第12課 本当に愛の神は永遠の地獄をつくられるのか?

目次

愛の神は本当にそのようなことをするのか?

「なぜ魔術を信じているのか」と質問されたときに、メアリー・エレンが答えた言葉は意外なものでした。

「幼い頃、わたしは地獄の炎や燃える硫黄のことばかりを伝える教会で育ちました。そこでは、神が老人から子どもまで、すべての人間を永遠の火で焼き続けると教えられたのです。もしそれが本当なら、神などいないほうがマシだと思いました」。

メアリー・エレンは、「愛の神が本当にそのようなひどいことをするのか?」と多くの人が心に抱く質問と葛藤していたのです。

神はどのような存在なのか?

神はどのような存在ですか?

神はである。

ヨハネの第一の手紙4章8節

神の思いをすべて理解することはできませんが、聖書は明らかに、神は愛であると述べています。

人類に対する神の願いは何ですか?

主は……ただ、ひとりも滅びることがなく、すべての者が悔改めに至ることを望み……。

ペテロの第二の手紙3章9節

すべての人が悔い改めるわけではありませんが、神の願いはすべての人が神の救いを受け取ることです。

「すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい」(マタイによる福音書11章28節)とキリストは招き、だれでも彼を信じる者は「ひとりも滅びないで、永遠の命を得る」と述べました(ヨハネによる福音書3章16節)。

いつ、どこで、どのように

地獄は本当に実在するのでしょうか?

また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。

マタイによる福音書10章28節

キリストは確かに、地獄の存在を認めています。

地獄の火はいつ燃え始めるのですか?

だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終りにもそのとおりになるであろう。人の子はその使たちをつかわし、つまずきとなるものと不法を行う者とを、ことごとく御国からとり集めて、炉の火に投げ入れさせるであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。

マタイによる福音書13章40―42節

キリストによれば、「世の終わり」がくるまで地獄の火が燃え始めることはありません。つまり、現在、地獄の火で焼かれている人は誰もいません。

救いを受け入れなかった罪びとは、いつ地獄に行くのですか?

このことを驚くには及ばない。墓の中にいる者たちがみな神の子の声を聞き、 善をおこなった人々は、生命を受けるためによみがえり、悪をおこなった人々はさばきを受けるためによみがえり、それぞれ出てくる時が来るであろう。

ヨハネによる福音書5章28―29節

キリストは二つの復活について述べました。一度めはキリストが来られるときの、永遠の命に至る復活で、二度めは黙示録に描かれている千年期の終わりに起こる、裁きのための復活です。[It Is Written 聖書研究ガイド11「黙示録にある千年期」を参照]

地獄はどこにありますか?

彼ら[サタンと救いを受け入れなかったすべての人]は地上の広い所に上ってきて、聖徒たちの陣営と愛されていた都とを包囲した。すると、天から火が下ってきて、彼らを焼き尽した。

ヨハネの黙示録20章9節

今の天と地とは、同じ御言によって保存され、不信仰な人々がさばかれ、滅ぼされるべき日に火で焼かれる時まで、そのまま保たれているのである。

ペテロの第二の手紙3章7節

聖書は、地獄とはこの地上で起こることだと教えています。一般的に、地獄は地下の深いところにあるかのように語られていますが、それはまったく根拠のない俗説であり、誤りです。地獄の炎は地上全体を焼き尽くすのです。

地獄の様子

救いを受け入れない人々は、地獄でどんな体験をしますか?

罪を犯した魂は必ず死ぬ

エゼキエル書18章4節

罪の支払う報酬はである。

ローマ人への手紙6章23節

この火の池が第二のである。

ヨハネの黙示録20章14節

人々が永遠に地獄の炎で苦しむなどと聖書は教えていません。地獄の炎によって滅ぼされる人々(救いを受け入れなかった人々)は、この地上で滅ぼされるのです。しかし、有名なヨハネによる福音書3章16節には、キリストを信じる者は「滅びない」と書いてあります。

地獄の炎によって滅ぼされる人々の運命はどうなりますか?

万軍の主は言われる、見よ、炉のように燃える日が来る。その時すべて高ぶる者と、悪を行う者とは、わらのようになる。その来る日は、彼らを焼き尽して、根も枝も残さない。……また、あなたがたは悪人を踏みつけ、わたしが事を行う日に、彼らはあなたがたの足の裏の下にあって、灰のようになると、万軍の主は言われる。

マラキ書4章1節、3節

聖書は、地獄の炎によって滅ぼされる人々の運命について明確に述べています。地獄の炎によって滅ぼされるのは、キリストを拒絶した人々です。

神は、罪の状態が永遠に存続することを望んでいません。キリストを拒絶した人々が永遠に生きることは不可能なのです。

永遠の命はキリストを受け入れ、信じる人々にのみ与えられる贈り物なので、キリストを拒絶し、受け入れなかった人々は失われることになります。このような人々は永遠の命を得ることができないからです。

ヨハネの第一の手紙5章12節に書かれているように、「御子を持つ者はいのちを持ち、神の御子を持たない者はいのちを持っていない」のです。

キリストを受け入れなかった者は、いのちであるキリストにつながっていないので、たとえ地獄であっても永遠に生きることはできません。

地獄の炎によって、最終的にサタンはどうなりますか?

あなたは不正な交易をして犯した多くの罪によってあなたの聖所を汚したゆえ、わたしはあなたの中から火を出してあなたを焼き、あなたを見るすべての者の前であなたを地の上のとした。

エゼキエル書28章18節

サタン自身も地獄の炎によって焼き尽くされます。ですから、彼らが人々を地獄で苦しめることなどできるはずがありません。地獄の炎は、宇宙と地球から罪の痕跡をすべて消し去り、世界を元通りの状態に戻すためのものなのです。

神がこの世界のどこかに地獄を置いて、筆舌に尽くしがたい苦痛の中で、人々を永遠に苦しめるようなことは決してありません。

ノアの時代のように、神はもう一度世界を再創造します。このときに「敵は全く滅ぼされる」のです(ナホム書1章9節)。罪と罪びとは永遠に消し去られるのです。

聖書には本当に、罪びとが永遠の炎で焼かれると書かれていませんか?

その苦しみの煙は世々限りなく立ちのぼり、そして、獣とその像とを拝む者、また、だれでもその名の刻印を受けている者は、昼も夜も休みが得られない。

ヨハネの黙示録14章11節

そして、彼らを惑わした悪魔は、火と硫黄との池に投げ込まれた。そこには、獣もにせ預言者もいて、彼らは世々限りなく日夜、苦しめられるのである。

ヨハネの黙示録20章10節

すでに聖書から学んだように、地獄の炎によってサタン自身も滅ぼされると書かれています。罪の源であるサタンが滅びるのですから、キリストを拒絶した人々だけが永遠に苦しむなどということはありえません。

それでは、地獄の炎の描写に見られる「世々限りなく」とはどのような意味ですか?

聖書の原語のギリシャ語を調べてみると、ヨハネの黙示録で「世々限りなく」と訳されているギリシャ語には、「いつまでも」という意味があります(ピレモンへの手紙1章15節)。

ハンナは……夫に言った、「わたしはこの子が乳離れしてから、主の前に連れていって、いつまでも、そこにおらせましょう」

サムエル記上1章22節

それゆえ、わたしもこの子を主にささげます。この子は一生のあいだ主にささげたものです」。そして彼らはそこで主を礼拝した。

サムエル記上1章28節

このギリシャ語の言葉が使われているほかの場所に注目してみましょう。ハンナは自分の子どもが「いつまでも(英訳聖書:永遠に)」神殿にいると述べ、それから彼女は「一生の間」と言い直しています。つまり「いつまでも」というのは、「ハンナの子サムエルが生きている限り」という意味なのです。

わたしは地に下り、地の貫の木はいつもわたしの上にあった。

ヨナ書2章6節

主は大いなる魚を備えて、ヨナをのませられた。ヨナは三日三夜その魚の腹の中にいた。

ヨナ書1章17節

ほかの場所も見てみましょう。ヨナは「いつも(英訳聖書:永遠に)」海の中にいたと言っていますが、聖書はその期間が三日三晩であったと説明しています。ハンナの場合と同じように、「いつまでも」というのは、「永遠に」という意味ではありません。

もし「いつまでも」という言葉が文字通り「永遠に継続すること」をあらわすのだとすれば、現在もサムエルは神殿の中におり、ヨナは海の魚の腹の中で生きていることになります。

聖書は、地獄の炎について「世々限りなく」という言葉で描写していますが、これは「その物事が終わるまで」を意味する表現であり、聖書のほかの場所でも同じような表現を見つけることができます。聖書は「永遠」という表現を、物事の時間の経過と結びつけて使うことが多いのです。

聖書は、地獄がどのような場所であるかを説明するのにどのようなたとえを用いていますか?

ソドム、ゴモラも、まわりの町々も、……永遠の火の刑罰を受け、人々の見せしめにされている。

ユダの手紙1章7節

また、ソドムとゴモラの町々を灰に帰せしめて破滅に処し、不信仰に走ろうとする人々の見せしめとし、

ペテロの第二の手紙2章6節

聖書は、ソドムとゴモラ(繁栄した古代都市)の経験が「永遠」の地獄の炎のたとえであると明確に述べています。

「永遠の火」は「永久に燃え続ける火」という意味ではないのです。

ソドムとゴモラが存在していた場所が、今日も燃え続けているわけではないからです。

地獄の炎の影響は永遠に続くものですが、その炎によって滅ぼされる罪びとは、ソドムとゴモラがそうであったように、一瞬にして灰になるのです。

永遠の火は何のために計画されたのですか?

のろわれた者どもよ、わたしを離れて、悪魔とその使いたちとのために用意されている永遠の火にはいってしまえ。

マタイによる福音書25章41節

永遠の火(地獄)は、サタンと罪をこの世界から取り除くために計画されたものです。エゼキエル書33章11節で、神は次のように言いました。「わたしは悪人の死を喜ばない。むしろ悪人が、その道を離れて生きるのを喜ぶ」。

マタイによる福音書25章41節に書かれているように、神を信じないでサタンに従うことを選んだ者たちは、サタンや悪天使を滅ぼす「永遠の炎」によって滅ぼされることになるのです。

地獄の火がやがて燃え尽きるのであれば、なぜ聖書は「消えない火」と表現しているのですか?

麦は倉に納め、から(殻)は消えない火で焼き捨てるであろう。

ルカによる福音書3章17節

神が「消えない火」について言及している場面は、エレミヤ書17章27節にも出てきます。歴代志下36章19―21節にも同じ表現が出てきますが、これはバビロンによってエルサレムが破壊されたときに起こりました。この表現も「その物事が終わるまで」という意味で使われています。

神は非常に重要なことを述べています。地獄の火はその役目を果たすまで燃え続けるということです。対象が何であれ、方法がどのようなものであっても、地獄の炎の威力は弱まることはありません。それは対象となるすべてのものを焼き尽くすのです。

ルカによる福音書16章19節から31節に登場する「金持ちの男とラザロ」の話は、どのように解釈したら良いでしょうか?

この金持ちとラザロの話はたとえ話です。キリストはこの話を、死んだあとに実際に起こる出来事ではなく、聴衆に大切な教訓を伝えるために話されたのでした。

  1. 豊かさと富(金持ち)は神の祝福の証拠ではありません。同様に貧しさ(ラザロ)も神の祝福を受けていない証拠ではありません。
  2. 救いは個人的なものであり、相続によるものではありません。しかし、多くのユダヤ人は、自分たちがアブラハムの子孫であるがゆえに、救いは保障されていると信じていました。このたとえは、永遠の命が先祖代々受け継がれるものではないことを人々に教えるためのものでした。
  3. クリスチャンは聖書が記していることに着目する必要があります。

たとえ話の中で金持ちは、もし兄弟が「モーセと預言者たち」の言葉を聞かないなら、たとえ兄弟が死からよみがえったとしても信じないだろうと言われました。

興味深いことに、実際にキリストの知り合いのラザロという人物が死からよみがえったとき、当時の宗教指導者たちはキリストを信じるどころか、ラザロを殺害しようと企てたのでした(ヨハネによる福音書12章10節)。

滅びの後に

地獄の火がすべてを焼き尽くした後で、神はどのようなことを行いますか?

わたしはまた、新しい天と新しい地とを見た。先の天と地とは消え去り、海もなくなってしまった。

ヨハネの黙示録21章1節

焼き尽くす炎が消えたあとで、神は地球を再創造し、すべての罪の痕跡を消し去ります。わたしたちの永遠のふるさとはふたたび完全で美しい場所となり、そこで神と神の民はともに永遠に過ごすことになるのです。(ヨハネの黙示録21章3節)。

焼き尽くす炎は慈悲深い神の愛をあらわしています。最後の1人を救うためにあらゆる手段を尽くした後で、神は罪の傷跡を地上とともに永遠に消し去られるのです。

キリストを拒絶した者(永遠の命を受けなかった者)は永遠に苦しめられるのではありません。罪が消し去られるときに、彼らはあたかもはじめから「存在しなかった者」として完全に消し去られるのです。罪も罪びとも、もはや存在しません。救われた人々は、罪のない永遠の喜びのなかで生きることができるのです。

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