つの国を建てられます。黄金のバビロンも、強力なメド・ペルシャも、文化の栄えたギリシャも、鉄の国ローマもその運命の道をたどりました。しかし、神が建てられる国は永遠の国です。キリストの再臨によって、人類の救いの計画が完成して、救われた者がこの国に受け入れられるのです。この国は、前の四大帝国が実現したように、必ず確実に実現するのです。「その夢はまことであって、この解き明かしは確かです」(ダニエル書2章45節)と結ばれているこの預言の言葉は、今日私たちが特に注目しなければならないものです。私たちは地上歴史のクライマックスに近づきつつあります。
神に基礎を置かないすべてのものは滅び去ります。人間の文化も栄光も草の花のごとく凋落に向かいます。
神は私たちを罪から救って、この新しい永遠のみ国に入れてくださいます。これが聖書の預言が私たちに示している神の約束です。
金=バビロン
金の頭は、紀元前612年~539年まで世界的勢力であったバビロンを象徴しています。
銀=メド・ペルシャ
銀の胸と両腕は、紀元前539年~331年まで世界帝国であったメド・ペルシャを象徴しています。
青銅=ギリシヤ
青銅のももは、紀元前331年~168年まで世界を征服したギリシヤを象徴しています。
鉄=ローマ
鉄のすねは、紀元前168年~西暦476年まで世界的覇権を享受したローマを象徴しています。
鉄と粘土=ヨーロッパ
一部が鉄、一部が粘土の足は、まとまることのない分裂した帝国を表しています。西暦476年以降、1つの勢力が世界を支配したことはなく、この分裂はキリストが戻られるまで続きます。
ヨーロッパ統合に関する現在の情勢
婚姻関係ではない方法で統合しようとする動きもありました。例えば、フランス皇帝のナポレオン、ドイツ皇帝のウィルヘルム2世、ドイツ総統のヒトラーなどです。彼らはヨーロッパの統合を目指しましたが、すべて失敗に及んでいます。
また世界大戦以後は、欧州連合(EU)によってヨーロッパを統合する懸命の努力がなされてきました。この動きは、1946年にイギリス首相ウィンストン・チャーチルが「ヨーロッパ合衆国を造ろうではないか」と言い出したことから始まったと言われています。
まず、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、欧州経済共同体(EEC)などが組織されました。そして、1967年にこれらをまとめるかたちで欧州連合(EU)が発足しました。2002年には共通の通貨単位ユーロの紙幣やコインが流通するようになりました。また、2009年12月1日に欧州連合の憲法にあたる「新基本条約」(リスボン条約)が発効し、同時に欧州連合の「大統領」とも言われる理事会議長としてヘルマン・ファン・ロンパウ(彼は初代)が選出されました。統合推進は、そこまで進んできました。
しかし、「鉄が陶土と溶け合うことがないように、ひとつになることはありません」(ダニエル書2章43節、新共同訳)という預言のとおり、欧州連合の道にかげりが生じてきています。(この原稿は2011年9月に書いていますが)加盟国の中のギリシャや、そのほかの国が、財政破たんに陥り、その対応をめぐって意見の対立が生じ、統合に向けての動きはとまってしまったようです。ここまで私たちは預言のとおりに世界が動いていることを見てきました。
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