墓からの説教【ルワンダの悲劇からの救い】

目次

励まし

こうして、わたしは再び茂み隠れることになりました。わたしは神さまがわたしの命を守ってくださると確信してはいましたが、もう心身ともに疲れ果てていました。

もう3週間以上も隠れていたからです。肌は乾いた木葉のようになっていました。

わたしは神に疑問を投げかけました。

 「主よ、何が起こっているのですか? わたしはあなたを信じています。あなたがわたしの命を守っているのなら、なぜわたしはこれほど苦しむべきなのでしょうか? わたしはもうすぐ死んでしまいます。それなのに、なぜわたしはこの茂みにいるのですか?」。

それは雨の降る夜でした。そして、とても寒かったのを覚えています。「主よ、どうぞこの茂みから出してください」とわたしは祈りました。

すると、わたしがそこにいると聞きつけた友人が、わたしに会いにきてくれたのです。そして、落胆しているわたしを励ましてくれました。

みなさん、どうぞ、困っている人がいたら、励ましてください。あなたのまわりで苦しんでいる人々は、あなたを持っています。わたしに友人が必要だったのと同じように、あなたを必要としている人がいるはずです。

わたしは、神さまが過去に数々の奇跡を行なっていたのにも関わらず、わたしはもう死ぬのだと、気を落としていました。ちょうどその時、夜中に友人が会いにきてくれたのです。

彼が来て、話す時間が持てたことは、とても幸せなことだったのですが、実際、彼はわたしのせいでとても困っていました。

「だれかをかくまっている家族は皆殺しにする」とこの地域の民兵が発表したと言うのです。

わたしの隠れていた茂みが、この友人の所有地にあったので、悲しいことに彼はわたしに出て行くようにと告げに来たのです。彼は家族に向かって、わたしは大切な友人で、わたしには神さまがそばについているから大丈夫だと、交渉したそうですが、母親を始めとして親戚中の反対を受けたそうです。

それはわたしにとっても、友人にとっても、ひどい試練の時でした。彼はとても落ち込んでいました。

わたしは母親の気持ちが理解できました。彼女は悩んだ結果、家族会議を開き、息子にわたしを茂みから出て行ってくれと伝えて欲しいと頼んだのです。

わたしの友人は、わたしが次の隠れ場所を探すまで、せめて1週間くれないかと家族に頼んだそうです。

「わたしはあなたのことを見捨て、危険にさらすつもりはありません。たとえ、それが死を意味していても、わたしはあなたと一緒にいるつもりです。僕があなたの新しい隠れ家を探してくるから、諦めないで待っていてくれないか」と友人はわたしに言いました。

「一週間あるから、祈ろう。神さまに解決策を示してくれるように頼もう」とわたしは言いました。そして、わたしたちはひざまずき祈りました。

「わたしはここで一週間断食して祈ります。どうかあなたも家に帰って一週間祈ってください。そして待ちましょう」と祈り終わった後、彼に言いました。

わたしは祈ることを決心しました。茂みの中で、聖書を読み祈ることを繰り返しました。一章読むごとに祈ったのです。わたしはそれを丸一週間行いました。

すると、どうでしょう。そうするうちに、わたしは自分が疲れていたのを忘れました。自分の死を気にせず、罪だけに目を留め、悔い改めました。わたしは神に祈り尋ねました。

「主よ、今週の終わりに、あなたが神であることをわたしに示してください。わたしは信仰の薄いものです。どうぞ信仰を与えてください。あなたが、わたしが説教したような神であることを、わたしに示してください」。

十字架を通して手と手が触れあうイメージ画像

茂みを出て

1週間が経ち、次の金曜日がきました。ちょうどわたしが祈り始めたのと同じ時間の、金曜日の夕方、わたしは神に祈りました。「主よ、空には何も見えません。何も変化は起こっていませんが、あなたがわたしの祈りに応えてくださると信じています。どうぞ信じる心を与えてください」。

「主よ、もう十分です。わたしはもうこれ以上、茂みにとどまるつもりはありません。茂みから出ます」と言って、茂みを出たのです。

茂みを出た後、聖書を持って、最寄りの家に向かいました。近くの家に到着すると、道の向こうからだれかが来るのが見えました。

雨が降っていて、その人は傘を手にしていました。彼が近くに来たとき、わたしはそれがわたしの友人の父であることに気がつきました。

わたしは駆け寄って、「おじさん、あなたの家族は無事ですか?」と尋ねると彼はこう言いました。

「おお、あなたはまだ生きていたのか? あなたの神はあなたの祈りに答えてくだったんだな」。

友人の父は、わたしと友人が祈っていることを知っていたのです。そして、彼はこう続けました。

「わたしの息子は無事だ。君のために、ずっと祈っているよ。信じられないかもしれないけど、この村にはもうだれも残っていません。殺人鬼も村人も、みんなどこかへ逃げて行きました。だから、恐れず、わたしの家に来なさい」

わたしはその場で、主に感謝をささげ、その後、友人の家に走って行きました。

神はそのように、何度もわたしの命を守ってくださいました。しかし、生きていると悲しいこともあります。

茂みから出た後、わたしはわたしの家族全員が殺されたことを知りました。わたしの兄弟、姪っ子に甥っ子、別の国にいた姉妹を除いて、約30人あまりが殺されました。

それを聞いてわたしは苦しみました。そして、何よりも辛かったのは、この苦しみ、悲しさの中にあっても、神さまのことを伝える働きをしなければならなかったことです。そうでもしなければ、落ち込んでしまい、わたしは壊れてしまいそうでした。

神さまがすべてを支配し、すべての責任を負っていることを信じ、わたしは身を任せました。わたしは危険の中にある時、神の働き人となることを誓っていました。

そこでわたしは、助かった後は、すべてを神にささげました。福音を伝えるために働きはじめてからは、もらった給料で本を買い、伝道講演会を開いたりしました。

故郷の村へ帰って

ある時、わたしは、故郷の村に戻って、働くようにしめされました。そこには、わたしの知っている人はだれも残っていませんでした。すべての家は破壊され、みんな殺されてしまったのです。

わたしは家族を殺した人たちの住む村に、神の御言葉を伝えることになったのです。誰が喜んでそんな場所にくるでしょうか?わたしはとても苦しみました。

「主よ、どうしてでしょうか?説教なんてできません……」と神に訴えかけました。

しかし、神は「行って、御言葉を伝えなさい」と言うのです。わたしはどうにかしてそれを避けようと、祈り続けましたが、神の答えは変わりませんでした。

そこでわたしは、給料を使って、聖書とホワイト夫人の本を買って、そこに行くことにしました。家族を殺した人と会うのですから、簡単な決断ではありませんでした。

しかし、約束は約束です。エレミヤがしたように、福音を抱えて、神を信じて進むのがわたしたちの使命です。ですから、ひざまずいて祈ったあと、荷造りをして、そこへ行きました。

最初は女性と子どもたちだけが参加していた集会でしたが、しばらくすると、夫たちもやってきました。そして、参加者はどんどん増えて行きました。

野外の広場で行なっていたその集会は、1週間後、なんと120人がバプテスマを受けるまでになりました。

わたしは、妹を殺した人に聖書を渡し、こう伝えたことを一生忘れません。

「あなたの罪を悔い改めるなら、あなたは天国へ入ることができるでしょう。そして、わたしとあなたは一緒に賛美するでしょう」

鎖から鳩が解き放たれ、飛んでいるイメージ画像

神はおられる

みなさん、天の神はおられます。この経験を通して、わたしが学んだ教訓は、天の神がすべてを支配しているということです。

あなたの人生で何が起こっているのか、わたしにはわかりません。ですが、神はあなたの祈りにこたえてくださいます。神はすべてをご存知です。神に頼り、ゆだねましょう。

もう一つ、わたしが学んだ別の教訓は、ルワンダで起こったことは、どこでも起こり得るということです。どこの国でも起こる可能性があります。

悪魔の手の届かないところにいる人は誰もいません。みなさんがもし、ルワンダに行く機会があれば、非常に驚くでしょう。なぜなら、ルワンダ人は世界の中でも素晴らしい人達だからです。彼らはいい人で、良いクリスチャンであり、祈る人であり、今日でも彼らは祈っています。

しかし、いきなり試練が起こったのです。人々は悪魔の側、または神の側に立つかを選ぶ必要があったのです。同じことが、もし今日ここで起こるとしたならば、多くの人たちが神の側ではなく、悪魔の側を選ぶかもしれません。

ですから、みなさん、今が備えの時だということを忘れないでください。

実際に、試練の瞬間が来たときに、キリストの側に堅く立つために、今、神に命をささげましょう。大量虐殺が始まったとき、ルワンダの人々には、それを選ぶ時間はまったくありませんでした。そのような時がきてからでは、遅いのです。

あなたが正しい場所に立つ時は、今日です。今日、イエスに命をささげましょう。そうすれば、おそらく大量虐殺ではないかもしれませんが、試練の時が、別の形であなたに来た場合、神の側を選ぶことができることでしょう。

わたしたちは、終わりの時代に、そのような試練が訪れることを知っています。ですから今日、完全に、あなたの人生をイエスに捧げてみてください。

みなさんの中に、少しでも神さまにささげていない部分があれば、どうぞ今日、祈ってみてください。

自分の人生を再びイエスにたくし、心の底から祈ってみてください。「主よ、わたしは完全にあなたのものになりたいです。イエスさまに命をささげたいです」と。

天には、宇宙を創造された神がいます。そして、今も生きて、わたしたちのことを支配し見守っていてくださいます。わたしたちを愛し、変わることのない神に感謝します。

今日、どうかわたしたちに許しが与えられますように。悪魔の誘惑に打ち勝つことができますよう、お守りください。このわたしの証を聞いてくださった、みなさんの上に神の恵みがありますように。

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