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この記事はこんな人におすすめ!
・ノアの箱舟やバベルの塔のあらすじを知りたい
・鳩が平和の象徴になった理由を知りたい
・聖書に書かれている物語からの教訓を学びたい
この記事では、旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」と「バベルの塔」の物語のあらすじを簡単に解説!
鳩が平和の象徴になった理由や約束の虹の意味などをわかりやすく紹介します。
旧約聖書にある「ノアの箱舟」とは?簡単にあらすじを解説!
「方舟」「箱舟」「箱船」何が違う?
「はこぶね」と検索すると、「方舟」「箱舟」「箱船」と表記が出てきます。それぞれ意味は次のようになります。
- 方舟
「方」は四角形や直角を意味し、「舟」は船を指します。つまり「方舟」は、四角い形状の船を示す表現です。 - 箱舟
「箱」は四角い容器を指し、「箱舟」も「方舟」と同様に、箱のような形状の船を表現しています。
「方舟」と「箱舟」は基本的に同じ意味ですが、現在の聖書では「ノアの箱舟」が正式な表現です。
一方、文語訳聖書では「方舟」と表現されていたため、過去の文献では「ノアの方舟」と表記されることがあり、それが一般的にも定着しています。
- 箱船
「箱船」という表記は、これまで聖書やキリスト教関連の文献で使用された例がありません。
登場人物
ノアとは
ノアの箱舟の主人公で、箱舟をつくった人物。最初に創造された人であるアダムから数えて、10代目に当たる。
「ノア」の語源は、「休める(ヌーアハ)」に関係しているとする学者もいますが、確かではありません。聖書の中では、「慰める(ナーハム)」に関連づけられています(創世記5章29節)。
ノアの箱舟に乗った人
ノアの箱舟に入ったのは、ノアの妻、息子、息子の妻です。
ノアの息子の名前は、セム、ハム、ヤフェトで、ノアの洪水後に彼らから諸民族が出てきたとされています(創世記10章32節)。
また、セムの家系からアブラハムは誕生し、このアブラハムはイスラエル民族の先祖となりました。
ノアの箱舟のあらすじ
- 堕落した世界
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アダムとエバがエデンの園を追い出されてから、数百年経つと、地上に人が増え始め、人は堕落しました。
主は、地上に人の悪がはびこり、その心に計ることが常に悪に傾くのを見て、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。
創世記6章5ー6節 - 神に従う人であったノア
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堕落した世界にあって、ノアは「正しく、かつ全き人」でした(創世記6章9節)。
- ノアに箱舟の建設が命じられる
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神はノアに箱舟の建設を命じられます。この時、ノアはおよそ480歳でした。
ノアの方舟は3階建てで、その大きさは長さが約134m、幅は約22m、高さが13mです。
また、内部にはいくつかの部屋がありました。
- 箱舟の完成
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ノアの箱舟が完成すると、神はノアとその家族に箱舟に入るように命じられます。
また、箱舟には清い動物(食べることを許された動物)が7組、清くない動物が1組入りました。
箱舟が完成するまでの間、ノアは洪水を警告し続けますが(ペテロの手紙一・3章2節参照)、ノアの家族以外は箱舟に乗りませんでした。
- 洪水の始まり
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雨が四十日四十夜も降り続け、大洪水が起きました。その後、水は150日間、地上にみなぎり続けます。
洪水は四十日間、地上で続いた。水は増して箱舟を押し上げ、箱舟は地上から浮かび上がった。水はみなぎり、地上に大いに増し、箱舟は水の面を漂って行った。水は地上でますますみなぎり、天の下にある高い山々はすべて覆い隠された。
創世記7章17ー19節
- アララト山に流れ着く箱舟
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大洪水後、150日たって水が減り始め、箱舟はアララト山に留まります。
- 鳩を放つノア
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洪水がおさまってから、ノアは鳥を放って様子を探りました。
最初、ノアはカラスを放ちますが、カラスは休む場所を見つけることができずに帰ってきます。
次にノアは鳩を放ち、2回目になって鳩はオリーブの若葉をくちばしに加えて帰ってきます。
そして、3回目ノアが鳩を放つと、もう鳩は帰ってきませんでした。
- 神の約束を象徴する虹
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ノアは箱舟から出ると、感謝のささげ物をし、神は洪水によって滅ぼさない契約として虹をノアに見せました。
なぜ、鳩とオリーブは平和の象徴となったの?その理由は?
ノアが洪水の終わりを確かめるために、鳩を放ち、その鳩がオリーブの枝をくわえて帰ってきたことにより、洪水の終わりを知ったことが由来で、オリーブの枝を加えた鳩が平和の象徴となりました。
また、イエス・キリストがバプテスマを受けた時にも、聖霊なる神が鳩のような姿で降りてきました。
どちらのエピソードも、神との和解を連想させる場面で鳩が登場するため、鳩が平和の象徴となっていったのでした。
その後、1949年4月にパリで開催された世界平和評議会のポスターにピカソが書いた『鳩』の絵が使用されると、平和の象徴としての鳩のイメージが浸透されるようになります。
ノアの箱舟物語のその後
ぶどう酒を飲んで酔っ払ったノア
大洪水後、ノアは農夫となり、ぶどう畑をつくりました。
ある日、ノアはぶどう酒を飲んで良い、天幕の中で裸になってしまいます。
この姿を見た、ハムは外にいた他の兄弟セムとヤフェトに知らせると、セムとヤフェトは気をつかって、父の裸を見ないように後ろ向きに歩いて近づき、ノアに服を着せました。
酔いがさめたノアがこの出来事を知ると、セムとヤフェトを祝福する一方で、ハムの行動に怒り、呪ったと書かれています。
聖書はノアを「正しく、全き人」であったとしていますが(創世記6章9節)、このエピソードでは彼の人間的な弱さが書かれています。
聖書には、優れた人々の功績や品性だけでなく、欠点や失敗も隠すことなく記録されており、そこに教訓が込められています。
バベルの塔とは?あらすじを簡単に解説!
ノアの洪水後、しばらくして、人々はバベルの塔を築き始めます。この当時は、まだすべての人々が同じ言語を話していました。
人々がバベルの塔を築き始めた理由は、「散らされることのない」ようにするためでした(創世記11章4節)。
この行動は、洪水によって滅ぼすことはないという神の契約を信じていないことをあらわしていました。
ユダヤの伝承には次のようにあります。
自分たちの力を誇示するために塔を建て、その頂上に剣を持つ偶像を据えました。それは神に戦いを挑む意図を象徴するものでした1。
また、バベルの塔を築くために、暴力的な圧政が敷かれていたのかもしれません。
ユダヤの伝承によると、43年間で60万人が塔の建設に従事し、バベルの塔が非常に高くなると、頂上まで資材を運ぶのに1年かかるほどだったそうです。
そのために貴重な資材であるレンガが落ちると人々は嘆きましたが、人が落ちて死んでも無関心で、病人や妊婦でさえも、休むことを許されず働かされたそうです2。
そのために、神は言語を乱し、ひとつの言語ではなく、人々が多くの言語を話すようにしました。
言語が混乱したために、共同で都市を建てることができなくなり、バベルの塔の建築計画は終わります。
バベルの塔の名前の意味
「バベル」という地名の語源はアッカド語で「散る、消える(ババル)」言葉であった可能性が高いですが、旧約聖書の中ではヘブライ語の「混乱(バラル)」と関連させています(創世記11章9節)。
古代バビロニアの文献では、バビル(Bab-ilu)が語源で、「神の門」「神の港」を意味すると解釈されています。
「ノアの箱舟」や「バベルの塔」は実在したの?発見はされた?
ノアの箱舟の場所とされるトルコのアララト山
聖書では、ノアの箱舟はアララト山の上に流れ着いたとされています。
アルメニアの山岳地帯のことであると、聖書学者たちの間で一致していますが、具体的にアララト山脈のどの位置であるかは明確ではありません。
ノアの箱舟の残骸や遺跡は発見されたの?
ノアの箱舟の残骸を見つけたという報告は、これまでにいくつもありますが、考古学的な決定的な発見はなされていません。
聖書に基づく創造説の立場から生物学を研究する生物学者トッド・ウッドは、ノアの箱舟は洪水後に建築資材として再利用されたと考えており、発見されることはないのではないかと述べています2。
ノアの箱舟の大洪水に類似した神話
『ギルガメシュ叙事詩』には、神々から大洪水を起こすという警告を受けたウトナピシュティムという人物が、箱舟をつくって逃れる物語が描かれています。洪水後、彼は神々から特別に永遠の命を与えられます。
また、ギリシャ神話のデウカリオンとピュラの洪水伝説や、古代インドのマヌとマツヤの神話にも、ノアの箱舟に似た洪水物語が存在します。
しかし、これらの神話にはない、ノアの箱舟の特徴的な場面があります。
それは、神がノアに対して契約の虹を見せる場面です。
この虹は、神が洪水によって再び地を滅ぼさないと約束する契約のしるしでした(創世記9章12ー17節)。
バベルの塔の場所は?
現在、聖書に登場するバベルの塔は何も残っておらず、発見されていません。
メソポタミア人には塔を建てるという考えが一般的で、重要な都市にはほぼ例外なく建てられており、それらの塔はジッグラトと呼ばれ、頂上にはその土地の主神を祀る神殿が置かれていました。
これらとバベルの塔を結びつける説も多く見られますが、聖書を文字どおり受け取る学者や教派では受け入れられていません。
まとめ|「ノアの箱舟」や「バベルの塔」の意味や教訓は?
「ノアの箱舟」も「バベルの塔」も神に背いた結果として起こる裁きの場面を描いています。
ここでポイントとなるのは、ノアとその家族が救われた理由は、「箱舟に入ったから」でした。
ノアが箱舟をつくるその姿は来るべき洪水を知らせる警告となりましたが、その警告にも、ノアのメッセージにも人々は耳を傾けませんでした。
その精神は、バベルの塔でもあらわれ、人々は自分の力によって自分自身を救おうとします。その結果として、人々は神を軽視してしまうのです。
「ノアの箱舟」も「バベルの塔」も、わたしたちは自分の力によって救われるのではなく、神の力によって救われることを伝えています。
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参考文献
- Gen. R. xxxviii. 7; Tan., ed. Buber, Noaḥ, xxvii. et seq, cited in JewishEncyclopedia.com, “BABEL, TOWER OF”, https://www.jewishencyclopedia.com/articles/2279, 閲覧日: 2024年11月14日.
- ナショナルジオグラフィック日本版、アララト山でノアの箱舟を発見?、https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/3514/、閲覧日: 2024年11月14日。
いのちのことば社『新聖書辞典』
Siegfried H. Horn, The Seventh-Day Adventist Bible Dictionary (Review and Herald Publishing Association, 1979).
Francis D. Nichol, ed., The Seventh-Day Adventist Bible Commentary, vol. 1 (Review and Herald Publishing Association, 1978).
ジャック・B・デュカーン(訳・村山晴穂)『現代人のための創世記物語』セブンスデー・アドベントスト教団安息日学校部
JewishEncyclopedia.com, “BABEL, TOWER OF”, https://www.jewishencyclopedia.com/articles/2279, 閲覧日: 2024年11月14日.