第11課 生涯を託せる共同体

目次

減少する身近な共同体

人は独りでは生きられません。旧約聖書第1巻創世記の2章には、神が孤独なアダムに「人が独りでいるのはよくない」と言われて、エバを伴侶として与えられたことが記されています。2人の間に、カイン、アベル、セツという名の子どもたちが生まれ、やがて孫のエノスが与えられたのでした。太古の昔から、家族は人間社会における最も基本的な共同体でした。日本においても、かつては老夫婦が息子夫婦の子育ての一部を分担し、一方で若い世代が高齢者の介護を分担する3世代世帯が一般的でした。

ところが、子ども夫婦との同居を期待しない親、親との同居を望まない子どもは増え続けており、平成に入ってからも3世代世帯は年々減少しています。人口が減少しているのに世帯数が増加している市町村が少なくありません。すなわち、核家族化が急速に進行しているのです。

それに加えて深刻なのは、高齢者だけの世帯の急激な増加です。国勢調査によれば、昭和35年から平成2年の30年間に、夫婦のみの世帯のうち少なくとも一方が65歳以上の世帯と、高齢者単独世帯の合計は6.94倍増加しており、その後も毎年7%程度の伸びを示しています。

世界に例のない速さで進む高齢化、長寿化、核家族化だけではありません。もう一つ見落としてならない現象として、男女共に進んでいる未婚化傾向が挙げられます。兵庫県を例に見てみると、25~29歳の男性の約7割、女性の半数以上、30~34歳男性の4割、女性の4人に1人は未婚です。未婚、晩婚もさることながら、14歳以下の人口の減少も気になります。結婚しても子どもは1人、あるいは子どもを持たないカップルが増えています。独居老人が増え、介護の必要性が高まる中、高齢者の介護を支える家庭及び地域共同体の弱体化が、ますます今後の日本社会の大きな問題になっていくことでしょう。夫婦共働き世帯の増加、生活の場と就労の場の分離が、高齢者の介護のみならず家庭や地域の子育てにも影を落としています。介護は保険でカバーできたとしても人と人との交わり、つながりは保険では買えません。身近な、心通う共同体を回復しなければ孤独な人間がますます増加していくことでしょう。

新しい共同体の必要

会社に愛着を超えた帰属、依存意識を持ち、場合によっては自身や家族との生活をも犠牲にすることをいとわず働いてきた多くの会社人間が、リストラという厳しい運命に見舞われるようになりました。仮に無事定年退職まで勤め上げたとしても、会社は決して生涯帰属する共同体ではありえません。「人が独りでいるのはよくない」と神がアダムに言われた通り、人間は社会的な存在です。交わりを必要としています。学校や職場といった一時的なものでなく、生涯帰属し、人生を豊かにしてくれるような、しかも永続性のある共同体が望まれます。

2千年前に誕生し、国境や人種を超えて今も成長し続けている共同体があります。それは人間が自分たちの必要上から、あるいは文化的な行為としてつくり出したものではありません。キリストの福音によって誕生した共同体、教会です。「教会」を表すもともとの言葉は「エクレシア」というギリシア語でしたが、それは神によって「召し出されたもの」という意味でした。聖書の中には教会に対するいくつかの呼び名が記されていますが、その一つは「神の家族」です。父なる神によって召し出された一人びとりが神の家族を構成するのです。お互いの関係についてキリストは「あなたがたはみな兄弟なのだから……あなたがたのうちでいちばん偉い者は、仕える人でなければならない」(マタイによる福音書23章8、11節、口語訳)と言われました。社会的身分や肩書きに関係ない生涯続く共同体です。

グローバルな共同体

「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ」(マルコによる福音書16章15節、口語訳)とキリストの命令を受けて世界各地に教会をおこしにいった使徒パウロは、教会を体に例えています。

「わたしたちは、ユダヤ人であろうとギリシア人であろうと、奴隷であろうと自由な身分の者であろうと、皆一つの体となるために洗礼を受け、皆一つの霊をのませてもらったのです。体は、一つの部分ではなく、多くの部分から成っています。……一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です」(コリントの信徒への手紙1・12章13~27節、新共同訳)。

愛の共同体としての教会は、メンバーが互いに支え合うだけでなく、キリストの模範にならい、人間の全人的回復のため外に向けて力を合わせ奉仕のわざに励みます。VOPバイブルスクールを提供しているセブンスデー・アドベンチスト教会も、日本を含む200を超える国々で教育、医療、福祉、食品、出版、放送、国際援助活動を通して神の愛を伝えています。「こうして、聖なる者たちは奉仕の業に適した者とされ、キリストの体を造り上げてゆき、ついには、わたしたちは皆、……成熟した人間になり、キリストの満ちあふれる豊かさになるまで成長するのです」(エフェソの信徒への手紙4章12、13節、新共同訳)。あなたも生涯を通じてこの共同体の中で成長し、自分を生かし、他を生かす人生を歩まれることをお奨めします。

祈りの言葉
神さま、あなたが私を交わりを必要とする存在としておつくりくださったことを感謝いたします。しかし、時には大勢の人の中にいながら私は孤独を感じる時があります。どうかあなたの愛で私の孤独感をいやしてください。そして私をあなたの愛の使者として身近な人を支えるために用いてください。

イエス・キリストのみ名によって、お祈りします。アーメン。

聖書の引用は、特記がない限り日本聖書協会新共同訳を使用しています。
そのほかの訳の場合はカッコがきで記載しており、以下からの引用となります。
『新共同訳』 ©︎共同訳聖書実行委員会 ©︎日本聖書協会
『口語訳』 ©︎日本聖書協会 
『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

聖書の開き方から預言まで。個人での聖書の学びはこちらから!

幅広くマンツーマンやグループで学ぶことができるオンライン聖書講座、
それが『講師とまなぶ』です。

\ 詳細はこちらから /

印刷用PDFと11課の確認クイズ

印刷用PDFのダウンロードはこちらから

 

聖書を学ぼう!

会員登録後、聖書について学べるコンテンツを無料でご利用いただけます。

よかったらシェアしてね!
目次