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2:10エステルは自分の民のことをも、自分の同族のことをも人に知らせなかった。モルデカイがこれを知らすなと彼女に命じたからである。 2:11モルデカイはエステルの様子および彼女がどうしているかを知ろうと、毎日婦人の居室の庭の前を歩いた。エステル2:10―11(口語訳)
妥協と葛藤の中で
突如として、陰謀をはらむ王宮へと入ることになってしまったエステルがここで登場しています。この後に続く危機も含めて、これらの事態はエステルやモルデカイの上の世代が神のメッセージを受け止めて、バビロンの地から移動したならば、起こらなかったでしょう。しかし、生活基盤ができ、そこで富を築いた彼らにとって、聖書のメッセージよりも今の安定の方が大切だったのです。
エステルは自分の民のことをも、自分の同族のことをも人に知らせなかった。モルデカイがこれを知らすなと彼女に命じたからである。エステル2:10(口語訳)
この時、すでに反ユダヤ感情がペルシア帝国内で高まっていたのかもしれません。エズラ記4章6節では、クセルクセス王(アハスエロス)の治世の初めに、敵対勢力がユダとエルサレムの住民を訴える告訴状が王に送られました(エズラ4:6)。
エステルという名前の意味は、さまざまな議論を呼んでいますが、いずれにしても、エステルは自らの出自が明らかになると危うい情勢の中で後宮に入って行ったのでした。
そのような状況の中で、彼女は自分のアイデンティティを隠していくのです。この決断をみなさんはどのように思われるでしょうか?
彼女が実際にどのように思い、行動したのかは記録されていません。ただ、確かなのは、彼女は葛藤と妥協の狭間でもがきながら王宮での生活を送っていたということです。
どのような状況をも利用される神
モルデカイやエステルには異教の王の妻となるべきではないということは、理解していたはずです。何かしらの不可抗力が働いたと考えられますが、いずれにしても神はこの事態を許され、神の民を救うために用いられていくのでした。
ときにわたしたちは、「なぜ自分は聖書に出てくる人々のように堅く信仰に立てないのだろうか」と悩むことがあるかもしれません。
しかし、このエステル記の箇所を読むときに、聖書に出てくる人々もまた現実的な葛藤の中でもがいていた跡を見ることができます。その上で、彼らは信仰を働かせたのでした。わたしたちも、もがきながらキリストにすがっていく必要があるのです。