【サムエル記下解説】神は義人を栄えさせられる【2章、6章、8~10章解説】#9

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神の目的は成就する

サタンも悪人も,神に信頼する者たちに対する神の計画の成就を妨害することはできません。

過渡期 サウルの死によって,ダビデが故郷に帰る道が開けました。自分が神によってイスラエルの新しい王に選ばれたことを知っていましたが,ダビデは慎重に行動しました。すべての部族の忠誠を勝ち取るためには,サウルの根強い敵意によって植えつけられた影響を取り除かねばなりませんでした。また,ガテに16カ月いたことによってもたらされた偏見にも打ち勝たねばなりませんでした。それはユダの兄弟たちを遠ざけてしまっていました。こうした問題を解決するためには,大いなる知恵と悟り,とりわけ神の導きが必要でした。

ダビテが選んだ原則は,神が宇宙の争闘を解決するために用いられた原則,つまり臣民に忠誠を求めることでした。神は友情と愛によって私たちをご自分のもとに導かれます。

Ⅰ. 油注がれた王ダビデ(サムエル記下2章11節~17節)

サウルの喪が明けたとき,ダビデはまずどこに行きますか。

サム下2:1

ダビデが神に愛された理由の一つは,彼がいつでも神のみこころを求め,それに従おうとしたことにあります。このことはダビデの詩篇に示されています。「主よ,あなたの大路をわたしに知らせ,あなたの道をわたしに教えてください。あなたのまことをもって,わたしを導き,わたしを教えてください。あなたはわが救の神です。わたしはひねもすあなたを待ち望みます」(詩25:4,5-同5:8,27:11,119:33比較)。

ダビデはどんな指示を受けましたか。その結果はどうでしたか。

サム下2:1~4

ダビデは自分の民,ユダの人々のところに行き,彼らの歓迎を受けますが,このことは彼のすばらしい機知と外交的手腕を表しています。もし初めから全イスラエルの信頼を得ようとしていたなら,統一イスラエルを支配する機会を失っていたかもしれません。

ダビデはユダの新しい王として,まず初めに何をしましたか。

サム下2:5~7

サウルの憎悪と敵対行為にもかかわらず,ダビデは王に対する真心からの愛を表します。おそらくダビデは,子供の頃,サウルのためにたて琴をひいたことを覚えていて,そのことによって彼は決して忘れることのできない優しさと敬意を抱いていたのでしょう。彼はヤベシ・ギレアデの人々を尊ぶことによって,サウルの家に最後の敬意を表しました。それによって,彼は自国民の信頼を勝ち取ったのでした。

◆私は寛大な心で敵をゆるしているでしょうか。愛と和解の精神をもって人々を主のもとに導いているでしょうか。

Ⅱ. 陰謀,反逆,報復(サムエル記下2章8節 ~4章1 2節)

ダビデはヘブロンにおいて統治していましたが,サウルの将軍,アブネルも国を支配しようとしていました。サウルの三人の息子は戦死し,いちばん若い息子,イシボセテだけが生き残っていました。

アブネルはおそらく,サウルが眠っていたときにやりと水筒を奪われたためにダビデに責められたことを苦々しく思っていたことでしょう(サム上26:13~16参照)。彼はまた個人的な野望から弱いイシボセテを支援しようとしたのでしょう。

イシボセテが北の諸部族の王となったために,どんなことが起こりますか。

サム下2:12~32

アブネルがダビデに降伏したのはなぜですか。その結果はどうでしたか(サム下3:6~27)。この反逆に対するダビデの態度を見て,人々はどうしましたか

サム下3:31~39

ヨアブの振る舞いに悩まされたダビデは,正直に打ち明けました。「わたしは油を注がれた王であるけれども,今日なお弱い」(サム下3:39)。ヨアブの権力と影響力のゆえに,またダビデの地位がまだ確立されていなかったために,ダビデはこの困難な状況に対して打つべき手を打っていませんでした。彼は罪の報復を主の手にゆだねました(詩94:1参照)。

ダビデが全イスラエルの王となるまでには,多くの血が流されました。彼はこのような所業をどう思っていましたか。

サム下4:9~12

ダビデの治世の初期に起きた数々の出来事は,人間の心が神から離れるとどれほど堕落するかを明らかにしています。ダビデは裏切り行為をしてまで自分の王国を確立しようとは望みませんでした。問題を解決するうえで示されたダビデの知恵と手腕は,人々の信頼を勝ち取りました。イスラエルの指導者たちはいま,自分たちが強力な霊的君主を必要としていることを認めました。ダビデこそ,その人でした!

Ⅲ. ヘブロンからエルサレムへ(サムエル記5章1節~10節,17節~25節)

イスラエルの長老たちがダビデを新しい王として選んだのは,どんな理由からでしたか。

サム下5:1~3

ヘブロンにおける即位は,ダビデにとっては三度目の即位でした。神の計画が明らかにされたとき,サムエルはベツレヘムでダビデに油を注ぎました。ユダの人々は数年前にダビデに油を注ぎました。そして今,ダビデは力や威圧によることなく,統一イスラエルの王となりました。「革命は,彼らの従事していた偉大な働きにふさわしく,静かに厳然と行なわれた」(「人類のあけぼの』下巻394ページ)。

キリストの型,ダビデ 神はダビデをご自分の民の牧者に定められました(サム下5:2参照)。ダビデの統治は来るべきメシヤを予示するものとなるのでした。羊飼いダビデは神の群れの牧者でありまた来るべき「よい羊飼」の型でした(ヨハ10:11,イザ40:11参照)。ダビデは苦しみ,悲しみ,追放,放浪のすえに王位につきました。メシヤはと自分の民の苦悩と罪を負うためにこの世に来られることによって,王位につかれました(イザ53:3~7参照)。

ダビデはエブス人を撃つ者に何を約束しましたか。だれがこの挑戦を受け入れましたか。彼はどのようにしてそれを遂行しましたか。

歴代上11:6(サム下5:6~9比較)

新しい首都 統一王国の王として,ダビデが最初に行ったことは王位によりふさわしい場所をさがすことでした。ヘブロンはイスラエルの南にあって,ユダの重要な中心地でした。しかし,賢明な政治家,ダビデは,首都はほかの10部族にもっと近い場所にあるべきだと考えました。ユダとベニヤミンの境界にあるエルサレムは,新しい統一王国にとって戦略的な場所,また政治的拠点となるのでした。エルサレムの歴史は古く,紀元前3000年にさかのぼります(ヘブ7:1,2,ヨシ15:63,士師1:21参照)。それは,キリストがあがなわれた者たちと共に住まれる天のエルサレムの型となりました(黙示21:2参照)。

ダビデはどのようにしてエルサレムを攻略したか 「門の外にあるギホンの泉から町の中に水を引くために,エブス人は岩を18メートルほど掘って水道を作り,水を貯水池にまで引いていた。それは12メートルの垂直の縦穴に結ばれ,その最上部は町に通じる階段または傾斜路になっていた。町の女たちは縦穴の上までおりてきて,ため池にバケツを入れては,あえて町の外に出ることなく水を確保していた。水路を伝って縦穴を登ることによって,エブス人の首都に入ることができた。……

いったん町に入ってしまえば,ダビデの主力軍に対してたやすく門をあけることができたことだろう。というのは,わずかな守備兵だけが町の門を固めていたからである」( 「S D A 聖書注解」第2巻620ページ)。

サムエル記下5:10によれば,イスラエルの牧者としてのダビデの成功の秘訣はどこにありましたか(歴代上11:9比較)。これに関連して,詩篇20篇を,とくに5,7節に注意しながら読んでみましょう。

ダビデはペリシテ人と戦うまえに何をしましたか(サム下5:19,22,23)。その結果はどうでしたか(20, 25節)。

霊的教訓 イエスはダビデの成功に例示されている霊的教訓を強調されました。「あなたがたがわたしにつながっており,わたしの言葉があなたがたにとどまっているならば,なんでも望むものを求めるがよい。そうすれば,与えられるであろう」(ヨハ15:7)。

Ⅳ. ダビデの家族(サムエル記下3章2節~5節,12節~16節, 5章13節~16節, 6章20節~23節)

聖書が真実であることの証拠の一つは,たとえ英雄であろうともその生涯を正直に描写していることです。ダビデは偉大で,賞賛すべき特質を多く待っていました力釘,その彼にも弱さがありました。それは彼の家庭生活に最もよくあらわされています。

ダビデの結婚と子供についてどのように記されていますか。

サム下3:2~5

王は周辺諸国の慣習に従って多くの妻を持ってはならないと,神は宣言しておられました(申命17:17)。当時の王の名声と権力はしばしば婦人部屋の大きさによってはかられました。そのようなわけで,決して容認されることではありませんが,ダビデ(サム下5:13)やのちのソロモン(列王上11:1)が当時の慣習の影響に屈したことも理解できないことではありません。

一夫多妻は当然ながら,混乱,ねたみ,争い,心痛をもたらしました。「ダビデは,多くの妻をめとったための苦しさを,一生を通じて痛感した」(「人類のあけぼの」下巻352ページ)。

ダビデはどのようにして, 彼の初めの妻サウルの娘のミカルを取り返そうとしましたか(サム下3 :12 ~16) 。ダビデとミカルの関係はどんな悲しい結果に終わりますか(サム下6:20~23)。

ダビデは聖なる箱に対する畏敬の気持ちから,自分の王衣を脱いで,祭司たちと同じ亜麻布のエポデを着ました。彼はこうすることによって彼の国民と同等の立場をとろうとしたのでした。「その日,あがめられるのは,主であった。ただ主だけが尊崇の対象とならなければならなかった」(「人類のあけぼの』下巻402ページ)。高慢で冷淡なサウルの娘は,これに耐えることができませんでした。彼女は,自分自身と自分の父を責めるようなダビデの敬けんさと謙虚さをあなどりました。

V. 敵に対する勝利(サムエル記下8章1節~14節, 10章1節~19節)

サムエル記下8:1~12に記されたダビデの勝利について読んでみましょう。彼が征服した国民の名をあげてください。

「サウルの統治のあいだ,ダビデはモアブの王と折り合いがよかった。というのは,彼が自分の父母をそこに送っているからである(サムヒ22:3)。ダビデの會祖母,ルツはモアブ人であった(ルツ4:13)。このことから,ダビデがモアブ人を征服し,彼らを厳しく扱ったのは(サム下8:2),彼らが何らかの裏切り行為によってダビデとの約束を破ったためと推測される。あくまでも推測であるがダビデが宿敵であるペリシテ人と生死にかかわる戦いをしていたときに,彼らが機に乗じてダビデを攻めたことはあながち考えられないことではない」(デービット.F・ペイン「主の王国』46, 47ページ)。

以前の同盟者がダビデのしもべたちを辱めたのはなぜですか(サム下10:1~5)。その結果どうなりましたか(6~19節)。

この物語は当時の政治的状態を知る助けになります。絶えず勢力争いをしていたシリア・パレスチナ地方の国々は,しばしば軍事同盟を結んで,国家としてのイスラエルの存在を脅かしていました。彼らは軍事的な力に頼りましたが,ダビデと彼の軍隊は万軍の主に頼りました。

「われらはあなたによって,あだを押し倒し,われらに立ちむかう門を,み名によって踏みにじるのです」(詩44:5)。(4~8節も読んでください)。

Ⅵ. ダビデの公正な支配(サムエル記下8章15節~9章13節)

ダビデの統治に対するこの賞賛は,彼のどんな英雄的行為や軍事的勝利にもまさるものです。「ダビデはイスラエルの全地を治め,そのすべての民に正義と公平を行った」(サム下8:15)。支配者に与えられるこれ以上の賞賛があるでしょうか。支配者が正義と公平を行うことほど,国家に幸福をもたらすことがあるでしょうか。

ダビデはメピボセテをどのように扱いましたか。サム下9章

ダビデの要求(9:1~3)
メピボセテが足なえになった事情(4:4)
ダビデとメピボセテの出会い(9:6~8)
成就した約束(9:9~13-サム上20:14~17比較)

ダビデ王の決心 ダビデ王の統治の原則ともいえる詩篇101篇を読んでみましょう(つぎの点に注意しながら,できれば最近翻訳された聖書を読んでください)。

●正しく生きる(2節)
●きよく生きる(2節)
●悪を黙認しない(3節)
●悪に妥協しない(4節)
●人をそしる者から遠ざかる(5節)
●高慢な人に耐えられない(5節)
●忠実な者と共に住む(6節)
●欺く者はわが家に住むことができない(7節)
●偽りを言う者はわが前に立つことができない(7節)
●不義を主の都から除く(8節)

ダビデはどの程度,この原則に従った生き方をしましたか。

まとめ

ダビデの生涯と経験は心から神に信頼することのすばらしい模範です。何ごとをするにも神のみこころを第一にする人,自分の過ちをすなおに認めて,それを正す人を,神は求めておられます。重大な失敗をおかし,悲しむべき罪におちいったときにも,ダビデはつねに心からの悔い改めと服従をもって主に立ち返りました。

*本記事は、1991年第1期安息日学校教課『危機、変化、挑戦ーサムエル記 上・下』からの抜粋です。

聖書の引用は、特記がない限り日本聖書協会新共同訳を使用しています。
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『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

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