健全な精神は健全な肉体に宿る
「健全な精神は健全な肉体に宿る」。
ローマの詩人ユウェナリスの名言とされるこの言葉を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
昨今、心の健康と体の健康の関係が科学的にも立証されつつあります。そして、聖書にも「あなたがたは、自分が神の神殿であり、神の霊が自分たちの内に住んでいる・・・」(コリント人への第一の手紙3章16節)(日本聖書協会新共同訳聖書)と書かれていて、私たちの体がいかに大切であるかを教えています。
その「神の神殿」に例えられている私たちの体をいかに健全に保つかは、人生における大きな課題のひとつではないでしょうか。この講座で、神様から与えられた大切な体を健康に保つ秘訣について学んでいきましょう。
目標達成にほど遠い「健康日本21」
2000年、厚生省(当時)は、「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」をスタートさせ、生活習慣病予防対策に乗り出しました。
その基本理念は、「すべての国民が健康で明るく元気で生活できる社会の実現」であり、そのために、壮年死亡の減少と健康関連生活の質(QOL)の向上を目指し、個人の自己選択による健康の実現、その支援の環境づくりという全体の健康づくりを総合的に推進する、と言います[1]。
この「健康日本21」の法的根拠となるのが、2003年より施行となった「健康増進法」で、受動喫煙の防止など健康づくりや疾病予防を積極的に推進する内容が盛り込まれています。
こういった動きの背景には、少子化の一途をたどり、あっという間に欧米を抜いて随一の超高齢社会となった我が国の行く末を案じる現状があります。
実際、統計によれば、65歳以上の人口は1950年には4.9パーセントでしたが、2002年には18.5パーセントにも上り、2050年には32.3パーセントにまで高まるだろうと予想されています[2]。これほど早く高齢者の人口が占める割合が増加したのは、日本が初めてです(図1)。
資料:UN,WorldPopulationProspects:The2002Revisionただし日本は、総務省「国勢調査」および国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)」による。
(注)先進地域とは、北部アメリカ、日本、ヨーロッパ、オーストラリア及びニュージーランドをいう。開発途上地域とは、先進地域以外をいう。
全人口の中に占める65歳以上の高齢者人口が4%を超えた社会を高齢化社会、14%を超えた社会を高齢社会と呼ぶ。日本では1994年に14%を超えた。参考までに、フランスでは高齢者人口が7%になってから14%になるまでに115年、スウェーデンが85年、イギリスは47年、ドイツは40年かかっているのに対し、日本はわずか24年(1970~1994)であった。
今日、死亡原因の上位を占めるのはがんや脳卒中、心筋梗塞(こうそく)といった、生活習慣が大きくかかわる病気になっています(図2)。
注 年齢調整死亡率の基準人口は「昭和60年モデル人口」である。縦軸は対数目盛。
資料 厚生統計協会編『図説国民衛生の動向2003』
2002年度の国民栄養調査によると、20年前に比べ、男性では肥満が1.5倍に、低体重の人が20代、30代の女性に2倍になったとあります。
また、普段の生活でストレスを感じていると答えた人は、男性で7割、女性で8割にものぼることがわかりました[3]。
こうしてみると、現在の日本が「健康日本21」の目標達成にはほど遠い状況であることがわかります。
健康づくりに欠かせないのは、よい生活習慣
一方、健康についての情報は至る所にあふれています。ニュース、新聞、雑誌、インターネット、どこを見てもさまざまな情報があり、どの情報を信じてよいものやら見当もつかないとよく相談されます。
診療の際に、「先生、これは飲んでてもえーんやろか?」と持ってこられたビンを見ますと、あるキノコから抽出されたエキスを精製して製品化された健康食品で、いろいろな病気に効く、と添付のパンフレットには書いてありました。
薬は効用がどの程度あり、どのような副作用がどの程度の頻度で起こる、といったデータがあって初めて市場に出ますが、健康食品の場合はそういったデータはほとんどなく、他の薬などとの相互作用の有無もわかりません。当然わからないものをお勧めすることはできません。
ある先生が、患者さんが主治医の勧めよりも、テレビ番組の情報の方をよく聞く、と冗談半分に言われたことがあります。某テレビ番組でココアが健康によいと放送されると、その日のうちにスーパーマーケットでココアが残らず売り切れるといった事態があった、という話も聞きます。
つくづくメディアの影響力というのはたいしたものだと思います。それだけ、日本人は健康には関心が高いと言えます。
その反面、糖尿病のような生活習慣病を外来で治療していますと、生活習慣を改善することの難しさを痛感します。「これを食べれば」「これを飲めば」健康になって病気になりにくい、がんにならない、と言われると心が動きます。それは楽ができる方がいいに決まっていますよね。
残念ながら、学問に王道がないのと同様、健康づくりにも「王道」はありません。日頃の積み重ねだけが、ほんとうに長続きするよい生活習慣、ひいては健康づくりへとつながります。
効果的な健康の原則
生活習慣の違いがどう死亡率や病気にかかわるかについて、1970年代にアメリカで行なわれたアドベンチスト健康調査[4]によれば、禁酒禁煙・菜食主義で、運動を励行することで、がんによる死亡率が3~4割減少、心筋梗塞による死亡率は男性で24パーセント減少、男性の脳梗塞による死亡率も25パーセント減少しました。
これらの結果から、セブンスデー・アドベンチスト教会(以下SDA)[5]の推奨する生活習慣は健康増進によいと考えられています。この教会は、健康増進についてその発足初期(19世紀末)から非常に関心が高く、一連の健康の原則(NEWSTART・ニュースタート)を勧めています(左ページ参照)が、これを現代医学の知識に照らし合わせてみますと、非常に効果的な原則であることがわかります。
国全体として健康づくりを進めることは非常に意味のあることですが、同時にまた一人ひとりが健康的な生き方を選択しやすいように環境を整備する必要もあります(これも「健康日本21」の課題の1つにあげられています)。
そのためには健康増進・病気の予防のために何がよく何が悪いか、どういった基準で得られる情報を取捨選択するか、が重要になってきます。
そこで、このシリーズでは、実績のあるSDAが推奨する健康の原則を1つひとつ順番にとりあげ、現代医学の知識と合わせて、これらの情報の価値を判断する基準となるものを考えていきたいと思います。
これにより、皆様が今後出会われるであろうさまざまな健康に関する情報を、ご自分で判断されるためのよき指針となれば幸いです。
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[1] 厚生統計協会編『図説国民衛生の動向2003』、47ページ
[2] 同、27ページ
[3] 平成14年国民栄養調査結果の概要
[4] LLUAdventistHealthStudy http://www.llu.edu/llu/health/previous.html
[5] キリスト教プロテスタントの一派
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