【ヨシュア記】相続地の分配(第1段階)【解説】#10

目次

中心思想

カナン征服の第1段階は完了しました。ヨシュアはイスラエルの各部族に対して相続地の分配を開始します。

アウトライン

  • 土地を分配せよ!(ヨシ13章、14: 1~5)
  • 「この山地をわたしにください」(ヨシ14: 6~13)
  • カレブの相続地と征服(ヨシ14:13~15,15: 13~19)
  • ユダとヨセフの相続地(ヨシ15: 1~17 : 13)
  • ヨセフの子孫の不満(ヨシ17: 14~18)

対称的な二つの部分

ヨシュア記は正確な歴史的記録であるばかりでなく、その前半の出来事(ヨシl~12章)と後半の出来事(ヨシ13~24章)は正確な対称をなしています。神は文学的な手法を用いて歴史を記述されたのです。カナン征服の第1段階(ヨシ1:1~8:29)と、これから学ぶ土地分配の第1段階(ヨシ13~17章)との間に見られる対応に注意してください。

征服(第1段階)相続地分配(第1段階)
神からヨシュアへ土地を征服しなさい(1:1―11)神からヨシュアへ土地を分配・所有しなさい(13:1―7)
ヨシュアから2部族半へ(1:12―18)ヨシュアから2部族半へ(13:8―32)
ギルガルに渡る—過越と割礼(2―5章)3. ギルガル—カレブの相続地(14:1―15)
中部の戦い(6:1―8:29)4. 中部の相続地(15―17章)

土地を分配せよ!(ヨシ13章、14:1―5)

質問1 

ヨシュアが全地を「取った」のに(ヨシ11:16,23)、「取るべき」地がなお多く残っている(ヨシ13:1)という明らかな矛盾は、どのように理解したらよいでしょうか。

著者が用いているヘブル語に注意する必要があります。ヨシュア記11:16,23には、ヨシュアが全地を「取った」〔獲得した〕(ラーカー)とあるのに、同13: 1には、取るべき〔所有すべき〕(ヤーラシ)地がなお多く残っているとあります。初めのへブル語(ラーカー)は、ヨシュアが抵抗を排除し、土地の支配権を握ったことを意味しますが、すべての町を征服・占領したわけではありませんでした。あとのへブル語(ヤーラシ)は、彼らが全住民を追い出すことによってカナンの地を完全に所有する必要があったことを意味しています。

ヨシュア記に用いられている2種類の「休み」という言葉が、「獲得する」と「所有する」の違いを強調しています。ヨシュア記11:23には、「その地に戦争はやんだ〔シャーカット〕」とありますが、このヘブル語は単に「静かになる」を意味しています。しかし、ヨシュアの晩年になって、ヨシュア記21 :44には、「主は……四方に安息〔ヌアー〕を賜わった」とあります。これは、「安息する、落ちつく、平穏になる」を意味しています。北部の戦いが終わると、決定的な戦いが済んだので、カナンの地は「静かに」(シャーカット)なりました。そして、ヨシュアが死ぬ前に、神は民に「落ちついた安息と平穏」(ヌアー)を与えられました。「主が敵をことごとく彼らの手に渡された」からです(ヨシ21:44)。

質問2 

この逆説はクリスチャンの人生をどのように表していますか。黙示12:9~11、ロマ8:37~39(ヘブ4:3,8~11、Iヨハ5:4,5比較)

ヨシュア記13:1~14:5において、神は土地の分配に関してヨシュアに指示を与えておられます。ヘブル人の考えによれば、土地の相続は非常に霊的な経験でした。土地は最終的には主のものであって、イスラエルの民は神と共にいる「寄留者、また旅びと」(レビ25:23)であるべきでした。しかし、ご自分の契約の約束を成就するに当たって、神は永続的な相続物としてイスラエルにカナンの地を「与え」られました。従って、土地は家族から家族にわたって永代に売ってはなりませんでした(レビ25:23)。

イスラエルの相続物には、土地、植物、家が含まれていました。しかし、それはまた霊的な意味でイスラエル人の幸福と喜びを象徴していました(詩16: 6)。

「この山地をわたしにください」(ヨシ14: 6—13)

質問3 

相続地に関するカレブの要求から、彼の品性についてどんなことがわかりますか。カレブの要求の背景について復習してください。ヨシ14:6~13(民数13,14章、特に14:24、申命1:36比較)

質問4 

この要求をした時、カレブは何歳で、健康状態はどうでしたか(ヨシ14:10,11)。彼の品性はその健康と関係があったと思いますか。このことは節制について何を教えていますか。

「主は言われたように、わたしを生きながらえさせてくださいました」(ヨシ14 : 10)。これは聖書の霊的偉人によるあかしです。イスラエル人にとっても立派な模範です。6節には フンネの子カレブ」とあって、カレブがもともとイスラエル人ではなかったことを示しています。ケニズ人はカナンの一部族でした (創世15:19,民数32: 12参照)。

「ささげられた特別な働きのために、カレブに対して特別な考慮が払われた。そこで、彼は最初に土地の分配にあずかった。12名の斥候がカナンの地を探るために送られた時、10名の者たちが否定的な報告を持ち帰った。その地は巨人で満ち、その国は強固な町々のゆえに難攻不落であると、彼らは宣言した。彼らはモーセの計画した冒険の可能性を認めなかった。その結論は恐れから出たものであった。彼らは人間の価値観しか考慮に入れなかった。しかし、カレブはヨシュアと共に少数派の意見を述べた(民数14:7)。……

神の臨在と力に対する絶えざる確信が深い洞察と落ちつきを与えていたので、カレブは緊張とストレスによってその健康を害することが全くなかった」(『インタープリターズ.バイブル」第2巻625,626ページ)。

カレブがヨシュアに土地を要求した時、ユダの人々が彼に同行しました(ヨシ14: 6)。カレブの要求に対して支持を表明するためでした。「カレブ自身がユダ族から土地の分配について任命されていたので、彼はその権限を利己的な特典に用いたようにみられないように、首長たちの同意を得た上で、彼の主張を持ち出すことにしていたのである」(『人類のあけぼの』下巻140ページ)。

カレブは、「この山地をわたしにください」と言いました(ヨシ14: 12)。霊的相続地を手に入れようとしているあなたの前方に、どんな「山地」が迫っていますか。あなたも今日、カレブのように信仰を持って歩み出て、「この山地をわたしにください」と神に言えるでしょうか。

カレブの相続地と征服(ヨシ14: 13—15,15: 13—19)

質問5

ヨシュアはカレブの要求をどのように受け入れましたか。ヨシ14:13~15,15:13

質問6 

カレブはどこまで徹底的に自分の「所有地」を拡大しましたか。彼はどれほど忠実に自分の義務を果たしましたか。ヨシ15:13~19

「カレブは、40年間心にきめていた嗣業を手に入れた。そして神が共にいてくださることに信頼して、『アナクの子3人を追い払った』(ヨシュア記15 : 14)。自分と自分の一族のために土地を獲得してからも、彼の熱意は衰えなかった。彼は自分の嗣業に安住しないで、国のためと神の栄えのために、征服を拡大して行った」(『人類のあけぼの」下巻142ページ)。

カレブは神が自分に示して下さったのと同じ配盧と寛大さを人々にも示しました。娘から最上の土地を求められた時にも、祝福を独り占めすることなく、すぐ、に同意しました(ヨシ15: 16~19)。

カレブの生涯に見られるこうした模範は、善良な普通の人々にとって何が必要かを教えています。カレブは指導者ではありませんでした。彼は忠実な従者である以上に高位を求めることがありませんでした。むしろ、彼は自分に与えられた働きを忠実に遂行しました。

質問7 

カレブの親族のオテニエルはどのようにしてカレブと同じ勇敢な信仰を表しましたか。ヨシ15:16,17、士師3:7~11

士師記l :13のへブル語はあいまいで、オテニエルはカレブの兄弟とも甥ともとれます。マソラ学者(6~9世紀のへブル語聖書編纂者)は前者を支持しています。オテニエルは結婚によってカレブの義理の息子となりました。旧約聖書の律法は姪との結婚を禁じていませんでした。

オテニエルの英雄的行為はヨシュア記を超えて士師記にまで及んでいます。彼が聖霊によって用いられた最初の士師となり、イスラエルを上メソポタミヤの王、クシヤン・リシャタイム(二重悪のクシャンの意)の手から救出しているからです( 「SDA聖書注解j第2巻1 002ページ、エレン・G・ホワイト注参照)。

ユダとヨセフの相続地(ヨシ15: 1~17 : 13)

質問8 

神が他の部族よりも先にユダとヨセフの相続地をヨルダン川の西岸に定められたのはなぜですか。創世49:8~10,22~26参照

12部族を祝福するに当たって、ヤコブは最も長い祝福をユダとヨセフに与えています。しかも、それらは共にメシヤについての預言を含んでいました。これらの部族は後にイスラエルの歴史を支配するようになり、王国が南北に分裂した時にも、エフライムとユダとして知られるようになりました。両部族はヨシュアの時代にすでに土地の分配で特別な扱いを受けています。

質問9

 神はどんな方法でゼロペハデの娘たちの権利を認められましたか。このことは女性に対する神のどのような考えを教えていますか。ヨシ17:3,4(民数26:33,34,27:1~11比較)

質問10 

イスラエル人はどれほど徹底的に、カナンの地を所有する計画を遂行しましたか。ヨシ13:13,15:63,16:10,17:12,13,18:3(士師1:30~36比較)

イスラエル人の経験は私たちが容易に過去の成功に満足してしまうことを教えています。ヨシュア記18:3はイスラエル人に、怠慢を捨てて、使命遂行のために立ち上がるように訴えています。

「主はイスラエル人に、彼らの誘惑であり、悩みの種となる者たちを土地から追い出さなければならないと明言された。これは主の言葉であって、神の民が神の保護の下でどんどん領土を拡大していくことが神の計画であった。……しかし、彼らは中途でやめてしまった。彼らは自分の都合しか考えず、神が彼らのために計画された働き、すなわち神を宣べ伝え、憎むべき異教の慣習を撲滅する働きを実行しなかった」( 「SDA聖書注解」第2巻998ページ、エレン・G・ホワイト注)。

ヨセフの子孫の不満(ヨシ17: 14~18)

質問11 

ヨセフの子孫は不満を述べていますが、その真の原因は何でしたか。ヨシ17:14~16

「彼らの答えは不平の真因を暴露していた。彼らはカナン人を追い払う信仰と勇気に欠けていたのである」(『人類のあけぼの』下巻143ページ)。

質問12 

外交的手腕にすぐれたヨシュアはどんな方法によって彼らの議論の矛先を自分たちに向けさせましたか。ヨシ17:17,18

ヨセフの子孫は、自分たちが力ある民なので(14節)、もっと多くの土地が必要であると主張しました。ヨシュアは彼らの議論の矛先を自分たちに向けさせ、もし彼らがそれほど力ある民であるのなら、必ずカナン人を追い出して、その土地を手に入れることができるはずであると言いました。ここにヨシュアの機転と交渉の巧みさを見ることができます。

このことはまた、クリスチャンの人生における個人の責任を例示しています。ヨセフの子孫は自分で努力しないで望みを達成しようとしたようです。神は彼らに誇りとするほどの力を与えられたのですから、彼らはその力を用いて自らの望みを達成すべきでした。

アラン・レッドパスは興味深い解釈をしています。「ヨセフの子らが直面したこの状況は何としばしば現代の生活においても繰り返されていることか。ヨセフの子らは現状に満足していなかった。彼らは自分たちの才能を発揮する機会がないと考えた。彼らはもっと広範囲の貢献を望んだ。……しかし、神から与えられた領土には、敵が根強い抵抗を続けていた。

あなたの不満もこれと同じであるかもしれない—自分の能力を十分に発揮する機会がない。あなたは絶えず現状に不満を抱いていないだろうか。主に奉仕する機会を絶えず求めているだろうか。心が何らかの伝道地に向けられているだろうか。神のみ言葉の光によって、敵がまだあなたの魂に根強い抵抗を続けていることが明らかにされる。どうか聖霊が、あなたが神から与えられた分け前を完全に占有していないことを明示してくださるように」(『勝利に満ちた信仰生活—ヨシュア記研究』207ページ)。

まとめ

神は古代イスラエルに土地を分配されました。同じように、神は私たちが信仰によってキリストにある霊的相続地を受け継ぎ、生活の中から霊的「カナン人」を完全に追い出すように望んでおられます。

*本記事は、安息日学校ガイド1995年2期『神の安息に入る ヨシュア記』からの抜粋です。

聖書の引用は、特記がない限り日本聖書協会口語訳を使用しています。
そのほかの訳の場合はカッコがきで記載しており、以下からの引用となります。
『新共同訳』 ©︎共同訳聖書実行委員会 ©︎日本聖書協会
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『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

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