第9課 人間の原点にたち返る

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週休制度の元祖

人は昔から、日、月、年など時間に区切りをつけて生活してきました。これらの区切りはすべて天体の動きから生じています。それでは天体の動きとまったく関係ない、1週間という時の区切りを人間はどこから考え出したのでしょうか?
 紀元前にさかのぼる明確な最古の記録は聖書の第1巻創世記の冒頭にある創造週の記録です。それはまた週休についての最も古い記録でもあります。「こうして天と地と、その万象とが完成した。神は第七日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第七日に休まれた。神はその第七日を祝福して、これを聖別された」。

聖書を生き方の指針として信じていたイスラエル民族は、3千年以上前から週休を守ってきました。数千年前から聖書が週休制度を定めていたことは驚くべきことです。この日には身分に関係なく、使用人はもとより家畜までが「元気を回復するため」に(出エジプト記23章12節、新共同訳)、毎週7日目(土曜日)は1日休みが与えられたのです。日本ではつい近年まで動物はおろか奉公人の多くが年に数日、盆と正月くらいしか休みが与えられなかったことを考えると、それがいかに進んだ制度であったかがわかります。それは創造主が人間の健康と福祉のために定められた愛の制度だったのです。有名な十戒の第4条に「安息日を覚えて、これを聖とせよ」とあるのがそれです。人間は生理的にも最低週1回は休みを取ることが必要なのです。

過労死の現実

「カロウシ」という言葉が外国でも通用するくらい日本の過労自殺、過労死は有名になってしまいました。世界的な激しい競争の中で、日本の企業が勝ち残っていくのは大変な時代です。しかしどんなに能力があり勤勉な労働者でも、生身の人間である以上おのずと限界があり、ロボットのように休みなく働くことはできません。ところが企業だけでなく、国民の健康を守る厚生労働省をはじめ、中央諸官庁においても長時間労働やサービス残業が日常化しており、こうした中で、過労死、過労自殺があとを絶たないのです。

人事院資料によれば、毎年100人前後の国家公務員が自殺で死亡しており、自殺が在職中の死因の第3位になっています。そのすべてが過労自殺とは限りませんが、仕事上の過労、ストレスが原因の自殺がかなりの割合を占めていると考えられます。日本人の年間の過労死は1万人はいるといわれています。過労死弁護団の調査では、多くの過労死犠牲者が年3000~3500時間の労働で倒れており、日本の勤労者の3人に2人は「日本人は欧米人に比べて働きすぎだ」と考え、2人に一人は「過労死の不安を感じる」と答えています。

一人娘を残し、突発性心機能不全で亡くなった40歳の環境調査会社のYさん。有給休暇は4年間でたった1日だけ。亡くなったころは1か月370時間も働いていました。朝出がけに2歳の娘に「おとうさん、またあそびにきてね。おとうさんのおうちどこなの?」と聞かれ絶句し、涙を浮かべたのでした。

残された奥さんの言葉です。「あなたが仕事をしていたころ、毎晩(朝)帰宅の遅いのにわたしは心配して、転職をすすめたことがありました。会社をやめてほしいと何度も言いましたわ。でも、家族のためにこれだけの仕事をしているのだ。社会的責任もあるのだと。そしてわたしが自分の気持ちを理解してくれないと、あなたは言いました。そして死んでしまった。あなたが守りたかったものは何だったのですか。死ぬほどたいせつにしたかったのは、何だったのですか」。

価値観の転換

それこそ、一生懸命、生命をかけて働き、多くのモノに囲まれ、世界中のグルメを味わいながら、なにかしら満たされず、慢性的疲労とむなしさを感じている人が多いのです。経済的に豊かな国ほど「心のむなしさ」の問題が深刻化し、自殺率が高くなります。生きている意味と目的を見いだすことがむずかしくなっているのです。もともと週という区切りが与えられたのは、週に一度体を休めると同時に、生きる意味と目的を認識するためだったのです。

世界最古の週休日は「神がその第七日を祝福して、これを聖別された」(創世記2章3節、口語訳)とあるように、この日は、創造主をおぼえて過ごすホーリイ・デー(聖日)だったのです。それはこの世界、そして人間は決して偶然の産物ではなく、一人ひとりの人生には意味と目的があることを示しています。ところが人類は週休日の意味と目的を忘れ、それを単なるホリデイ(休日)にしてしまったのです。ローマ帝国の皇帝が創造主をおぼえる第7日安息日に代わる「太陽の日・サンデー」を休日と定め、それが全世界に広まり、日本まで及んでいます。

創造主を忘れた人間が生きる目的と意味を見失ってしまったのも無理ありません。偶然には意味も目的もないからです。人間は動物と違って衣食住の充足だけでは満たされません。人間だけが、自分がどこから来て何のために生きているのかを求め、その存在に意味と根拠を与えてくれる超越者を信じることができます。聖書がなければ、週も週休も始まらなかったのです。日本もこのところ職場も学校も土曜日が休みになりました。これを機会に土曜日をゆとりを持って心を豊かにするために過ごす日にしたいものです。

祈りの言葉
神さま、私の存在は創造主であるあなたがおられるから意味があることを感謝いたします。あなただけが、すべてを理解して私の人生を支え導いてくださるお方です。忙しい毎日の歩みの中で正しい優先順位を見誤らないようどうか、助け導いてください。
イエス・キリストのみ名によって、お祈りします。アーメン。

聖書の引用は、特記がない限り日本聖書協会新共同訳を使用しています。
そのほかの訳の場合はカッコがきで記載しており、以下からの引用となります。
『新共同訳』 ©︎共同訳聖書実行委員会 ©︎日本聖書協会
『口語訳』 ©︎日本聖書協会 
『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

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