【サムエル記上】神の支配か人間の支配か【7章、8章解説】#3

目次

人の選択

神の導きを拒むことは悲劇的な結果をもたらす 神の民が神の勧告を拒んで自分の道に歩むとき、神は彼らの選択を認め、彼らにその責任を負わせられることがあります。

預言者は神に代わって語る 初期の頃から,神はご自分のために語る人々を選ばれました。アブラハムは預言者と呼ばれました(創世20:7参照)。モーセと神との関係はほかの預言者には見られないものでした(民数12:6~8参照)。サムエルの働きは新しい時代の到来を意味しました。彼は初めて預言者の職務を確立しました。また預言者の学校の創設者,校長として,自分の働きを助け,イスラエルの民を牧する青年たちを養成しました。

それなのに,民が神の王権のもとでの預言者と士師の制度に満足しないのを見て,サムエルは失望したにちがいありません。自分たちも「ほかの国々のように」なるために,彼らはさかんに王を要求しました。イスラエルの命運はひとえにこの決定にかかっていることを,サムエルは知っていました。神はご自分の子らを知的で理性的な生きものとして扱われます。

神は彼らに危険について警告し,こ自分の計画を受け入れるように勧告されますが,そのあとは彼らの選択の自由に任せられます。今週は,人間に対する神のこうした態度について学びます。

サムエルの働き-預言者の学校(サムエル記上7章15節~17節)

サムエルは神の民の指導者として,どんな三つの重要な役割を果たしていましたか。

サム上3:20,7:9,15~17

サムエルの働きはイスラエルの歴史の過渡期となりました。彼は最後の士師であり,最初の公認の預言者でした。彼はまた,レビ人の祭司として奉仕しました。聖所の儀式はシロの聖所の破壊によって中断されていました。神はサムエルを用いて,イスラエルの歴史におけるこの重大な時期に新しい政治形態を確立されたのでした。

サムエルはほかにどんな重要な働きをしましたか。

サム上19:20

サムエルは預言者の学校の創立者であり,また校長でもありました(「人類のあけぼの」下巻255,345ページ参照)。彼は「預言者の子ら」と呼ばれる献身した若者たちをこれらの学校に集め,イスラエルの指導者,神のみことばの教師として訓練しました。「ラマのナヨテ」(サム上19:18,19)という言葉は「「ラマの」ある場所をさす。そこは,サムエルと『預言者の子ら」が住み,ダビデがサウルから逃れて一時期,滞在したところである(サム上19:18,19 ,22,23,20:1)。このヘブル語は,預言者たちの住んでいた「寄宿舎』という意味での「住居』のことであろうと言う人もいる」(「S DA聖書辞典」改訂版776ページ)。

預言者の学校はラマとキリアテ・ヤリムにありました。のちに,エリヤとエリシャの時代には,エリコ,ベテル,ギルガルにもありました。

「『預言者の子ら』とは,必ずしも直接,預言の賜物を受けた者たちをさすものではなく,むしろ今日の牧師のように,神に召されて人々に神のみこころと道を教える人たちのことであった。預言者の学校は,しばしばへブル人を偶像崇拝,物質主義,不正行為に陥れようとしていた悪の潮流を抑える強力な力であり,急速に広がる堕落に対する防壁であった」( 「SDA聖書辞典』改訂版903ページ」

エレン・ホワイトは預言者の学校について次の事実をあげています(『人類のあけぼの』下巻253~264ページ参照)。神は現代のご自分の教会に対して,これに代わるどんな教育手段を与えておられますか。

預言者の学校の目的
1.とくに霊的真理をより深く知りたいと望む者たちのために,家庭や両親によって与えられた教育を補足するため。
2.広範囲に及ぶ堕落に対する防壁となるため。
3.青年たちに道徳的,霊的な豊かさを提供するため。
4.「神をおそれて行動する資格のある人物を養成」することによって,国家の将来の繁栄を促すため(「人類のあけぼの」下巻255ページ)。

教育科目
1.モーセを通して与えられた神の律法
2.神の民の歴史
3.聖楽,詩歌
4 . 農業,技術などの実際的職業訓練
5.個人の信心や献身の養成

教育は学究的なだけでなく経験的 「彼らは,献身の精神をいだいていた。学生は,祈りの義務について教えられただけでなくて,祈る方法と創造主に近づく方法,神に対する信仰の働かせ方,そして, 聖霊の教えを理解して服従斑る方法などを教えられた。彼らは,清められた知性によって,神の蔵から新しいものや古いものを取り出した。そして,神の霊は,預言と聖歌の中に表わされた」(「人類のあけぼの』下巻256ページ)。

「われわれに王を与えよ」(サムエル記上8章1節~9節)

イスラエルの長老たちはサムエルに王を要求しましたが,これにはどんな背景がありましたか。

サム上8:1~5

「サムエルは,国民一同の賛成のもとに,むすこたちを職務に任命したのであったが,彼らは,父親の選択に値しないむすこたちであった。……預言者のむすこたちは,預言者が彼らの心に強く刻みこもうと努めた教えに注意しなかった。……サムエルはエリに与えられた警告を, 深く肝に銘じておかなければ猶らなか、たのにそ, れを怠った。彼は,むすこたちを甘やかし過ぎる傾向があった。そして,その結果が,彼らの品性と生活に表われた。……もし,むすこたちの悪行が彼に知らされたならば,彼は,すぐに彼らを解任したことであろう。しかし,人々の望んだことは,それではなかった」(「人類のあけぼの』下巻266,267ページ)。

イスラエルが王を求めた真の理由は何でしたか。

サム上8:20

イスラエルが王を持とうと考えたのはこれが初めてではありません。士師の時代には,イスラエルの人々はギデオンを彼らの王にしようとしました(士師8:22,23)◎のちにシケムの人々は,ギデオンの息子アビメレクを一時,彼らの王にしました(士師9:1~6 参照)。

士師の時代におけるイスラエルは,12部族の弱い同盟関係によって成り立っていました。政治的には,しばしば外敵に征服されるという混乱の時代でした。士師の制度は失敗したように思われました。人間的な見方からすれば,各部族を強力な軍事力を持った一つの君主政体に統合し,継続的な指導力を持たせるという長老たちの考えはもっともなように思われました。

真の問題はイスラエルの政治制度にあったのではなく,イスラエルが神の律法に従わなかったことにありました。君主政体の有効性が王位にある者の霊性と正直さにかかっていることを,のちのイスラエルとユダの悲しい歴史が証明することになります。

もし祭司の息子が悪く,預言者の息子が不正直なら,王の息子も堕落するということを,長老たちは忘れていました。さらに,君主政体においては,指導者を変えることがきわめて困難になります。

サムエルはこの要求に対してどのように応答しましたか。

サム上8:6

真の問題 「サムエルは,彼らの真の動機が不満と自尊心であり,彼らの要求が,熟盧と断固とした決意のもとで行なわれたものであることを悟った。サムエルに対しては,なんの不平も述べられなかった。万人が,彼の統治の潔白と知恵とを認めた。しかし,老預言者は,その要求を自己に対する非難,また,彼を除こうとする直接行動であると考えた。しかし,彼は,自分の気持ちを表面にあらわさなかった。彼は,證責の言葉を言わなかった。彼は,このことについて祈り,主に訴えて,ただ主からの勧告を求めたのである」(「人類のあけぼの』下巻267ページ)。

神はどのように応答されましたか(サム上8:7)。神は以下の聖句において,たとえそれが最善の道ではなくても,ご自分の民が自らの道を歩むのを許しておられます。そのような例がほかにあればあげてください。

民数記11:4~6,18~20,31~34
民数記13:30~33,14:22~24

要するに,神はこう言っておられたのです。「サムエルよ,気を悪くするには及ばない。「彼らは,わたしがエジプトから連れ上った日から,きょうまで,わたしを捨ててほかの神々に仕え,さまざまの事をわたしにしたように,あなたにもしているのである』(サム上8:8)」。

「幾たび彼らは野で神にそむき,荒野で神を悲しませたことであろうか。彼らはかさねがさね神を試み,イスラエルの聖者を怒らせた」(詩78 :40, 41)。

君主政体の危険(サムエル記上8章9節〜22節)

民の要求を受け入れる前に,神はサムエルを通してどんな警告を与えられましたか。

サム上8:9~18

イスラエルが王を望んだ理由を,神がそれに反対された理由と比較してください。

イスラエルが王を望んだ理由(サム上8 : 5 , 2 0 )神がそれに反対された理由(サム上8:11~17)
・サムエルの息子たちへの不満
・他の国々のようになりたかった(レビ18:2~4比較)
・自分たちをさばく王を望んだ(申命17:8~13比較)
・民のために戦う王を望んだ(申命20:4,7:18~21,9:3)
・臣民に対する権力の乱用
・王は自らを豊かにするために最良のものを要求する。
・君主政体を支えるための高い税金
・自分たちの息子が徴兵される。
・民が圧迫される。

イスラエルとユダの王の時代にこれらの予告が成就した例をいくつかあげますので,それらについて調べてください。

●高い税金(列王上10:25)
●王への奉仕(列王上10:25,26)
●最良の土地(列王上21:1~16)
●民の圧迫(列王上12:1~14)
●徴兵(歴代上21:1~4,7)

歴史的に見て,イスラエルの根本的な問題は何でしたか。このことは私自身に対して,また私の教会に対してどんなことを教えていますか。

申命1:30~32,詩78:17,22比較

イスラエルは素直な信仰をもって神に従いませんでした。詩篇作者はこれを反逆とみなしています。彼らはしつこいくらいに王を要求しましたが,これは敵の手から救ってくださる神の約束をあからさまに拒否することでした。

神はイスラエルが王を求めることを予見しておられました。そのような場合のために,神はモーセにどんな指針を与えられましたか。

申命17:14~20

「イスラエルの王朝政治は預言されていたとは言え,彼らの王を選択する権は,神ご自身が保留しておられた」(「人類のあけぼの』下巻272ページ)。

次にあげるイスラエルの3人の王を,申命17:14~20の指針に従って評価してください。神のみこころに従った場合はA,許容できる場合はB,従わなかった場合はCをつけてください(表のあとの聖句を調べてみましょう)。

王に対する神の要求サウルダビデソロモン
王は神によって選ばれるべき(15節)
王はイスラエル人であるべき(15節)
王は臣民を搾取すべきでない(16,17節)
王は多くの妻を持つべきでない(17節)
王は神の律法によって統治する(18~20節)

●サウル サム上9:15~17,9:2,15:9,サム下14:24,15 : 23
●ダビテ  サム上16:1,5:13,8:15,24:17,7:25~27
●ソロモン 歴代上28:5,29:1,列王上10:14,26~29,11 : 1~4,4:26,27,9:22,11:9~11

イスラエルは「他の国々のようにな」るために王を求めましたが,彼らの真の王である神は,王政によくある專制,束縛,堕落から彼らを守ろうとされました。神はモーセを通して,独裁主義に陥らないための制約と原則を与えておられました。しかし,悲しいことに,イスラエルの王たちはそれに従う以上に,それを無視しました。イスラエル人は彼らの王である神を拒みました。彼らは神の助けを求める代わりに,しばしば国家に背信と恥辱をもたらすことになる世雲の王たちの支配に服そうとしていました。

王政の危険について聞かされたとき,民はどのように応答しましたか(サム上8 : 19, 20)。私たちはイスラエルの経験からどんな教訓を学ぶことができますか。

「イスラエルの人々は,この点で他国と同じでないことが,特別の特権と祝福であることを自覚しなかった。神は,イスラエルの人人を,他のすべての国民から分離して,神ご自身の特別の宝とされたのであった。しかし,彼らは,この大きな栄誉を無視して,異教徒の風習を模倣することを切望した。そして,世俗の風習に従おうとする切望は,今なお神の民と自称する人々の間にもあるのである。彼らが主から離れると,世の利益と栄誉を熱望するようになる。…彼らは,地上の栄誉のために……言葉では表現できない栄誉を犠牲にしてしまう」(「人類のあけぼの」下巻270ページ)。

イスラエル人はのちに,王を求めた罪を認めて,サムエルに何と嘆願していますか。

サム上12:19

サムエルは多くの点でキリストの型でした。何世紀ものちに,ユダヤ国民が卑しいガリラヤ人イエスを自分たちの王として選ぶ代わりにバラバを選んだように,彼らは今,サムエルの「へりくだった権威」を軽んじました。

サムエルの最もきわだった指導力は,自分の民のためのその執り成しにあったと言えるでしょう。民は何度も彼のもとに来て,「私たちのために祈ってください」と嘆願しています。民の霊的幸福のために献身していたサムエルは彼らに次のように約束しています。

「わたしは,あなたがたのために祈ることをやめて主に罪を犯すことは,けっしてしないであろう」(サム上12:23–ヘブ7:25比較)指導者はみな,こうあるべきです。

このとき,サムエルは民に何と約束していますか(サム上12:22)。このことは私たちの仕える神についてどんなことを教えていますか。

まとめ

イスラエルと預言者の学校に対するサムエルの献身的な働きは,今日の私たちの教会の模範です。イスラエルが神の統治を拒み,あくまでも王を求め,神に逆らったことは,今日の私たちに対する譽告です( I コリ・1 0 : 1 1 参照) 。

イスラエルは自分たちの王を要求しましたが,私たちもこれと同じような選択をしていないでしょうか。

*本記事は、1991年第1期安息日学校教課『危機、変化、挑戦ーサムエル記 上・下』からの抜粋です。

聖書の引用は、特記がない限り日本聖書協会新共同訳を使用しています。
そのほかの訳の場合はカッコがきで記載しており、以下からの引用となります。
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『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

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