地から現れた獣(黙示録13:11~18)【ダニエル書と黙示録—重要な黙示預言】#10

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この記事のテーマ

黙示録13章は竜と、海から現れた獣と、地から現れた獣の間に形成される偽りの三位一体について記しています。それらは三位一体の神(父なる神、御子、聖霊)に敵対し、残りの民に対して怒りを表します。しかし神はご自分の民に敵の用いる戦略を明らかにされます。騒乱が起こったときに私たちが驚き、失望し、欺かれることのないためです。神は未来を知り、支配しておられ、有限な人間の目には望みがないように見えるときにも慰めを与えてくれます。

黙示録13:11~18にはアメリカ合衆国を先頭に現在進行中の将来の出来事が描かれていますが、推測は避けましょう。すべてのことがわかっているかのように終末の諸事件に関して筋書きを書くべきではありません。間違えると失望や虚偽に陥ることになります。神は重要な争点に関して十分な光を与えておられます。世界が敵となるときも神は守り、愛してくださるのです。

地から現れた獣

「わたしはまた、もう1匹の獣が地中から上(のぼ)って来るのを見た。この獣は、小羊の角に似た2本の角(つの)があって、竜のようにものを言っていた」(黙示13:11)。

第2の獣は次のような特徴を持っています。

①新しい獣は最初の獣が傷を負った後に現れます。傷を負ったのが1798年ですから、この頃に出現する権力のことです。

②地から現れた獣は海から現れた獣のいやしにかかわっています。両者は治る間と治った後、同時に存在します。

➂地から現れた獣は神によって出現させられたものです。「地中から上って来る」(黙示13:11)という象徴の意味するところは重要です。このような特徴を持つ黙示的な獣は、海からではなく地から現れる獣だけです。セブンスデー・アドベンチストは一般に「地」を人口のまばらな地域と解釈します(箴21:19、エレ2:6参照)。しかし「地中から上って来る」という表現を全体的に理解するとき、その象徴が意味ある解釈につながります。この獣は植物と同じように地中から出現します。これは創造の記事にのみ見られる思想です。「神は言われた。『地は、それぞれの生き物を産み出せ』。……そのようになった」(創世1:24)。獣が地中から出現するというこの象徴は、それが神の力によって出現したことを示しています。

④「小羊の角に似た2本の角」(黙示13:11)という表現はこの獣の初期の外観を表すもので、穏やかな政治形態を強調しています。後にそれは竜のようにものを言うようになります。

このような条件に見合う国家は預言期間の1260年のあとの1798年頃に出現し、神に祝福され、初めは小羊のような穏やかな政治形態を持ち、やがて強制力を持つ権威を行使するように変質してゆくことがわかります。こうした特徴から考えれば、アメリカ合衆国はある領域においては確かに小羊のようで、しかも竜のように語る国家です。

2つの獣の一致

問1

海からの獣と地の中からの獣との関係を調べてみましょう。黙示録13:12

「竜のようにものを言っていた」(11節)という言葉は黙示録13:12に説明されています。それは後続の聖句に詳しく描かれた内容を要約しています。第2の獣は全世界に第1の獣を礼拝させる(政治的、軍事的、経済的)力を持っています。明らかにこの第2の獣は大いなる力と権威を持っています。

問2

『各時代の大争闘』を読むと、エレン・ホワイトは今から100年以上前の1888年に第2の獣をアメリカ合衆国と述べています。当時のアメリカは現代のように世界を動かすほどの力も影響力も持たない国でした。過去、特にここ数十年の間の何がこの国を預言成就の悲劇的役割を演じる特異な立場に導いたと思いますか。

第1の獣は第2の獣に権力を与え、第2の獣は第1の獣の代表者として働きます。プロテスタント主義のアメリカは「先の獣が持っていたすべての権力」を行使します。それは神と神の幕屋を冒し、神の民を迫害する権力です(黙示13:5~7)。この預言は「明らかに、それ〔プロテスタントのアメリカ〕が、龍やひょうに似た獣によって象徴される国々が表わした狭量と迫害の精神を持つようになるということを予告している」(『各時代の大争闘』下巻161ページ)。

地中から上って来る獣は全世界に第1の獣を拝ませる役割を果たします。背信したプロテスタント諸教会は全世界において第1の獣の傷をいやすために働き、すべての人に第1の獣の権威を認めさせ、それを拝ませます。ヨハネは世界的な規模の背信について描いています。

心霊術と獣――奇跡

問3

地中からの獣が行う奇蹟の目的は何ですか。黙示13:14、15

竜と2つの獣は奇跡を行って全世界を支配しようとします。それは全世界を神と神の民に敵対する悪霊の力によってなされるものです(黙示16:13、14)。その奇蹟の最高潮は天から火を降らせるということです。

問4

黙示録13:13にある「天から地上へ火を降らせた」とは何を意味しますか。

黙示録において火は神の裁き(黙示8:5、14:10)、また神の臨在の象徴です。聖霊は「7つのともし火」(黙示4:5)によって表され、キリストご自身は「燃え盛る炎」のような「目」(1:14)と「火の柱のよう」な足(10:1)を持っておられます。ヨハネの言葉はカルメル山におけるエリヤとバアルの預言者の話を思い起こさせます。真の神は天から火を降らせてご自身を啓示されました(列王上18:20~39)。バアルでなく、主だけがおできになる奇跡でした。ところが黙示録では竜が(第2の獣を用いて)多くの無知な人々をだますために同じことを行います。

新約聖書にも2度、天からの火の記事があります。最初は五旬祭のときで、火のかたちをした聖霊が天から弟子たちに降りました(使徒2:1~4)。黙示録13:13は世界的な規模で偽りのリバイバルをもたらす偽りの聖霊降下を表しているのかもしれません。2番目はⅡテサロニケ1:7、8にあります。「主イエスが力強い天使たちを率いて天から来られるとき……燃え盛る火の中を来られます」。天からの火はキリスト再臨の象徴です。黙示録は悪霊がプロテスタント主義のアメリカの助けを借りてキリスト再臨をまねると言っているのでしょうか(『各時代の大争闘』下巻398,399ページ参照)。

獣の像

問5

第2の獣は第1の獣への忠誠の証しとして世界に何を要求しますか。黙示13:14、15

「獣の像」(黙示13:15)がどのようなかたちで具体的に現されるにせよ、はっきりしている点があります。この像をめぐる争点は礼拝にあるということです。私たちがだれを礼拝するか――この単純な問いかけに世界は明確に2つの陣営に分かれるでしょう。

問6

ダニエル3章を読むと、バビロンの王は自分の造った金の像を礼拝するように強制しました。黙示録13章にも獣がある強制力をもって命令を下すという類似点があります。それぞれの重要点は十戒のどの部分に関わることでしょうか。

古代世界において像はその人の代表者と見なされていました。第2の獣は「第1の獣のために働く」(黙示13:14、新国際訳)とあります。これは第2の獣が第1の獣の「像」として働くということです。礼拝という行為は人間以上の存在に尊崇をささげ、献身し、祈り求め、服従することを示すものです。宗教的な信念から来世さえもゆだねるほどの全身、全霊をかけた依存を意味します。

獣の像に息を吹き込むという象徴は創世記2:7から来ています。創世記2:7によると、神は土の塵(ちり)で形を造った像に命の息を吹き入れて生けるものとし、ご自分の代表者として働くようにされました。神の力によって出現した小羊のような獣は、神だけに与えられた権利、つまり命を与え、命を取る権利を要求します。像または獣を拝むのを拒むことは、その教えと命令に従わないことを意味します。それは反逆であって死に値することです。

◆「人間は何かを礼拝することなしには生きていられない」とよく言われます。たしかにある

獣の刻印と数字

獣の刻印

この刻印は獣の名と同じで、獣に忠実な人たちを表します。聖書に出てくる名前はしばしば個人の品性を表しますが、この刻印を受ける人たちは獣と同じ精神を表します。それは神の律法に対する態度に表されます(ダニ7:25)。反対に神の刻印を受ける人たちは戒めを守り、神に忠実です(黙示12:17、14:12)。獣は神の律法に反し、安息日を日曜日に変えることによって、律法を変更しようとします。獣の権威が表されるのはこの行為においてです。獣に従う人たちはその印として日曜日を守ります。日曜日を守ることは獣の名と獣が意味するものに忠実であることの明白な印です。

問7

「今、日曜礼拝をしていることが獣の刻印を受けているというわけではない」と教会が言う根拠は何でしょうか。なぜこの点を明確に理解すべきなのでしょうか。

獣の数字

獣の刻印、名、数字は密接な関係にあります(黙示13:17)。666の意味についてはさまざまな説明がなされてきましたが、私たちは注意深くありたいと思います。聖書はこの数字が名前の文字に含まれる数値の合計であるとは教えていません。ある人たちは666が神から離れた人間の象徴であると言います。人間は第6日に創造されたのでこの数字は神の安息(第7日)を持たない人間の象徴と考えることもできます。人間は神から完全に独立することを求め(堕落の原因)、今でもキリストにある安息に入ろうとしません。

最近、多くの学者が666の数字に関してさまざまなことを言っています。ある人はアメリカ元大統領ロナルド・レーガンの名前の数を合計すると666と言います。ある人たちは数年前エルサレム市内の全部のバスに666の数字があったと言います。こうした解釈は真理を理解する上で何の役にも立たない無益な推測です。たとえ今はすべてが明らかでなくても、終わりの時には何が重要な問題で、だれが中心的な役割を果たすのかは聖書に十分な情報が与えられています。666の正確な意味についても同じです

まとめ

黙示録13:11~18はプロテスタンティズムを含む宗教全体が中世のローマ教会の慣習をまねて獣の刻印についての法律強制を行う役割を描写しています。それは非キリスト教的な権威の出現であり、その力は全世界に及ぶでしょう。しかし残りの民はシオンの山において小羊とともに危機の間も守られます。

ミニガイド

(1)ヴィカリウス・フィリアイ・ディアイ(Vicarius Filii Dei神の子の代理者)

宗教改革以降、この教皇の称号が666の数字と考えられてきました。近年、この点に注意が払われるようになってきました。この解釈にはいくつか問題があります。第1に、この称号が正式なものかどうか不明です。第2に、黙示録13章にはこの数字が名前の文字の持つ数値と関係があるかどうか明示されていません。「数字は人間を指している」(18節)という言葉は「数字は〔人間たち〕を指している」と訳すこともできます。それは神から離れた人間たちを意味します。第3に、文字の数値を数えるにしてもどの言語を用いるかが問題です。聖句は言語を明示していないので特定の言語を採用することは独断的になります。現時点では6を3回用いることによる極度の反逆、神からの完全な離脱の象徴と取るのが最善なように思われます。この象徴の真の意味は時が啓示してくれるでしょう。

(2)注意事項

黙示録13章の内容を人々に伝える場合にはまず福音を優先すべきです。それから時を賢明に判断し、預言の研究を紹介しましょう。個人や他教派を攻撃するのではなく、人々を信仰と行為の規準である聖書に導くようにしたいものです。へりくだった精神、すべての人の友となる心をもって語りましょう。私たちの言葉、行い、思いにはキリストの精神があふれているでしょうか。

*本記事は、神学者アンヘル・M・ロドリゲス(英: Angel Manuel Rodriguez)著、安息日学校ガイド2002年2期『重要な黙示預言』からの抜粋です。

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