【雅歌】愛の灯火を伝える【7章、8章解説】#12

目次

幼年期の家庭生活は結婚生活への準備 

幸福な家庭生活は子供の健全な感情の発達を促し, 人間関係を良くし,両親の価値観を受け入れるのを容易にします。

両親との関係ほど,子供の現在および将来の感情的安定に大きな影響を及ぼすものは,たぶんほかにはないでしょう。それゆえに,たとえ雅歌が子供について教えていないとしても,結婚生活の喜びという雅歌の主題は子供にとっても非常に重要な主題となりうるのです。

雅歌に登場するソロモンとシュラムの女も,昔は子供でした。どんな夫婦もそうですが,彼らも家庭において学んだ自分自身についての,人間関係についての,愛についての知識をその結婚生活の中に持ち込んできました。雅歌の最後の部分には, シュラムの女の家庭, 母親,幼年時代,青年時代のことが何回か述べられています。 これらの言葉は幼年時代の家庭生活が結婚生活に及ぼす影響について教えています。

結婚した夫婦の幼いころの家庭生活は,現在の彼らの人生の基礎になっています。彼らの今後の人生はその子供たちに大きな影響を与え,オリンピックにおける聖火リレーのように,その愛の炎を伝えていくのです。

Ⅰ. 家庭に向かう心

シュラムの女は夫にどんな提案をしていますか。

雅7:11〜13

「ここで,花嫁はレバノンにある自分の故郷へのあこがれを示している」(「S DA聖書注解』第3巻1122ページ)。

シュラムの女はなぜ故郷に帰りたいと思ったのでしょうか。彼女はどんなことを,まただれのことを思い出していますか。

雅7:12〜8:2

家庭の楽しい思い出 彼女の心は子供のころの家庭と自然についての楽しい思い出に満たされています。ふたりが初めて恋をしたのもそこにおいてでした。この部分は,ソロモンが彼女を訪ねて求婚したときと重なります(雅2:8〜12) 。彼女の思い出には母親についての思いも含まれています。その高い道徳的標準は母親から教えられたものでした。彼女は王と初めて出会ったころのことを思い出しています。そして今,夫婦として故郷に帰りたいと望んでいます。

両親が子供の人生において果たす重要な役割について,聖書は何と教えていますか。

筬1:8,イザ66:13,エペ6:4

子供は両親に対してどんな責任を負っていますか。

出エ20 12, エペ6:1〜3, コロ3:20,21

両親と子供は互いに責任を負う 子供は神からの賜物です(詩127:3)。子供は「神の家族の若い一員」です(『アドベンチスト・ホーム」169ページ)。キリストを見い出すこと,キリストに信頼すること,キリストにあって新しく生まれ変わること,キリストにあって成長すること,キリストに従うことは,子供だけにまかされた仕事ではありません。神が私たちの親であられるように,この世の親たちも自分の子供を養い,教育し,矯正する必要があります。子供たちも天の家族に加えられるべきです。

「親は,ほかのだれも受けることのできない愛情と尊敬を受ける資格がある。……第5条は,子供たちが親を尊敬し,親に従順に従うことを要求しているだけでなく,親を愛し,いたわり,重荷を軽くし,その評判をまもり,老齢の彼らを助け,慰めることを要求している」(『人類のあけぼの』上巻359ページ)。

Ⅱ. 「子を教えよ」

福音はどのようにして私たちの家庭を地上における最も幸福な場所とし,また天国における家庭を前もって体験させてくれるところとしますか。

ヨハ15:12, 1ヨハ4:7〜11

家庭において最も重要なものは両親の関係です。もしその結婚生活がキリストの愛で満ちているなら,その香りは家庭全体に充満します。

「家族に対する夫と妻の愛情は,家に対する暖房装置のようなものである。それは家族全員の関係を楽しく,快いものとする。しかしながら,それは家族の平和が決して乱されないことを意味するものではない。……問題のないことが真に幸福な家族のしるしなのではなく,むしろ家庭の人間関係が基本的にしっかりしているので,どんな問題が生じても全員でそれに対処できるという確かな自信こそ,そのしるしなのである」(デビット&ベラ・メイス『神のみまえに』109ページ)。

価値観を子供たちに伝えることに関して, どんな大切な勧告が筬言22:6に記されていますか。

子供たちを教える 子供は生まれながらにしてキリスト教の価値観を受け入れることがないので,愛をもって教える必要があります。厳格さは必要ですが,神の計画においては同時に,つねに優しさがともなっていなければなりません。両親には,「いつも変わらないしっかりした手と,あなたの愛を子供に確信させるようなやさしさ」が求められます(『家庭の教育』300ページ)。(同275,276ページ,『ミニストリー・オブ・ヒーリング」361ページ参照)。

両親は子供たちのうちに神を求める心を植えつけるべきです。子供たちが母親の乳ぶさを求める赤子のように神を求めるようになるために,彼らは神の真理を魅力的なものとして示す必要があります。両親は一貫してキリスト教の価値観を自分の生活において実践しなければなりません。優しく,しかし厳しく,子供たちの無作法を正し,同時に自分から質問する心を育てなければなりません。その標は彼らをキリストの生き方に見習う者とすることにあります。

父と母を「離れる」こと(創世2:24)と画親を「敬う」こと(出エ20:12)とはどのように調和しますか。父と母を「離れよ」という命令は,成人した自分の子供を自活させることに関して親にどんな責任を負わせますか。子供たちに大人になってからも喜んで家に帰ってきてもらうためには,親子のあいだにどんな関係がなければなりませんか。成人した子供たちはどうしたら両親を幸福にすることができますか。

Ⅲ. 弟子とする

質問7 イエスは「弟子」について何と言われましたか(ヨハ8;31,13:35)。弟子をつくりなさいというイエスの命令を実践するうえで,家庭はどれほど重要なところですか(マタ28:19)。

最も重要な伝道地 「神の働き人としてわたしたちがなすべき仕事は, 最も近くにいる者たちから始めることです。わたしたち自身の家庭から始めましょう。これ以上に重要な伝道地はほかにありません」(「家庭の教育』515ページ)。

クリスチャンの家庭はキリスト教の真理を教えるうえで格好の場所です。両親は神のみことばを用いて価値観と生活の仕方を教えるべきです。子供たちは家庭において最初に人間関係を学ぶので,クリスチャンの家庭は神の愛と人間関係について教えるうえですばらしい場所となります(ヨハ13:35参照)。

「家庭は弟子のような人間関係を学ぶ場であり,弟子の養成がなされる最初の場である」(デニス・ガンジー『家族伝道の新しい計画』11ページ)。

家庭で学んだ人間関係は,私たちが神の弟子となるうえでどんな助けになりますか。空欄に適当な語を入れてください。

家庭での経験神との経験
敬意を示す〔神を敬う〕
コミュニケーション〔    〕
感謝を表す〔    〕
お互いに受け入れる〔    〕
子供たちに人間関係,愛,性について教える必要があることに関して,聖書は何と記していますか。

出エ20:14,レビ18:1 〜3 0 , 申命6:6〜9 , 蔵6 : 2 0 〜2 9

聖書は物語,律法・規定,詩歌,格言の中で,愛,交わり,性についての多くの情報や教訓を提供しています。親は子供たちに教える義務を負っていました(申命6:6〜9)。

◆あなたは人間関係に関する神の計画を自分の子供たちにどのように教えていますか。

Ⅳ. 子供に愛,交わり,性について教える

ヨセフの経験は,彼の両親がこれらの問題について自分の子供たちに教えていたことを示しています。「幼い時に心に残された印象が,激しい誘惑のときに彼の心を守り,彼をして『どうしてわたしはこの大きな悪をおこなって,神に罪を犯すことができましょう』と叫ばせたのでした」(『家庭の教育』199ページ)。

愛に満ちた雰囲気をつくる お互いに対する両親の愛,子供に対する両親の愛が,子供に愛と交わりと性について教える基本です。

積極的な聖書の原則について教える 両親の指導が成功するかどうかは,どれだけ気持ちよく愛と性について教えることができるかにかかっています。誤解,神話,俗説の代わりに,積極的で,バランスのとれた聖書の原則を教えなければなりません。親同士の,またほかの親との交わりに加えて,祈り,聖書研究,あかしの書,聖書の原則にもとづいたその他の書物なども,大いに確信を強めてくれるものです。

手, 目, 声、などで赤ちゃんを愛撫することによって得られる初期の親子のきずなは,安心と信頼の感情を与え,のちの人間関係にも良い影響をもたらします。一方,「身体検査」をしたとか,からだの機能が遅れているということで心配したり, 子供を罰したりすることは,子供に強い不快感と恥辱感を与えます。

子供に正しい情報を伝える 「子供たちに自分のからだについて教える必要がある。人間の生命の真皮についてしっかりした知識を持っている若者は少ない。彼らは〔人間のからだという〕生きた機械についてほとんど知らない」(『教会へのあかし」第2巻536ページ)。

機会をとらえて子供と話すようにしましょう。質問に対しては単純明快に答えましょう。子供の発達と言葉のレベルに応じて,次のようなことがらについて教えるとよいでしょう。

・からだの各部分と働きについての正しい用語
・男のからだと女のからだの違い
・生殖における父親と母親の役割
・性器への正しい接触と誤った接触
・男女の身体的,感情的発達についての理解
・正しい恋愛と交際の方法
・責任ある性行為,無責任な性行為
・性に関する社会的,感情的問題
・結婚生活における愛と交わりの意味
・家族計画と育児の原則
・健全な性的態度の重要性

Ⅴ. 「さいわいな者」

雅歌の最後の部分にシュラムの女の品性があらわされています。故郷を訪ねるときの描写のうちに,彼女の価値観がその育ちからきていることが暗示されています。

シュラムの女はソロモンにどんな要求をしていますか。彼女は愛をどれほど深く理解していましたか。

雅8:6,7

「真の愛は,高く清い原則である。それは,衝動的に生じ,激しく試みられると,急に消えてしまう愛とは全く異なったものである。青年たちは,親の家で忠実に義務を果たすことによって,自分自身の家庭を持つ準備をしなければならない。青年たちは家庭で自制を実行し,親切で,礼儀正しく,クリスチャン的同情の精神をあらわそう。こうして,彼の心には,愛があたたかく保たれる。そして,このような家庭から出て,自分の家族のかしらとなるものは,自分の生涯の伴侶として選んだ人の幸福を増進させる方法を知っている」(『人類のあけぼの』上巻188ページ)。

シュラムの女が結婚前の貞操を守るべきだと考えていたこからわかりますか。彼女の兄弟たちはどんな態度をとりましたか。

雅8:8〜10

自分の兄弟たちから結婚するまでは貞操を守らなければならないと言われていたことを,彼女は思い出しています。「兄弟たちは,妹の求婚と結婚において(創世24 : 29, 50, 55, 60),また貞操を守ることにおいて(創世34:6〜17,サム下13:20,32)重要な役割を果たした」(マーピン・ポープ『アンカー・バイブルー雅歌』678 ページ)。彼らは,禁じられた行為を止める「城壁」,「戸」というたとえを用いて,妹の態度を描写しています。兄弟たちは妹を守ろうとしたのです。

雅歌8:10には,彼女が純潔を守りとおしたことが示されています。結婚前も結婚後も,彼女は生涯にわたる契約を結んだ人のためだけに自分自身をきよく守ろうとしました。その結果,心は平安と安息と満足で満たされました。

◆青年期の男女が成長し,大人として独立する過程で,両親,親戚,教師,友人はどんな役割を果たすことができますか。

まとめ

私たちはひとりで子供たちを養育し, 弟子にするのではありません。聖霊と天使がともに働いてくださいます。「神はこの恐るべき責任んを私たちの手にゆだねられるが, 同時にそのすばらしいあわれみをもって私たちを囲んでくださる。神は私たちの子供のうちに働いてくださる。……私たちは子供を育てるに適していないかもしれないが, 神はそうではない。神は決して彼らを見捨てたり, 忘れたり, 見失ったりされない。神の導きに信頼し, 神が私たちの失敗をさえ用いてくださるということを信じて, 私たちは親の管理者のわざにまい進することができる」(エリザベス・アクテマイヤー『献身した結婚』197ページ)。

*本記事は、ロナルド・M・フラワーズ(英:Ronald M. Flowers)著、1992年第4期安息日学校教課『雅歌 愛の歌』からの抜粋です。

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