【ヨシュア記】カナン征服の完了【解説】#9

目次

中心思想

戦争に勝つために欠かせない要素は効果的な戦略にあります。今回は、ヨシュアがカナン征服を完了するために用いた神の戦略について考え、その戦略の原則を私たちの毎日の霊的戦いに適用します。

アウトライン

  • アモリ人の同盟(ヨシ10: 1~5)
  • 「主がイスラエルのために戦われた」(ヨシ10: 6~15)
  • 南部の戦い(ヨシ10: 16~43)
  • 北部の戦い(ヨシ11: 1~15)
  • 征服の概要(ヨシ11:15〜12:24)

ヨシュアはなぜ成功したか

イスラエル人はカナンに侵攻し、ヨシュアは次々と勝利を収めていきます。彼らが神に信頼していたからであり、また神のみ心に従うなら必ず成功すると信じていたからです。

「ひとたび戦闘計画が完了すると、ヨシュアは信仰をもって前進した。彼は勝利を期待した。神が共にいて、必ず勝利を与えてくださると確信していた。神の指導に従っている限り、ヨシュアは失敗することがなかった。

イスラエルの指導者は約束を守られる神に信頼した。彼は経験によって、神がこれまで一度も自分を見捨てられなかったことを知っていた。……

ヨシュアの経験はキリストのみ名を告白するすべての者にとって一つの挑戦である。……私たちはカナンの『巨人』以上のものに目を向ける。なぜなら、神の霊は巨人以上に大きく、偉大であられるからである。私たちは自分自身の経験によって、また聖書に啓示された神の指導者たちの経験によって、神がご自分のすべての約束を守られることを知らなければならない」(ウイリアム・L・バークレー「神の霊によって』100ページ)。

アモリ人の同盟(ヨシ10: 1~5)

質問1 

ギベオン人に対して同盟を結んだ五つの町は次のページの地図のどこにありますか。ヨシ10:3,4

質問2

ギベオン人がイスラエルと和(シャローム)を講じた時、ギベオンの南にいた5人の王たちはどんな反応を示しましたか(ヨシ10:1~5)。南の同盟都市がギベオンの行為によって動揺したのはなぜだと思いますか。

「ギベオン人の離反は三つの理由で大きな脅威であった。(1)強力な軍隊を持つ大きな町ギベオンの降伏は失望を招くものであった。(2)ギベオンが抜ければ、南部連合は非常に弱体化する。(3)戦争になれば、ギベオン人は裏切ってイスラエルの側につく」(ドナルド・H・マドビッグ「ヨシュア記」『エクスポジターズ聖書注解』第3巻301ページ)。

「主がイスラエルのために戦われた」(ヨシ10:6〜15)

イスラエルはどうしてもギベオンを5人の敵の王たちの攻撃から守る必要がありました。なぜなら、ギベオンは中央および南パレスチナへの通路を支配していたからです。

質問3 

ヨシュアはこの戦いのためにどんな準備をしましたか。戦いはどのように進展しましたか(ヨシ10:6~15、ハバ3:11~13)。

質問4

雷の奇跡と最長の日は創造主なる神について何を啓示していますか。詩148:8、ヨブ38:22,23、黙示16:17,18,21

カナンの住民の神々には嵐の神、太陽の神、月の神がいたことを考えると、これらの奇跡はさらに意義深いものとなります。つまり、これらの奇跡はまことの神の前におけるカナンの神々の無力さを示していました。

「この聖句〔ヨシ10 : 13〕の最後の表現は、太陽が止まったまま動かなかった、あるいは軌道をゆっくり動いたことを明らかに示している」(ドナルド・H・マドビック「ヨシュア記」『エクスポジターズ聖書注解』第3巻303ページ)。ヨシュア記10: 12,13の「とどまった」というヘブル語は、ヨルダン川の水が「とどまった」あるいは「せきとめられた」(新改訳)というヨシュア記3 :16の言葉と同じです。

「霊感を受けた著者は当時の一般的な言葉を用いて科学的事実を描写している。昼夜の区別が生じるのは、天中を動く太陽のせいではなく、地軸を中心に回転する地球のせいである。しかし、科学の発達した現代においてさえ、私たちは太陽が昇ったり沈んだりすると言っている。神を十分に理解していないため、神が自然の法則に介入することができないと考えている人たちの中にも、地球の回転が止まると、たとえ宇宙全体でなくても、地球そのものに、また太陽系全体に不幸な結果を及ぼすと感じている人たちがいる。この奇跡がこのようにして生じたにせよ、あるいは光の屈折などによって生じたにせよ、何らかの奇跡が生じたことは確かである。創造主にして維持者である全能の神がその被造物の働きを支配しておられることを信じるなら、何ら問題はない」( 『SDA聖書注解』第2巻226ページ)。

南部の戦い(ヨシ10:16—43)

質問5

ヨシュアの南部の戦いの道をたどってみてください(ヨシ10:16~43)。イスラエルはこの戦いにおいてどれだけの損害をこうむりましたか。ヨシ10:21

質問6 

イスラエル軍の長たちは征服した王たちの首に足をかけました。これは何を象徴していましたか。それはイエスにどのように当てはまりますか。ヨシ10:24,25、1コリ15:25

これは古代近東地方で一般に行われていた慣習で、(足をかける者たちの)完全な勝利と(首に足をかけられる者たちの)全面的な従属を象徴していました(創世49:8、サム下22:41参照)。聖書は同じ象徴を用いて敵に対するメシヤの勝利を描写しています(1コリ15:25、エペ1:22参照)。

これらの王たちを哀れみ、なぜ彼らを殺す必要があったのかと疑うのは人情です。しかし、「彼らはいつか征服するために戻ってくるかもしれなかった。……

これら5人の王たちをほら穴に閉じ込めておくだけでは不十分であった。彼らを滅ぼさなければならなかった。同じように、私たちも絶えずつきまとう罪を滅ぼさなければならない。自分の人生のほら穴に邪悪な思いや行為が隠れていないか自問する必要がある。サタンの力を受けて、それらは私に何をしようとたくらんでいるだろうか。私は聖霊の力を受けて、これらの石をほら穴の前から除き、これらの悪霊どもののど首をつかみ、イエス・キリストのみ名によって彼らを十字架につける特権を与えられている。そのためにはキリストのゆるしと人生の勝利者であるキリストと共に生きる力が必要である。この霊的真理を人々に伝えることは私たちに与えられた特権である」(「コミュニケーターズ・コメンタリー』「ヨシュア記」184ページ)。

本拠地

南部における戦いを終えたあと、ヨシュアとその軍隊はギルガルに帰ります。これはヨルダン渡河を記念する記念碑が建てられた所でした。この場所に戻って記念碑に刻まれた神の愛の律法をながめることは、疲れ果てた兵士たちにとって何と大きな慰めとなったことでしょう。

北部の戦い(ヨシ11:1~15)

質問7 

ヨシュアたちの行動を考えながら、ヨシュア記11:1~15を読んでください。

質問8 

カナンの町々の中でどの三つの町が焼かれましたか。他の町が焼かれなかったのはなぜですか。ヨシ11:11~13,6:2,24,8:28

エリコは神に完全にささげられた奉納物の「初なり」でした(『人類のあけぼの下巻112ページ)。アイは初戦でイスラエルを破った唯一の町でした。それが火によって完全に滅ぼされたことは、イスラエルが神に忠実な時に与えられる神の最高の力を示していました。ハゾルは「同盟軍のかしら」であり、「同盟軍の要塞」でした(ヨシ11:10、『人類のあけぼの」下巻137,138ページ)。

エリコとハゾルで発掘された地層を見れば、それらが火によって滅ぼされたことがわかります。この地層から出る陶器類は紀元前1400年頃、つまりヨシュアが征服した時期のものです。アイのあった場所はまだ特定されていません。

一部の考古学者は、これらの町の征服が歴史的事実であることを認めません。なぜなら、この時期に滅ぼされた他の町の地層がカナンで見つかっていないからです。しかしながら、聖書の記録をよく見れば、これは当然であることがわかります。なぜなら、ヨシュアとイスラエル軍はこれら他の町々では住民だけを滅ぼすように命じられていたからです。ヨシュア記11:13は次のように明言しています。「ただし、丘の上に立っている町々をイスラエルは焼かなかった。ヨシュアはただハゾルだけを焼いた」。

征服の概要(ヨシ11:15―12 : 24)

質問9

ヨシュアの戦闘はどれだけ続きましたか(ヨシ11:17,18-14:6~10比較)。彼はどれだけの地を征服しましたか。ヨシ10:40~42,11:16~23

カレブはカデシ・バルネアにいた時、40歳でした。イスラエルはカナンに入るまでに、さらに38年間、荒野を放浪しました。カレブは85歳になっていました。

質問10 

ヨシュアが徹底的に神の命令に従ったことから、彼の品性についてどんなことがわかりますか(ヨシ11:15)。このことは私たちに何を教えていますか。

「この聖句はヨシュアの品性に関する立派な解説である。彼は神のすべての命令に絶対的に従った。彼は素直な心をもって神のみ言葉を信じ、将来が明白であってもなくても、そのみ言葉に従って行動した。自分にとって楽しいことだけ、あるいは十分に理解でき、納得できることだけに忠実である人たちがいる。しかし、神に対する真の忠誠は神のみ心に対する完全な服従を目ざす。個人の希望や願望は明らかな義務に対立することがあるが、献身した魂はその経験が生まれつきの傾向にとっていかに犠牲を強いるものであっても、神のみ心に従うことを選ぶ」( 「SDA聖書注解』第2巻233ページ)。

ジェームズ・M・ボイスは有能な指導者の資質について次のように述べています(『ヨシュア記—私たちは主に仕えます』123 —127ページ)。以下はその概略です。

  • ヨシュアは目先の利益のために神の長期的な目標を見失うことがありませんでした(ヨシ10:16~19)。
  • 彼は人々の必要をよく理解していました(ヨシ10 : 25)。
  • 彼は安易な道を選びませんでした。彼は思慮深い、一貫した方法で戦いを進めました(戦闘は7年かかっています)。
  • 彼は初期の失敗によっても失望することがありませんでした。
  • 彼は神に信頼し、その信頼を服従によって示しました(ヨシ11 : 15)。

まとめ

神の戦略に忠実に従い、神から与えられた力によって努力することで、イスラエル軍のカナン征服は可能となりました。現代の神のイスラエルも神の力によって信仰の戦いに勝利することができます。

*本記事は、安息日学校ガイド1995年2期『神の安息に入る ヨシュア記』からの抜粋です。

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