【ゼカリヤ書解説】勝利の幻#4 〜火の中から取り出した燃えさし〜

目次

あなたのための義

今回の課は、キリストとサタンの品性の違いについて、また人類に対する両者の態度の違いについて教えています。サタンは告発し、滅ぼすことを望みますが、キリストはあわれみと義を与えることによって擁護し、救うことを望まれます。

残りの民に対するメッセージ

この第4の幻におけるヨシュアの経験は、バビロンから帰還した捕囚民に対する神の計画を表しています。彼らは捕囚、苦難、迫害という火の中から取り出された燃えさしに似ていました。神のあわれみとゆるしがなければ、彼らは燃え尽きていたことでしょう。神の救いはちょうどよいときに与えられました。キリストを救い主として受け入れる者たちに与えられる義が、今回の課研究のテーマになっています。

この幻が与えられた理由

バビロン捕囚から帰還したイスラエル人を霊的に回復するという神の計画を、サタンはくつがえそうとしていました。神殿の再建が進んでいるのを見たサタンは、「神の民の前に、彼らの品性の不完全なことを示して、彼らを弱め、失望させようとさらに努力することにした。……しかしこの危機において、主は『ねんごろな慰めの言葉をもって』、神の民を強められた(ゼカリヤ書1:13)。主なる神は、サタンの働きとキリストの働きに関する印象的な実例を挙げて、神の民を責める者を撃破する仲保者キリストの力をお示しになった」(『国と指導者』下巻188、189ページ)。

ゼカリヤ書3章に関するきわめて有益な解説が、『国と指導者』下巻188~197ページ(大祭司ヨシュアと天使)に記されています。ヨシュアと天使についての幻が現代の神の民に対する特別な意味を含んでいることを教えています。

この幻の終末時代への適用

「ヨシュアとみ使いに関するゼカリヤの幻は、續罪の大いなる日の、最後の場面における神の民の経験に、特別に当てはまる。その時、残りの教会は大きな試練と苦悩に陥る。神の戒めを守り、イエスを信じる信仰を持っている者に対して、龍とその軍勢は激しい怒りを発する。サタンは世界を自分の家来だと思っている。彼は多くの自称キリスト者たちさえ支配してしまった。しかしここに、小さい群れが彼の主権に抵抗しているのである。もしサタンが、彼らを地上から一掃することができるならば、彼の勝利は完璧となる」(『国と指導者』下巻193ページ)。

「ゼカリヤ書3章に記された経験が今、進行中であること、また人々が清めを口にしながら、へりくだってその罪を告白することを拒むかぎり続くことを、私は示された」(『SDA聖書注解』第4巻1179ページ、エレン・G・ホワイト注)。

「わたしはあなたがたにゼカリヤ書の3章と4章を読むように勧める。これらの章が理解され、受け入れられるとき、義に飢えかわく者たちのための働き、つまり教会が『前進し、向上する』ための働きがなされる」(『教会へのあかし』第6巻296ページ)。

天の法廷の光景(ゼカリヤ書3章1節、3節)

質問1 ヨブ記1:6~12に記された天の法廷の光景をゼカリヤ書3:1~7のそれと比較し、類似点をあげてください。

キリストの型、ヨシュア

ヨザダクの子ヨシュアは、バビロン捕囚から帰ってのちの、イスラエルの最初の大祭司でした(ハガイ書1:1、12、14—エズラ記2:2、ネヘミヤ記7:7比較)。ヨシュアの父ヨザダクは大祭司でしたが、エルサレムがネブカデネザルによって征服されたとき、捕囚としてバビロンにつれて行かれました。ヨシュアはバビロンで生まれたものと思われます(歴代志上6:15参照)。ヨシュアの祖父、大祭司セラヤは、ユダのほかの指導者たちと共に、バビロンの王によってリブラで処刑されています(列王紀下25:18~21)。

ヨシュアという名とイエスという名とは同じです。ヨシュアはヘブル語形で、イエスはギリシア語形です。どちらも、「ヤーウェは救い主」、あるいは「ヤーウェは救われる」という意味です。マタイ1:21には、「その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」と書かれています。

大祭司にヨシュアという名がつけられるとは、何とふさわしいことでしょう。イスラエルを神から引き離したのは彼らの罪でした。ゼカリヤ書におけるヨシュアの経験は、その民が罪から救われることを象徴しています。彼は枝なるメシヤの型であって、その地の罪は彼によって「1日の内に」取り除かれるのでした(ゼカリヤ書3:8、9、6:11~13)。

質問2 ヨシュアの着ている衣は何を象徴していましたか。彼の状態は何を表していましたか。ゼカリヤ書3:3

ヨシュアは神のあわれみに頼った

「大祭司はサタンの告発に対して、自分も自分の民も弁護することができない。大祭司は、イスラエルに罪がないとは主張しないのである。彼は民の罪を象徴している汚れた衣を看て、民の罪を彼が負っていることをあらわし、み使いの前に立って彼らの罪を告白し、その悔い改めと謙遜を指し示して罪を赦される贖い主のあわれみによりすがっているのである。彼は信仰をもって、神の約束の成就を願い求める」(『国と指導者』下巻189ページ)。

サタンの告発に対する答え

「悪魔がきて、あなたは恐ろしい罪人であると言うならば、あがない主を仰ぎその功績を語りなさい。キリストの光をながめることは大きな助けになります。自分の罪を認めるとともに敵には、『キリスト・イエスは、罪人を救うためにこの世にきて下さった』(テモテ第Ⅰ・1:15)と告げねばなりません。そしてその測り知れぬ愛によって救われることを語りなさい」(『キリストへの道』41ページ)。

質問3 つぎの聖句はサタンの正体とx働きについてどんなことを教えていますか。ゼカリヤ書3:1、ヨブ記1:6~12、2:1~6、ペテロ第Ⅰ・5:8、黙示録12:10

サタンを意味するヘブル語には、「敵対者」あるいは「告発者」という意味があります。ゼカリヤ書3:1の「訴える」という言葉は、「告発する」というヘブル語動詞からきています。

告発者、サタン

サタンはゼカリヤ書3章で、イスラエルを代表する特定の個人を告発しています。彼は悪の力以上の存在であって、主の御使いに反抗し、大祭司ヨシュアを告発する者です。

サタンは検察官の役目をしています。彼は被告の右手に立っています。これは、告訴人が法廷で占める位置です。

サタンはつねに告発者

「サタンがヨシュアとその民を責めたように、彼は各時代において、神のあわれみと恵みを求める人々を責めるのである。……悪の勢力から救い出され……るすべての魂のために、大争闘がくり返される。敵の徹底的抵抗を引き起こすことなしに、神の家族に加わる者はひとりとしていない。……彼〔サタン〕の告発はただ、キリストに対する敵意に基づいている」(『国と指導者』下巻191ページ)。

サタンの7重の戦略

1.人々に疑いを抱かせる

2.神への信頼を失わせる

3.神の愛から離れさせる

4.神の律法を犯させる

5.人々にその人自身の罪を示すことによって、彼らを失望させる

6.人間の有罪と滅びを確かなものとするために告発する

7.キリストの権利に反抗して、人々を自分のものと主張する

質問4 ヨシュアを弁護する「主の使」とはだれですか。ゼカリヤ書3:1、2(創世記22:11、12、出エジプト記23:20、21)

「罪人の救い主キリストご自身であるみ使いは、神の民の告発者を沈黙させて言われる。『サタンよ、主はあなたを責めるのだ』」(『国と指導者』下巻189、190ページ)。

ヨシュアの汚れた衣がイスラエルの罪を表していたように、キリストは私たちの罪をその身に負われました。罪なきおかたがご自身を罪とされ、また罪人と同一視されました。それは、彼の義によって私たちをおおうためでした(コリント第Ⅱ・5:21、ペテロ第Ⅰ・2:24参照)。彼は私たちの罪のために死なれました。私たちは彼の義によって永遠のいのちが与えられます。

神の弁護(ゼカリヤ書3章2節)

サタンの告発は正当です。たしかに私たちは罪人です。私たちの唯一の守りは無償で提供されているキリストの義を受け入れることです。

質問5 キリストはヨシュアを弁護して何と言われましたか。彼がサタンと議論されなかったのはなぜですか。ゼカリヤ書3:2

「彼らの忘恩によって最もひどい取り扱いを受けられたかた、また彼らの罪を知るとともに、その悔い改めをも知っておられるかたが言われる。『サタンよ、主はあなたを責めるのだ。わたしはこの人々のために、わたしの生命を与えた。彼らは、わたしのたなごころに彫り刻まれている。彼らの品性に不完全なところがあろう。彼らは、努力して失敗したこともあろう。しかし彼らは悔い改めた。そしてわたしは、彼らを赦し受け入れたのである』」(『国と指導者』下巻194、195ページ)。

カルバリーの論証

「イエス・キリストの血は、罪人のために語る雄弁な嘆願である。この血が『すべての罪からわたしたちをきよめる』のである」(『牧師へのあかし』517ページ)。

「人間は自分だけの力では、敵の告発に対処することができない。……イエスは彼らの訴えを述べ、カルバリーでの大いなるいさおしによって、告発者を打ち破られるのである」(『国と指導者』下巻192ページ)。

質問6 キリストがご自分の民を「火の中から取り出した燃えさし」と言われるのはなぜですか。ゼカリヤ書3:2

重要な手紙や貴重な記録などをほかの紙くずと共にあやまって火の中に投げ込んだ経験はありませんか。あなたはその大事な紙が燃えているのに気づき、あわててそれを火の中から取り出します。一部は燃えてしまったものの、何とか消失をまぬがれたのを見て、あなたは喜ぶことでしょう。

「燃えさし」という言葉は、「丸太」、「枝」、「小枝」、「棒」を意味するヘブル語からきています。この言葉は旧約聖書に3回しか出てきません(ゼカリヤ書3:2をアモス書4:11およびイザヤ書7:4と比較)。

破られたサタンの支配

「しかしキリストに従った人々は、罪を犯しはしたけれども.全的に降伏してサタンの手下たちに支配されてはいなかったのである。彼らはその罪を悔い改めて、謙遜と悔恨の念をもって主を求めた」(『国と指導者』下巻194ページ)。

擁護と回復(ゼカリヤ書3章4節~8節)

質問7 ヨシュアが汚れた衣を脱いで新しい衣を着る行為は、何を象徴していますか。ゼカリヤ書3:4、5

義認は二つの面を含みます。

1.それは過去の罪を帳消しにします。ヨシュアの汚れた衣は取り除かれました(使徒行伝13:38、39、ローマ4:6~8参照)。

2.それは新生の経験を含みます。ヨシュアは新しい衣を与えられました(テトス3:5~7、ガラテヤ3:2~6、ローマ10:6~10、『思いわずらってはいけません』150ぺージ参照)。

義が着せられる(義認)ことには、キリストの義が与えられることが含まれます。

・「彼〔ヨシュア〕自身の罪と彼の民の罪は赦された。イスラエルは『祭服』、彼らのものと認められたキリストの義を着せられた」(『国と指導者』下巻190ページ)。

・「キリストの義というしみのない衣が、試練と誘惑に耐えた忠実な神の民に着せられる。さげすまれた残りの民は栄光の衣を着せられ〔る〕」(同196ページ)。

・「キリストの義の衣を着たものは、みな彼の前に選ばれ、忠実で真実なものとして立つのである」(同192ページ)。

・「イエスの名に対する信仰によって、イエスは私たちにご自身の義を着せてくださる。それは私たちの生活のなかにあって生きた原則となる」(『イエスを知るために』302ページ)。

・「あなたが自分の有限な力をもってなす決意は、砂の縄にすぎないだろう。しかし、真心をもって祈り、あなた自身、魂、肉体、精神を神にささげるならば、あなたは神の武具を身につけ、キリストの義に対して魂を開くことになるのである。この着せられたキリストの義こそ、悪魔の策略に対抗してあなたを立たせるものである」(『神の息子・娘たち』346ページ)。

質問8 義認は何をもたらしますか。ローマ6:17~22、テサロニケ第Ⅰ・4:1~3

「聖化とは、外面的・内面的にきよい状態、聖なること、また形式的でなく真実に全く主のものとなっていることである。あらゆる不純な思い、あらゆるみだらな感情は、魂を神から引き離すものである。なぜなら、キリストは罪人の欠点を隠すために彼に義の衣を着せることがおできにならないからである。……たえず悪に勝利し、善を行なう必要がある。それはイエスの品性の反映である」(『われらの高き召し』214ページ)。

質問9 「清い帽子」は何を象徴していますか。ゼカリヤ書3:5、出エジプト記28:36〜38

「清い」と訳されているヘブル語は、「清くなる」あるいは「清いものと宣言される」という意味を持っています。神の民が内住する聖霊にその心を完全にゆだねることを、神は望んでおられます(コリント第Ⅱ・10:5、ペテロ第Ⅱ・3:14、テサロニケ第Ⅰ・5:23、黙示録7:1~3比較)。

質問10 キリストはヨシュアにどんな勧告を与えられましたか。その勧告は何を意味しますか。ゼカリヤ書3:7

衣を着る行為は、何を象徴していますか。ゼカリヤ書3:4、5

質問11 キリストの民が「よいしるしとなるべき人々」と言われているのはなぜですか。「枝」とはだれのことですか。ゼカリヤ書3:8(エレミヤ書23:5、6、33:15比較)

質問12 ゼカリヤ書3章の預言は、終末時代のどんな出来事にあてはまりますか。黙示録3:5、19:7、8、ダニエル書12:1比較(『国と指導者』下巻193~197ページ参照)

まとめ

ヨシュアと古代イスラエルの経験を通して、神は私たちに神の印と再臨に備えるための重要な教訓を教えようとしておられます。私たちが神に従って、日ごとに神と交わるとき、神は私たちを義と認め、聖化し、栄化してくださいます。この世における私たちの神との歩みは、天国においても続くものです。

*本記事は、フィリップ・G・サマーン(英:Philip G. Samaan)著、安息日学校ガイド1989年4期『勝利の幻 ゼカリヤ書』 からの抜粋です。

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