墓からの説教【ルワンダの悲劇からの救い】

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神の隠れ家

そうして、わたしはついに街を出ることができました。それから34日間、茂みに隠れていました。茂みの中にいたわたしは、それはそれは酷い状態でした。

痩せ細り、身体中が痒くなり、肌もボロボロでした。しかし、兄弟姉妹のみなさん、たとえあなたが茂みの中にいようが、牢獄や穴に投げ込まれようとも、どこにいても、神があなたと一緒にいるのなら、それはあなたにとって宮殿になることができ、心配することもありません。そう思いませんか?

神は、茂み以外にもさまざまな隠れ場所を用意してくださりました。ある時は、神に非常に忠実な友人の家でした。彼は何度もわたしの命を救おうとしました。

ある時、彼はわたしにいくらかのお金をくれました。「このお金を受け取って、別の隠れ場所を探してください。もうこれ以上、わたしの家にあなたを隠すことはできません」と彼は言ったのです。

「もし、わたしがあなたをかくまっていることがみつかったら、フツ族の人はわたしの家族を殺してしまうからです」と。

友人はわたしのために祈ったあと、仕方なくわたしを送り出しました。殺人鬼が銃を持っている場所でしたが、仕方がありませんでした。

わたしはいくつもの場所を逃げ回り、再び彼の家に戻ってきました。すると彼は悩んだ後で、こう言いました。

「一箇所だけ、あなたが隠れることのできる茂みがあるのを知っています。神があなたを守ってくださるでしょう」と言って、わたしを連れて行ってくれました。

彼もわたしも必死でした。わたしは茂みの中に隠れ、一晩中祈りました。「主よ、この茂みをあなたの聖なる天使たちで囲んでください」と。

茂みでの経験

この茂みでの経験は、わたしが神さまにより深く頼るために与えられた試練だったと、わたしは思います。神さまがわたしたちの祈りを聞いてくださることを教えてくださるためのことだったのだと確信しています。

翌朝、太陽が昇った時、わたしは、周りにあった茂みが、どれだけ意味のないものだったかを思い知りました。うっそうとした茂みに隠れていると思いましたが、実際の茂みはとても浅く、誰もがわたしを見ることができたのです。

すぐに猟犬がやってきて、吠え始めました。その直後、ツチ族を殺そうと探し歩いていた人たちがやってきたのです。そして彼らは、「見つけたぞ!茂みの中だ!!」と叫び、わたしに向かって、茂みの中から出てくるように命令しました。わたしは茂みから出ました。手には聖書を持っていました。

一晩中、祈ったおかげで、わたしは自分の人生が神の手に委ねられていることを確信していました。その時間はわたしに勇気を与えたのです。わたしは恐ることなく、堂々と彼らの前に立ちました。わたしのその様子に戸惑った殺人鬼もいました。

「お前をすぐに殺すつもりはない。これから、お前にお前自身の墓を掘らせる。死ぬ前に、自分の墓を掘れ!」と彼らは言いました。そこで彼らはわたしを人里離れたところへ連れて行き、「今すぐ穴を掘れ!」と命令しました。

わたしは鍬を取り、穴を掘り始めました。この状況にあっても、わたしは神がすべてを益としてくださることを信じていました。

「主よ、ここでわたしは自分の墓を掘っています。あなたが宇宙の創造主であるなら……、すべてをご存知であるなら、また、ダニエルをライオンの穴から救い出した神であるなら……。どうぞ、あなたがまだ同じ神であることをわたしに示してください。あなたが変わっていないことをわたしに示してください」。

わたしは心の中で、神にそうつぶやき、「わたしを見捨てないでください」と嘆願しました。

わたしは祈りながら作業を続けました。わたしの周りを民兵が取り囲んでいます。

祈るなかで、わたしは「翼を与えてくだされば、飛んで逃げることができます」とか、「火を降らせてくだされば、わたしたち全員は散らばってどこかへ行くことができます」とか、「雷を降らせてください」とか、次から次へと神さまに願い求めました。

聖書には、神さまはありとあらゆる方法で、わたしたちを救い出されることが約束されています。わたしたちの命を守り、必要な時に介入してくださる方法が、何千とあるのです。わたしの場合は次のようでした。

聖霊が触れたとき

わたしがお気に入りの聖句を見つけると、いつも何かしらの線を引いているので、わたしの聖書は、線や色で好きな聖句が強調されています。

わたしが墓を掘っている間、殺人鬼の一人が穴の上の方に座っていました。

彼はそこに置いてあった聖書をとって、パラパラとページをめくり始めます。その時、いくつかの聖句に線が引かれていたのをみて、彼はわたしに聞いてきました。

「おい、なぜある部分にだけ線が引かれているんだ?」。

「わたしの好きな箇所です。」とわたしが答えると、本当かと彼は驚きながら、「この本をすべて読んだのか?」と聞いてきました。

わたしが「もちろん」と返事をすると、面白いことに彼が聖書を読み始めたのです。わたしが線を引いた箇所を読んでいる間、聖霊の神が働きました。

「お前が死ぬ前に、この本を俺にくれ。もらってもいいだろう?」と彼が言うので、「いいですよ」とわたしは答えました。

すると、「その男は俺たちのものだ! 俺たちが殺す! だから、その本は俺たちのものだ!」とまわりにいた他の民兵たちが叫び始めたのです。

「どうしても欲しければ、俺たちのお金を払ってからにしろ!」と。

すると、どうでしょう、その殺人鬼は、「お金はお前たちが欲しいだけくれてやる。だから、この本はわたしのものだ!」と言ったのです。

みなさん、聖霊はだれにでも触れることが出来ます。

「この人に神さまのことを伝えるのは不可能だ」と、思えるような人であっても、難しい家族関係であっても、神に出来ないことはありません。神は強力な力を持っています。神はだれの心であっても回心させることができます。

わたしが墓穴を掘り続けている間、神は殺人鬼の心に働きかけました。

そして、回心した殺人鬼は、今や、わたしに同情し始め、民兵にわたしのことを助けたいと言い出したのです。

「どうかこの少年を殺すはやめて下さい。もしそれがダメだと言うのであれば、せめて、彼と一緒に墓を掘らせて下さい。わたしは彼を助けたいのです!」と彼は民兵に向かって言いました。なんと、彼はわたしの墓を掘ることを申し出たのです。

墓穴を掘り終われば、殺されることになっていたわたしは、焦りました。彼の申し出は、ありがたいものではありませんでした。

墓穴が早く仕上がってしまったら、わたしはどうなってしまうのかと不安に駆られました。そして、都合の悪いことに、その殺人鬼はとても強く体力があったため、今すぐにでも墓を掘る勢いだったのです。

ですから、わたしは心の中で祈りました。

「主よ!助けて下さい。墓は終わりに近づいています。あなたはどうされるのですか?」

そして、祈りながらも、たとえ墓穴が掘り終わったとしても、神がすべてのことを支配していることを信じました。

なぜなら、紅海が目の前のすぐそこにあったとしても、神はそれを分け、乾いた道にすることができ、たとえ火があったとしても、神はそれに脅かされるようなお方ではないからです。そうですよね?

墓穴が掘り終わると、神は民兵のリーダーの心を完全に変えてくださいました。

「おい!そこには今、死んだばかりの奴を入れるぞ!その男を別の所へ連れて行って、別の墓穴を掘らせろ!」と彼は命令したのです。わたしはその時、神の御業が素晴らしいことをもう一度、確認しました。神はわたしに生きる機会を与えて下さったのです。

死んだばかりのその男は、一人の民兵の義理の弟でした。家族であっても殺してしまう彼らをみて、なんて残酷なことをと思いました。

ところが、彼らがその男を葬る時、皮肉なことに彼らの一人がこう言ったのです。

「わたしたちが殺しているこれらの人々のために、祈らないか?」

わたしは最初、何が起こっているかがわかりませんでした。彼らの中で何かが変わり始めたのです。彼らはわたしに祈るように命令しました。自分の置かれた最悪の状況をよそに、わたしは民兵と一緒に祈りました。

祈りの中で、わたしは彼らの行なっている悪に間接的に責任があるのを感じました。

「主よ、これらの人々はあなたを知りません。そのため他人を殺しているのかもしれません」。

もし、わたしのようなクリスチャンが彼らのために福音を伝える仕事をしていれば、そのようなことは起きず、神の栄光が賛美されていたのかもしれないと考えたのです。

祈りの変化

どうでしょうか? わたしやあなたのようなクリスチャンが、何もしなかったために、この世の中には、麻薬で苦しんでいる人、罪を犯している人、殺人を犯す人々がいるのかもしれません。それぞれがイエスさまを知っていれば、何か違った人生を歩んでいたのかもしれない……。そうわたしは、今でも、考えるのです。

それまで、わたしは逃げるために主に翼を授けてもらうために祈っていましたが、今は違いました。

「神がどういうお方であるかを彼らに告げるまで、わたしはどこへも行きません。どうぞわたしがこの場所にとどまることをお許しください」と祈っていたのです。

そうするうちに、新しい墓穴を掘る場所に着きました。そこは高速道路に近い、ある小さな村でした。彼らに神の御名を宣べ伝えようと決心しましたが、どうしたらいいのかわからなかったので、言われるまま、別の墓を掘りました。

その前に、わたしの聖書を持っていた殺人鬼のところに行きました。「聖書を返してください」と彼にお願いすると、「はい、どうぞ」と言って本を返してくれタノです。

「なんでそいつと対等に話すんだ?俺たちはいつでもその男を殺すことができるじゃないか?」、「そいつは俺たちの敵だ!そいつに話す権利なんてない!」とそれを見た別の民兵が言ってきました。

しかし、聖書を読んだ彼は「それは間違っている。彼には自由に話す権利がある」と答えたのです。神の言葉には不思議な力があります。

そうするうちに、彼らは口論を始めました。そして、まわりに他の民兵が集まってきましたのです。「何を喧嘩しているんだ!」と彼らが聞くと、誰かが「そいつが、その男に聖書の話をしてほしいと言っているんだ」と言いました。

しばらくすると、民兵たちは、わたしに聖書の話をしてほしいグループと、話して欲しくないグループ、そして、面白そうだから何か話させろという、三つのグループに別れ、喧嘩を始めました。

そして、ついに、彼らの指導者と思われる民兵の一人がやって来て言いました。

「おい!やめろ!この男のために喧嘩をするな。俺に提案がある。男の話を聞きたくないものは、座って耳を閉じればいい。そして、彼の話を聞きたいものは、その側に座って、耳を傾けるといい。その後、彼を殺すとしよう」。

さて、わたしが話を始めると、彼ら全員が熱心に耳を傾けました。わたしの話を聞きたくない者でさえ、黙って座り、わたしの話を聞いたのです。

そこには民兵以外の人も含め、約四十人の人が集まってきました。わたしの説教の内容をすべてお話しすることはできませんが、ペテロの手紙第一2章9節を引用し、神に選ばれし民について語り、イエスがもうする来られることを語りました。

そして、わたしは彼らにこう伝えたのです。

「あなたが殺している人々はツチ族です。しかし彼らは神の子どもであるため、もはやツチ族でもフツ族でも関係ないのです」。

そして、伝道の書9章(コヘレト)にあるように、生きている人は彼らが死ぬことを知っていますが、死者は何も知りません、とも語りました。

それはわたしが話していると言うのではなく、まるで神が彼らに直接語りかけているような決定的な瞬間でした。

わたしの話を聞いていた民兵の何人かは涙を流して泣いていました。そして、彼らはお互いに何かを話し合っていました。それを見たわたしは、神が奇跡を起こそうとしていると確信しました。

説教の終わりに、わたしが「主よ、閉会の祈りをします」と言った時、彼らの一人が「この人を殺すのをやめよう!」と叫びました。

「わたしはその男を酷い方法で殺そうと思っていたが、やめることにした。もし、彼を殺すなら、その責任は自分たちでとってくれ!」と言い始めたのです。

すると他の人も「そいつを逃してやろう」と口にし始め、民兵だけではなく、そこにいた人、子どもや女性、お年寄り、すべての人がそう言い始めました。

そして、「その男を手放していいか?」とその村の首長が人々に聞くと、 「はい!そうしてください」と皆が揃って答えました。

「わたしたちがツチ族を解放したとだれかに言うと、他の者が来て、わたしたちを殺すでしょう。それでもいいですか?」と首長は聞きました。今、わたしを逃すことは、彼らにとって危険なことでした。

すると彼らはこう叫んだのです。

「誰にも言いません。彼を手放してください!」

そこでわたしは「あなたがたのために祈りをささげてもいいですか?」と聞くと、「どうぞ、わたしたちのために祈ってください」と彼らは言いました。

そのとき、わたしはこのような祈りを言いました。

 「主よ、あなたがとても慈悲深いことをわたしは知っています。あなたに、ゆるせない罪はありません。彼らが戦っている戦いは彼らのものではないことを、これらの人々が理解するのを助けてください。この戦いは民族同士のものではありません。これは悪魔の戦いです。それらが善と悪の戦いであることを、彼らが理解するのを助けてください。主よ、彼らの罪をゆるしてください。彼らが完全に悔い改めるのを許してください。」と祈りました。

わたしがその祈りを言い終えたとき、彼らはわたしにボディーガードとして、2人の民兵を与えました。「わたしたちがあなたをかくまってあげましょう」と彼らは言いました。

民兵はわたしを彼らの家に連れて行き、いくつかの食べ物を持ってきました。その中に、お肉が入っていました。わたしは菜食主義者、つまりベジタリアンだったので、戦時だからといって、それを変えるつもりはありませんでした。

「わたしは菜食主義者で肉を食べません」とわたしが言うと、「わかった。心配しなくても大丈夫だ。野菜を持ってこよう」と彼らは言って、自分の庭に行きました。

そして、新鮮な豆を持ってきて、わたしのために料理してくれました。そして、「何も心配することはない。わたしたちはあなたを殺すつもりはありません。何かあった時は、穴でも掘って、何がなんでもあなたを助けます」と彼は約束してくれたのです。

みなさん、神さまは存在します。そして、すべてを支配しておられます。わたしはそのことを、身をもって体験しました。

さて、隠れてから二日後のことです。噂が広がったので、その民兵はわたしをこれ以上隠すことができなくなり、わたしは茂みに戻らなければなりませんでした。他の殺人鬼たちが、わたしを狙って、午前11時ごろやってきました。

そこで、わたしをかくまっていた民兵は、こう言いました。

「あなたを隠していることがバレたら、わたしも殺される。どうか出て行ってくれないか? あなたには神さまがいるだろ。わたしには神はいない。ここから出て行っても、あなたの神はあなたを守ってくださるだろう」。

わたしは心の中で、ハレルヤ! と叫びました。なぜなら、彼はわたしが神を信じていることを認めていたからです。そうです、実に、わたしたちの神さまは偉大な神なのです!

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