【サムエル記下解説】罪とその結果【11〜14章解説】#11

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人間を苦境から救う神のあわれみ

罪はいつでも恐ろしい結果をもたらしますが,罪をゆるし,いやす神のあわれみと力は人間を苦境から救ってあまりあるものです。

高慢は堕落に先だつ 今週,学ぶ諸事件は,40年におよぶダビデの治世のほぼ中ごろに起こったものと思われます。彼の息子たちは青年に達していました。ダビデ自身,この頃には円熟の域に達し,賢明で立派な政治家として名をあげていました。彼の王国も周辺諸国に一目を置かれるようになっていました。彼は多くの敵と戦い,これを征服しました。しかし,今,自らの肉の性質という最大の敵と戦わなければなりませんでした。過度の賞賛と賞揚によってかきたてられた高慢の精神が失敗の原因でした。

私たちは,聖書のなかにこのようなことが書かれていないほうがよいと,思うかもしれません。しかし,聖書はものごとを「ありのままに」記しています。過度に人間を理想化することがないためです。私たちは他人の失敗から学ぶことができます。聖書が罪を記録しているのは,罪からのいやしが十分に示されるためです。

堕落への道はふつう,ゆるやかで,気がつかないものです。「人類のあけぼの」下巻415ページには,ダビデを堕落させた要因が五つあげられています。(1)自己過信と自己高揚の精神,(2)甘言と賞賛,(3)権力とぜいたくの誘惑,(4)法律は国民には適用されても王には適用されないという周辺諸国の影響,(5)神に頼らないで自分自身の知恵と力に頼ること。

「敵の働きは,急激ではない。それは,最初は,突然でも驚くほどのものでもない。それは,原則の城塞をひそかにくつがえすことである。それは,初め,神に対する忠誠と,全く神に信頼することを怠るとか,世の風俗や習慣に従おうとする気持ちなどの,一見小さいことから始まる」(「人類のあけぼの」下巻415ページ)。

Ⅰ. ダビデの堕落(サムエル記下11章1節〜25節)

ダビデが姦淫の罪を犯す過程をふりかえってみてください(サム下11:1~25)。とくに次の点に留意してください。

勝利の報酬(1節)
バテシバとは(3節)
結果(5節)

ダビデは以前,賢明で思慮深い婦人によって流血と悲劇から守られたことがありました。ところが今,女性の肉体的な美しさという一時的な快楽のゆえに,彼は罪のわなにおちいります。バテシバはダビデが屋上から自分を見ることができると知っていたのでしょうか。彼が自分にひかれていることを知っていたのでしょうか。ダビデの求愛におだてられたのでしょうか。彼の求愛を拒んだのでしょうか,喜んで受け入れたのでしょうか。彼の態度をたしなめたのでしょうか,本気で従ったのでしょうか。聖書は何も述べていません。いずれにしても,ダビデの罪は彼自身の責任でした。もしバテシバがアビガイルのように振る舞っていたなら,状況はどれほど異なっていたことでしょう。貞淑な婦人の影響力は,はかり知れません。「彼女は宝石よりもすぐれて尊い」(筬31:10)。

ダビデはどのようにして自分の過ちを隠そうとしましたか(サム下11:6~13)。ヘテ人ウリヤが信者であったことがどうしてわかりますか(11節)。

自分で仕組んだわなから逃れるために,ダビデはどんな恥ずべき計画を立てましたか(サム下11:14,15)。その結果はどうでしたか(16~21節)。ダビデは何と言いましたか(22~25節)。

ダビデは情熱の人でした。高尚な目的を持ち,聖霊によって支配されているとき,彼はこの情熱をすばらしい音楽と詩歌をもって世界を祝福するために用いました。しかし,わがままになり,きよい情熱が欲情に変わったとき,彼はたちまち姦淫におちいりました(ヤコ1:14,15参照)。そして,良心の呵責に苦しみながら,彼はふた心,偽り,殺人の淵にはまりこんでいきます。

◆まだキリストを知らなかったとき,別の罪を犯すことによって一つの罪を隠そうとしたことはありませんか。

Ⅱ. 「あなたがその人です」(サムエル記下11章26節〜12章12節)

ダビデがある期間,悔い改めていなかったことはどこからわかりますか。

サム下11:26,27

たぶん,ダビデは自分の罪を隠すことができたと思っていたのでしょう。しかし,すべてをご存じのおかたがおられました(詩篇139:1~12参照)。「ダビデがしたこの事は主を怒らせた」(サム下11:27)。サムエルによってサウルを叱責されたように,神は今,預言者ナタンによってダビデを叱責しようとしておられました。ダビデはサウルのように抵抗し,背くでしょうか。それとも,悔い改めるでしょうか。

神はすべてをごらんになる 「悪人は,ダビデのように,人間から犯罪を隠そうとする。彼らは,悪い行為を人間の目と記憶から永久に葬り去ろうとする。しかし,『すべてのものは,神の目には裸であり,あらわにされているのである。この神に対して,わたしたちは言い開きをしなくてはならない』(へブル4:13)」(「人類のあけぼの』下巻419,420ページ)。

ナタンはダビデの罪をどのように描写しましたか(サム下12:1~4)。ダビデが自分自身に宣告を下したあとで,ナタンはどんな鋭いメッセージを伝えましたか(サム下12:5~12)。

ダビデの心は,正義感がまひするほどには堕落していませんでした。預言者の語った単純なたとえは,ふたたびダビデの激情をかきたてました。しかし,こんどは不正と悪に対してでした。

罪にはその結果がともないます。神の大いなるあわれみとゆるしでさえ,恐るべき因果の法則を変えることができませんでした。ダビデは自分の播いたものを刈り取りました。彼は剣によって自分の罪を隠そうとしたので,剣は一生,彼の家を離れることがなくなるのでした。

この宣告は神の一方的な刑罰ではなく,むしろダビデ自身の行為の必然的な結果でした。ダビデ自身にいくつかの変化が生じました。

1.彼の神との関係は信頼から罪意識へと変わりました。
2.彼の士気は低下し,その結果,国民に対する影響力が弱まり行政上の主導権が失われました。
3.自分自身の家族に対する権威が弱まり,自らの悪い模範のゆえに悪を大目に見る風潮が生まれました。

◆ 自分が救い主を必要とする罪人であるということを確信したときの,みじめな状態を思い起こすことができますか。キリストにゆるしといやしを求めたのはどんな気持ちからですか。

Ⅲ. ダビデの悔い改め(サムエル記下12章13節, 14節)

ダビデはナタンの叱責に対して何と応答しましたか。

サム下12:13,14

ナタンの,問題の扱い方に注目してください。もし直接的に非難していたなら,相手も敵意をもって自分を弁護していたことでしょう。しかし,ダビデに自分自身を非難させることによって,意図していた結果を引き出すことができました。

「預言者の證責は,ダビデの心を感動させた。良心は目ざめた。彼の罪がどんなに憎むべきものであるかが明らかにされた。……他人に対して犯した悪事は,すべて害を受けた者から神へとさかのぼるのである。ダビデは,ウリヤとバテシバの両方に恐ろしい罪を犯したことを痛感した。しかし,神に対する罪は,それより無限に大きかったのである」(「人類のあけぼの』下巻420ページ)。

罪と対決する罪を解決するただ一つの方法はそれと真正面から対決することです。預言者ナタンはダビデの罪をあからさまに叱責しました。ダビデもすなおに自らの罪と罪深い性質を認めて,それを告白しました。こうして,彼はふたたび神のゆるしと祝福を求めることができました。主のゆるしを確信したとき,彼の心は感謝と賛美で満たされました。

ダビデは自分の罪深い性質を認めて,何と告白していますか(詩6:6,38:1~10,51:1~5)。彼の悔い改めが本物であることがどうしてわかりますか。

「こうして,祭司,士師,つかさ’軍人たちの居並ぶ宮廷の国民の公の集会で歌われる聖歌の中で,彼の堕落は最後の世代にまで伝えられるのであった。イスラエルの王は,彼の罪と悔い改めと,神の恵みによって許される希望とを語ったのである。彼は,自分の罪を隠そうとせずに,彼の堕落の悲しい物語によって,他のものが教訓を受けるようにと望んだのである」(「人類のあけぼの』下巻427 428ページ)。

ダビデは神のゆるしをどのように理解していましたか。

詩25:6,7,103:10~14,17,130:4,7,8

自分の罪の悲惨さ,罪悪感,また罪のもたらすさばきと報いに直面したとき,ダビデは福音をより深く理解するようになりました。「主はわれらの罪にしたがってわれらをあしらわず……東が西から遠いように,主はわれらのとがをわれらから遠ざけられる」(詩103:10,12)。ダビデは以前にも増してはっきりと,もし主が私たちの罪を覚えられるなら,私たちはみな救われる望みがないことを理解しました。「しかしあなたには,ゆるしがある」(詩130:4)。

ダビデの求めたゆるしにはどんな霊的経験が含まれていましたか。

詩篇51:7, 32:2
詩篇51:10,  103:3〜5
詩篇51:11, 12
詩篇25:4, 5

ダビデは神の望まれる罪のいけにえについて何と述べていますか。

詩51:16,17

神の喜ばれるいけにえは,謙そんで悔いた心(詩51:17),神のみこころを喜んで行うこと(同40:6~8),それに賛美と感謝(同50 :23)です。

ダビデは,自分が無にひとしい人間であること,またすべてを神のあわれみと慈愛に負っていることを知っていました。彼は悔いた心をもって神にささげ物をささげ,こう言っています。「すべて神を恐れる者よ,来て聞け。神がわたしのためになされたことを告げよう」(詩66:16)。

◆ キリストによって清められたときの喜びを覚えていますか(I コリ・6:11)。生まれ変わった喜びを友人,親戚,また安息日学校の仲間にも伝えたいと思ったことでしょう。

Ⅳ.罪の代償(サムエル記下12章15節~25節,13章1節~39節)

ナタンの叱責が与えられてからどれくらいたってから,ダビデに宣告された四重の刑罰の一つが起こりましたか。ダビデはどうしましたか。

サム下12:15~23

私たちは愛する者の死に対して完全な備えをすることはできません。しかし,現実にそうなるまえに,努めて良心の呵責や罪悪感を解決しておかなければなりません。悲しみは必ず自責の念という余分な重荷をもたらすからです。罪悪感と悲しみは積極的な生き方を妨げ,病気を含むさまざまな問題を生じることがあります(詩篇103:3参照)。

ダビデがソロモンと名づけたバテシバとの二番目の息子に, 預言者ナタンが別の名前をつけたのはなぜですか。

サム下12:24,25

エデデアは「エホバに愛された者」を意味します◎神がソロモンをお選びになったことは,神の恵みについての奥義の一つです。神は父のダビデを選ばれたように,ソロモンを選ばれました。神はダビデの息子に名前を与え,これを愛することによって,悔い改めた王をお受け入れになったことの保証とされたのです。

ダビデに宣告された剣による刑罰はどのようにして起こりましたか。

サム下13:1~33

聖書はなぜ,このような不純な物語のために1章全体を費やしているのでしょうか。デービッド.F・ペインはその注解書のなかで四つの理由をあげています。(1)この物語はダビデの四重の刑罰の一つを描写している。(2)これに続く諸事件の背景を説明するうえで細かな描写が必要である。(3)この物語は高い地位にある人々に道徳的過失の危険を警告するという役割を果たしている。(4)神はご自分の目的を達成するために私たちの罪をも用いられる。

神は抑制の手をゆるめられる 「ダビデは,アムノンの犯罪を罰する義務を怠った。そして,王であり父であるダビデの怠慢と,王子の頑迷さのゆえに,主は,事件が当然の経過をたどるのを許し,アブサロムを制止されなかった。両親または支配者が,罪悪を罰する義務を怠るならば,神ご自身がその事件の処理に当たられる。こうして,悪の勢力を押えていた神の制止力が,いくぶんか除かれて,罪をもって罪を罰するようなできごとが起こるのである」(「人類のあけぼの」下巻432ページ)。

V. ヨアブ,ダビデ,アブサロム(サムエル記下12章26節~31節,14章1節~33節)

ヨアブはどのようにしてラバを攻略しましたか。

サム下12:26~29

「ラバ〔現在のヨルダンのアンマン〕は,ヤボク川の上流の狭い谷にあった。断崖の上には,要塞があった。それは明らかに低地の町から離れていて,城壁で囲まれていた。この低地の町は,川に流れ込む泉があったためか,『水の町』と呼ばれていた。この低地の町がヨアブによって攻略されると,要塞にいた守備兵たちは水の欠乏のために高台の町を長く保持することができなくなった」(「SDA聖書注解』第2巻653 , 654ページ)。

殺人者アブサロムは父から逃れて,どこへ行きましたか(サム下13:37,38)。ダビデはこれらの出来事をどのように考えましたか(39節)。

ダビデは息子の帰りを切に望みましたが,良心に従って律法を厳格に守らなければなりませんでした。

ヨアブはどのようにしてダビデとアブサロムを和解させようとしましたか(サム下14:1~20)。ダビデはこの要求に対して何と答えましたか。その結果はどうでしたか(21~24節)。

「ヨアブのような粗野な軍人が,神の罪人に対する愛を,このようにあわれみ深く感動的に描いたということは,イスラエルの人々が,晴罪の大真理をよく知っていた著しい証拠である」(『人類のあけぼの」下巻433ページ)。

ダビデの行政的手腕はまひしてしまったように思われました。彼の勇気と決意は弱さと優柔不断に変わっていました。彼は自らくだしたさばきによって押しつぶされそうになっていました。

まとめ 

たとえ王であっても,罪の恐るべき結果から逃れることはできません。しかし,神はその大いなるあわれみと慈愛のゆえに,私たちの失望と悲しみをいやし,無限の恵みとゆるしを与えてくださいます。

*本記事は、1991年第1期安息日学校教課『危機、変化、挑戦ーサムエル記 上・下』からの抜粋です。

聖書の引用は、特記がない限り日本聖書協会新共同訳を使用しています。
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『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

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