【雅歌】よい人間関係に必要なもの【2章解説】#7

目次

人間の結ばれる過程

今週は,ソロモンとシュラムの女の結婚前後における回想について学びます。冒頭の数行(雅2:8〜15)において,妻は自分たちの特別な求婚期間の経験について思い起こしています。これらの聖句は求婚の時期の重要性について教えています。彼らの求婚と婚約は相互の献身と親密な結婚生活の基礎となりました(雅2:16,17)。

彼らの結婚関係のさまざまな側面をながめることによって,雅歌は人間の結ばれるすばらしい過程を例示しています。私たちはここから人間関係を築くための一定の様式を読みとることができます。この様式は一見,天地創造以来,人間の心に刻みつけられているように思われます。それによれば,人はまず相手と知り合い,互いに友情を深め,結婚する場合には互いに自分自身を全的にささげるようになります。

Ⅰ. 求婚の思い出

雅歌2:8,9にはどんな出来事が述べられていますか。シュラムの女とソロモンのどんな思いを,ここから読みとることができますか。シュラムの女は自分の愛する者を何にたとえていますか。

ソロモンは「かもしか」(ガゼルー改訂標準訳)または「若い雄じか」にたとえられています。これらの優美な生き物は夫(妻)の肉体的な美しさと特徴をよく描写しています(蔵5:19,雅2:7,16,17比較)。

ソロモンが訪ねてきたのはどんな目的のためでしたか。

雅2 : 1 0〜1 3

関係の始まり 王がシュラムの女の田舎家に訪ねてきたのは,彼女を美しい春の自然の中に誘い出すためでした。喜びと愛と約束に満ちた二人の関係の始まりが, またその行間にあふれています。喜びは歌となって表されます。

婚約期間において,夫婦の結婚関係の基礎が形づくられます。ふたりが互いに献身するようになるためには十分な準備が必要です。

「家族のきずなは,地上における何ものよりも親密で最も優しく,神聖なものである。それは人類の祝福となるために計画された。賢明に事を運び,神をおそれ,責任を十分に考慮して結婚の誓いがなされるならばそれは祝福である」(『ミニストリー・オブ・ヒーリング」329, 330ページ)。

◆ 結婚しようと考えている人たちは次の問題について真剣に考えなければなりません。結婚計画にかかわりなく,それらはまた私たちひとりひとりにとっても関係があります。あなたはそれぞれの質問に対して「はい」と答えられますか。不安があるとすれば,どの問題でしょうか。祈りのうちに自分の状態について考えてみましょう。自分の結婚計画に関して,両親,牧師,親戚,そのほか信頼できる人の助言を受けることも大切です。

結婚に対する個人的備え イエス・キリストとの関係は満足すべきものだろうか。人生に対して前向きの姿勢を持っているだろうか。責任を負うことができるだろうか。人生に目的を持っているだろうか。人々の励みとなることができるだろうか。大人として両親に接することができるだろうか。感情的に傷ついたとき、すぐに立ち直ることができるだろうか。感情的に傷ついたとき、すぐに立ち直ることができるだろうか。ひとりの人に献身することができるだろうか。周囲の人々から結婚に対する備えができていると見られているだろうか。

Ⅱ. 生涯の伴侶を選ぶ

結婚する相手について考える この人はイエス・キリストに献身しているだろうか。この人は個人的に結婚に対する備えができているだろうか。この人と生涯,同じ価値観を共有することができるだろうか。将来,何かの欠点が見えてきたときにも,この人を心から愛することができるだろうか。お互いの違いが明らかになったときにもわたしは柔軟に対応できるだろうか。私たちの結婚はお互いを霊的に強めてくれるだろうか。私たちの結婚は教会から祝福されるだろうか。周囲の人々は,私がこの人を十分に知っていると思っているだろうか。

夫婦となるための備え 私たちはふたりで祈っているだろうか。神についての考え方、教会、奉仕、仕事、お金、性、親戚、子供のことなどについてよく話し合っているだろうか。お互いの家族についてよく知っているだろうか。共通の人生のゴールをどうやって達成するか。達成できなかったとき,どのように調整するか話し合っているだろうか。結婚生活におけるお互いの責任分担について話し合っているだろうか。心からお互いに信頼することができるだろうか。互いに直すべき点を含めて,正直に自分の要望を出し合っているだろうか。お互いの個性を認め合えるだけの愛を持っているだろうか。互いに力を合わせれば問題や争いを解決することができるということを,経験によって知っているだろうか。私たちの結婚は親戚や友人から受け入れられるものだろうか。

ソロモンはシュラムの女に対してどんな態度をとりましたか。

雅2:14

心から愛する方法 ソロモンは優しさと思いやりに満ち, シュラムの女のすぐれた点を認めていました。これは健全な人間関係の鍵となるものです。彼は彼女の特性を受け入れ,命令としてではなく招待として自分の望みを伝えています。このような招待は,創造主がすべての人に与えられた基本的な特性,つまり考える能力と選択する自由を認めることです。真の愛は相手を招きますが,利己的な愛は相手を強制し,命令し,脅迫し,あるいは従うように圧力をかけます。

神は人間の自由意志をどのように認めておられますか。

ヨシ24:15(イザ55:1,マタ11:28,黙示22:17比較)

◆ 私たちは自分の家族,友人に対してどんな圧力をかけることがありますか。それは相手にどんな害,不満,不安をもたらしますか。

Ⅲ. 結婚の方式

結婚に対する神の計画の核心がどのように表現されていますか。

雅2:16

結婚の真髄 雅歌の根本的なテーマが,「わが愛する者はわたしのもの,わたしは彼のもの」というこの深遠な言葉のうちに要約されています(これは創世記2:24に描かれている「一体」と同じです) 。これと同じ思想が雅歌6 : 3 , 7 : 1 0 でも繰り返されています。フランスの注解者アンドレ・ファージェはこれを,「相互帰属の方式」と呼んでいます。帰属とは,互いに与え合うこと,愛すること,ささげること,保証することです。これらのものがすべて,結婚契約の縮図ともいえるこの奥深い言葉のうちに含まれています。

キリストが私たちの天の花婿であられるゆえに,私たちはキリストのものであり,キリストは私たちのものです(Iコリ3 :21〜23 参照)。

「彼はゆりの花の中で,その群れを養っている」とはどういう意味ですか。

雅2:16,6:2,3(ヨブ1:14,ホセ12:1,イザ14:30比較)

「養う」というヘブル語は,文脈に応じて,だれかを,何かを,あるいは自分自身を養うという意味で用いられます。雅歌の象徴によれば,シュラムの女は「ゆり」(雅2 :1 ,2 )であり,その愛する人は「かもしか」(雅2 :9 ,1 7 )です。彼女の夫は自分を見守ってくれる友,信頼する人,心を打ち明けることのできる人,結婚の契約をした人です。彼は勝手に歩きまわって大事なぶどうを食い荒らすキツネではなく,「草をはむ」(新国際訳)おとなしいカモシカであって,彼女のうちに喜びを見いだします。

この一節は,山に散歩に行こうというシュラムの女に対するソロモンの招きをもって始まっていました。では,この一節は夫に対するシュラムの女の,どんな招きをもって終わっていますか。

雅2:17

ある人たちはこの聖句を,もと来た険しい山々を越えて帰って行くソロモンの無事を祈る言葉と解釈しています。別の人たちは,ソロモンに対して親しい霊的, 肉体的交わりを求めるシュラムの女の招きと解釈しています。

◆ あなたがキリストのものであり,キリストがあなたのものであることを知るとき,あなたの生き方と人間関係はどのように変わりますか。

Ⅳ. 人間関係に対する神の計画

結婚関係ができる過程について,創世記2:24,25は何と教えていますか。

男と女が結婚によって結ばれる過程は創世記の「離れて」,「結び合い」,「一体となる」という言葉において要約されています。

「結び合い」という言葉は関係を築く過程をどのように要約していますか。

創世2:24,マタ19:6

人を結びつける計画 「結び合い」とは「付着する」, 「くっつき合う」という意味です(サム下23:10,ヨブ41:17,ダニ2:43 比較)。詩篇作者は主のあかしにかたく従いました(詩119 : 31)。この言葉は,たとえば結婚(創世2:24),友情(蔵18:24),あるいは神との関係(申命10 : 20)において二人を結びつける強いきずなについて用いられます。

人間関係を築く,この「結び合い」の過程は,すべての人に同じようなかたちで起こります。それは創造主のみわざを裏づけるものです。

人間関係はどんな肉体的な感覚によって形成されますか。

創世12:14,15,雅4:9
士師14:7,雅2:14
創世26:8,雅2:6
雅1:3,12,4:10
雅2:3 ,5 :1

人間関係は人間の肉体的,感情的,心理的、霊的な面を含む複雑な相互作用によって形成されます。視覚, 聴覚, 触覚はもちろんのこと,あまり目立たない嗅覚や味覚でさえ, 人間関係を形成するうえで重要な役目を果たします。

◆あなたは親子のあいだに,友だち同士のあいだに,結婚しようとしている男女のあいだに,また結婚した夫婦のあいだに働いているきずなを見たことがありますか。

Ⅴ. 神から与えられたきずな

罪は,互いに密接な関係にある人間のきずなと性に対する神の計画をゆがめてしまいました。人間はなおも関係を求めますが,人間の性質は傷つき,弱くなっています。また,愛と性に対する考え方も混乱し,ゆがんでいます。人間のきずなを築く過程を導き,正しい人間関係を育てるためには,神のあがないの恵みと力が必要です。

(ウロはエペソ人への手紙の中で,関係を更新する必要があることについて何と述べていますか。福音は,人間関係の自然の法則の上にどのように築かれていますか。福音はどのようにしてこの法則を修正しますか。

エペ2:13〜18,3:16〜19(同4:1〜3,5:1〜7比較)

キリストのような関係を持つうえで必要な変化は神ご自身によってもたらされます。神はキリストによって,人間関係を阻害する悪を解決してくださいます。これには人間と神との関係という最も大切な関係も含まれています。神はキリストによって私たちをご自身に結びつけられます。私たちの心に回心という奇跡を起こしてくださいます。新しい心は新しい愛を生み出します。私たちは「愛のうちを歩」くことができるようになります(エペ5:2)。キリストの心を持つとき,キリストのみこころを理解し,彼に学びたいという思いを抱くようになります。私たちの人間的な愛と性はみことばによって訓練され,聖霊によって導かれます。キリストの恵みと力が聖霊によって私たちのうちに働き,私たちのきずなをみこころにしたがって変えてくださいます。

霊的,感情的に変えられる 人間のきずなは創造主によって心に植えつけられたものですが,それは救いの計画において回復されます。それはもはや堕落した気まぐれ,欲情,不信仰,むなしい人間的な期待によって支配されることがありません。造り変えられて新しくなった心は,どんな試練に会っても消えることのない親切,柔和,ゆるし,忍耐で満ちたものとなります。恵みによって,私たちのきずなは聖霊によるすばらしい作品となりますo神は私たちのきずなによって栄光をお受けになります。

「もしキリストを助け手とするならば,男も女も自分のために定められた神の理想に達することができる。愛による信頼によってキリストは自分をささげた人のために人間の知恵でできないことを恵みによって完成するのである。神の摂理は天から与えられたきずなによって心と心を結ぶことができる」(『ミニストリー・オブ・ヒーリング」335ページ)。

◆自分の家族・友人とのきずなをさらに深めるためにはどうしたらよいでしょうか。肉体的,感情的,霊的な変化という観点から考えてください。

まとめ 

雅歌は求愛期から喜ばしい結婚にいたるまでの,男女の結ばれる過程を描いています。神のみことばに示された原則は,友情であれ恋愛であれ,親しい人間関係を形成するための唯一の安全な指針です。

*本記事は、1992年第4期安息日学校教課『雅歌 愛の歌』からの抜粋です。

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