【サムエル記下】危機は品性をあらわす【14章〜19章】#12

目次

力ある神に信頼する 

悩み,拒絶,悲しみのときに,主の力あるみ手に全的に信頼し,心に愛とゆるしをいだく者は,品性においてさらに成長し,人を変える神の恵みを世にあかしするのです。

続くさばき 今週の研究で扱う暗い出来事のなかで,ダビデの品性の二つの特徴が輝いて見えます。その一つは,報復と反逆のなかにあって表された愛とゆるしの精神であり,もう一つは悩みのときの守りである神に対する確固とした信頼と確信です。

ダビデの罪は一連の出来事をひき起こしました。つぎに起こる事件への背景を与えるために,それぞれの事件の発展がくわしく描かれています。

今週の研究の背景 アブサロムは,ダビデの長子で,自分の異母兄弟であるアムノンを殺しました。ダビデの次男(アビガイルによるキレアブ)は幼少のときに死んだと思われます。つぎの王を選ぶことに関して,イスラエルには先例がありませんでしたが,生存している最年長の息子であるアブサロムが王位継承者と目されていました。ダビデもまた自分の後継者について何も指示を与えていませんでした。しかし,彼の三男のアブサロムは明らかに王位をねらっていました。アブサロムがエルサレムに帰ったあと,ダビデは彼と会うことを拒みましたが,このことがアブサロムの野心をあおる結果となりました。ダビデに対する三番目のさばきが,今まさに下されようとしていました。

Ⅰ. 共謀と反乱(サムエル記下14章25節〜15章12節)

アブサロムが人々の人気を得たのはなぜでしたか。サムエル記下の以下の聖句を調べて下さい。

14:25, 26
15:1
15:2〜4
15:5, 6

ダビデは才能があるアブサロムを愛しました。しかし,同時に,彼の罪に対して不快の念を示さなければならないと感じました。アブサロムがエルサレムにあらわれた今,その影響力はダビデの安全を脅かそうとしていました。アブサロムの均整のとれた顔立ち,たえず彼の罪を思い起こさせる妹タマルの存在,それに民の心をひこうとするアブサロムの巧みな策略などが,ダビデの支配に対する反逆を助長しました。

「一般国民の評価するところから見れば,王子は,犯罪者ではなくて,英雄であった」(「人類のあけぼの』下巻434ページ)。

アブサロムはどんな方法によって王に会おうとしましたか。

サム下14:28~33

アブサロムはヨアブに命令することができると思いました。ヨアブがすぐに命令に従わなかったので,アブサロムは彼の財産に損害を与えましたが,これは大変なことでした。しかし,策略にたけたヨアブは当分のあいだ,それにも動じませんでした。アブサロムは王に自分をさばくように要求していますが,このことは,彼が自分の犯した罪に対して何とも感じていなかったことを示しています。ダビデとヨアブがすなおにアブサロムの要求に従っていることからも,彼の尊大さと横暴さがうかがわれます。

ダビデとアブサロムの和解は中途半端なものでした。結果的には,それは全く和解しなかった場合より悪かったことになります。ダビデはさばきを下しませんでした。野心にみちた王子はこれによってさらに自信をつけます。

「王は,次第に人を避け,孤独を好むようになる一方においてアブサロムはなんとかして人心を獲得しようと努めた」(「人類のあけぼの』下巻434,435ページ)。

アブサロムは王位を奪うために,次にどんな陰謀をくわだてますか(サム下15:7~12)。ダビデは彼の陰謀を知っていましたか(9節)。

アブサロムは巧妙な策略家でした。彼は4年かけて人々の心をとらえ,注意深く自分の計画を遂行します(サム下15:7参照)。彼はダビデの議官の一人であったアヒトペルの支持を得ます。アヒトペルはダビデの罪がもたらした結果に不満と憎しみを抱いていました。「最も有能で狡滑な政治家アヒトペルの離反は,ダビデが,彼の孫バテシバに悪を行なって家族をはずかしめたことに対する報復心から起こったものであった」(『人類のあけぼの』下巻440ページ)。

◆ アブサロムは甘やかされて育ったと思いますか。両親の甘やかしは現代の子供たちにどんな影響を与えますか。アムノンとアブサロムにはどんなしつけが必要だったと思いますか。

Ⅱ. ダビデの逃亡(サムエル記下15章13節~16章14節)

ダビデはどのようにしてアブサロムのもとを逃れましたか。

サム下15:13~18

ダビデにとって,反乱は全く突然のものでした。彼にできることはただ逃れることだけでした。しかも,逃れる方向は一つしかありませんでした。北には強力なエフライム族がいましたが,彼らがダビデに忠実かどうかはわかりませんでした。西のペリシテ人の方向に行くこともできませんでした。アブサロムの軍勢はヘブロンから南の方に向かって来ました。ダビデにできることは東の方向,つまりヨルダンの向こうの荒野に逃れることだけでした。ここなら,不慣れなアブサロムの軍勢はすぐには追いつけないと思われたからです。

サムエル記下7:1に描かれたダビデとサムエル記下15:30,16:14に描かれたダビデとを比較してみましょう。この違いはどこから来たのでしょうか。

ダビデははだしで,王衣の代わりに荒布をまとっていました。彼は苦悩と悲しみのきわみにあって,詩篇3篇を書きました。大勢の追手に追われながらも,彼は確信をもって言うことができました。「わたしはふして眠り,また目をさます。主がわたしをささえられるからだ。わたしを囲んで立ち構えるちよろずの民をもわたしは恐れない」(詩3:5,6)。

契約の箱をかついで行こうとする祭司たちに対して,ダヒデは何と言いましたか。

サム下15:24~26

「祭司たちが,エルサレムに引き返したとき,去っていく一団は,一段と暗い陰におおわれた。彼らの王は,亡命者であり,彼ら自身は神の箱にさえ捨てられた追放の身であった。将来は恐怖と不吉な前兆で暗かった」(「人類のあけぼの』下巻439ページ)。

この危機のときに,ダビデに対して怒りをぶちまけた人々がいます。どういう人たちでしたか。

サムエル記下16:1~4
サムエル記下16:5~13

ベニヤミン族で,サウルの親類であったシメイは,ダビデ王に対して怒りをあらわにしました。ダビデのおいで,将軍の一人でもあったアビシャイは,その場でシメイを殺そうとしました。しかし,謙そんで,ゆるしにみちた精神をもっていたダビデはそれを許しませんでした。詩篇7篇はこのときの出来事について歌ったものです。

◆ 敵に対するダビデの態度をキリストの態度と比較してみましょう(イザ53:7, マタ26: 62, 63参照)。偽りの非難を受けると,私たちは自分を防御しようとします。どうすれば防御の気持ちや報復の言葉を抑えることができますか。

Ⅲ. ダビデの友(サムエル記下15章19節〜29節, 8章19節〜32節, 19章24節〜40節)

ダビデの友の-人は追放された王にどんな援助の手をさしのべましたか。

サム下15:19~23

このときにさしのべられた友人たちの忠誠と真実は,ともすれば暗くなりがちなダビデの境遇に明るさを与えたに違いありません(蔵17:17参照)。ペリシテ人の町,ガテから来たイッタイと彼の600人の部下はヘブル人の宗教に改宗し,ダビデの護衛として仕えました。イッタイはアブサロムと戦った三人の将軍の一人でした(サム下18:2参照)。

アヒトペルがアブサロムの側についたと聞いたとき,ダビデは彼の計略を破ってくださるように神に祈りました。神はこの祈りにどのように答えられましたか。

サム下15:31~37,16:15~19, 17:1~14,23

だれがダビデの情報提供者として働きましたか。

サム下15:27,28,17:15~22

ギレアデにいたダビデの友人たちはどのように彼に仕えましたか。サム下17:24,27~29

友人の名前
提供した品物

ギレアデは敵の攻撃を受けやすい立場にありました。ギレアデの裕福な地主たちは,ダビデの保護を求めて,豊かな物資を提供しました。

ダビデは,かつてサウルの首都であり,またイシボセテがしばらく統治したときの首都であったマハナイムで兵を集めました。昔,ヤコブが義父ラバンのもとを逃れ,兄エサウに会うためにやって来たとき,彼はここで神の使いたちに会い,そこを「マハナイム」(二つの陣営)と名づけました(創世32:1,2参照)。主は今,忠実な民を導き,追放された王のために彼らを仕えさせられました。

ダビデはのちに,自分を助けてくれたバルジライに何と言って感謝していますか。

サム下19:31〜39

◆ 困ったときに慰め,助けてくれる忠実な友を持つことはすばらしいことです。困ったときに友から助けてもらった経験があればあかししてください。

Ⅳ、アブサロムの統治と死(サム下16:15~18:18,18:33~19:7)

ダビデに対するナタンの預言には,ダビデがひそかに罪を犯したけれども公に恥辱を受けるという意味がありました。アヒトペルは今,この預言を成就する扇動者となりました。もしダビデとアブサロムが将来,和解するようなことになれば,自分の立場が危くなると,アヒトペルは考えました。そこで彼は,アブサロムにこのような憎むべき行動をとるように勧めます(「人類のあけぼの』下巻445 446ページ)。アブサロムは今,王の婦人部屋を取り上げることによって,いわば背水の陣をしいたのでした(サム下16:20~23参照)。

ダビデはアブサロムと戦うためにどんな準備をしましたか(サム下18:1~5)。王に対する人々の愛と関心がどのように示されていますか(3節)。アブサロムの扱いについて,ダビデはどんな命令を与えていますか(5節)。

親なら理解できることですが,反逆した息子に対するダビデの愛とあわれみの情が王としての冷静な判断よりまさっていました。もしアブサロムが生きのびるなら,王位は危険にさらされるでしょう。二人の王が存在する余地のないことを,ヨァブは知っていました。

木の多い荒地はどんな点でダビデにとって有利でしたか(サム下18:6~8)。アブサロムはどのようにして死にましたか(9~15節)。

ヨアブは二度,ダビデとアブサロムを和解させようとしました。しかし,彼の信頼はみじめにも裏切られました。彼はそこで,アブサロムを助けるようにというダビデの命令を無視します。諸悪の扇動者に対しては一つの方法しかありませんでした。彼は一撃のもとに反逆を終わらせ,その知らせを伝えるラッパを吹きました。

ヨアブはアブサロムの死を知らせるためにだれをダビデのもとにつかわしましたか。それに続く出来事にはどんな意味がありますか。

サム下18:19~32

この興味深い出来事は状況の複雑さを示唆しています。戦いはダビデ軍の勝利に終わり,王位は守られました。しかしヨアブは,喜ばしい勝利の知らせもダビデにとっては悲しい知らせであることを知っていました。ヨアブがなぜアヒマアズよりもクシ人を使者に立てようとしたのか,またアヒマアズがなぜこれほど使者になりたいと望んだのかはわかりません。ダビデのもとに着いたとき,アヒマアズは大切な伝言を伝えることができませんでした。

アブサロムの死を知ったダビデはどうしましたか(サム下18:33,19:1~4)。ヨアブの非難(5~7節)と王の応答(8節)から,つぎの人たちについてどんなことがわかりますか。

ダビデは深い悲しみに沈みました。彼は自分自身の罪のために,もう一人の息子を失ったのでした。しかし,王である彼は民に対して責任を負っていました。民がダビデのためにいのちをかけて戦ったのに,ダビデは自らの悲しみで沈んでいました。このことが,粗野で無骨なヨアブを怒らせました。ダビデはヨアブの厳しい叱責にも憤慨することなく,すぐに町の門に出て,家来たちを迎え,励ましました。

◆ 自分の子供を愚かさのゆえに亡くした親を,あなたはどのように慰めますか。子供を正しく教育しなかったことを責めますか。あるいは,子供の罪の言いわけをしますか。

V. 回復されたダビデの王国(サムエル記下19章8節~39節)

王権を回復したあとでダビデが最初にしたことの一つはどういうことでしたか。

サム下19:13

ダビデのおいにあたるアマサはアブサロム軍の長でした。彼がダビデ軍の長になるならば,アブサロムの部下たちも忠誠をつくすことでしょう。政治的な動機からなのか,横暴なヨアブを失脚させる意図からなのかはわかりませんが,ダビデは果敢に行動しています。

王位を回復したあと(サム下19:15~18),ダビデはつぎの人々をどのように扱いましたか。このことは彼の品性についてどういうことを教えていますか。

シメイ(23節)
ヂバ(29節)
メピボセテ(26~30節)

他人にあわれみとゆるしを示さないかぎり,人は神のあわれみとゆるしにあずかることはできません。ダビデはこの教訓を学んだのですた。

まとめ

たとえ自分自身の過ちによって不幸な目に会うことがあっても, 神は決して私たちをお見捨てになりません。ダビデを危機から救ったのと同じ信仰と信頼を,私たちも神に対して持つ必要があります。暗い谷間を過ぎるときにも,私たちはダビデと同じあわれみを受けることができます。

*本記事は、1991年第1期安息日学校教課『危機、変化、挑戦ーサムエル記 上・下』からの抜粋です。

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