第4課 体の中からみずみずしく

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水の重要性

よく言われることですが、成人男性の体重の6割、成人女性の体重の5割は水です[1]。仮に私の体重が60キロであれば、体に含まれる水は36リットルもあるわけです。

これだけでも、体にとって水が重要なことは容易に想像できますが、今回はなぜ水が重要なのか、体内での水の役割から考えていきましょう。

水の性質と役割

人間に限らず、地球上のすべての生き物は、生命活動を水に依存しています。たんぱく質、脂質、糖質、電解質などのさまざまな物質が水の中に溶けていて、電子のやりとりができる環境にあるからこそ、電気信号や溶けている物質のやりとりが可能になり、細胞同士のコミュニケーションが成立します。

それぞれの物質が互いに影響しあって生命活動を営みますが、これは水という媒体があるからこそ可能なのです。

水には、他の溶剤に比べ、まさに命のためにあると思わせるような特別な性質があります。たとえば、非常に他の物質を溶かしやすいこと。1つの物質を溶かすと次はダメというのではなく、逆に他の物質を次々と溶かしていく性質があります。

第2に、他の溶剤に比べると、ずっと熱しにくく冷めにくいこと。体温を恒常的に保つ必要がある生命体では、簡単に温度が変わらない方がよいのは当然ですね。

そして、第3に沸点が非常に高いこと。水以外の水素化合物はほとんどが常温では気体ですが、仲間であるはずの水だけが常温では液体です。沸点が高ければ蒸発するときに奪うエネルギーはそれだけ高くなりますから、体温の調節には重要な意味を持ちます。

さて、体の5~6割が水とはいっても、臓器によって割合は異なります。人体に含まれる水分は大きく細胞内と細胞外に分けられますが、細胞外の水が55~75パーセント[2]を占め、このうちおよそ3分の1が血液です。

他の臓器でいえば、人間の脳は80パーセントが水だといわれ、網膜にいたってはなんと92パーセントが水だとされています。

水が足らなくなるとこういった臓器は特に影響を受けやすいですから、体は少なくとも脳にいく血液の量だけは最後まで確保するようにできています。参考までに、トマトは90パーセントが水、クラゲは96パーセント、水だといわれています[3]

どんな水が健康によいか

歴史をさかのぼりますと、江戸時代に、既に水を売る商売があったといいます。当時の飲み水は井戸水ですが、海辺では塩分が混じっていたり、井戸まで遠い家もたくさんありましたし、雨が少ないと濁ってしまったりする井戸も多かったため、川の上流のきれいな水を売り歩いたのだそうです[4]

飲料水にも、ミネラルウォーターから蒸留水までいろいろあります。「……のおいしい水」といった飲料水がよく売られていますね。また、「硬い」水、「軟らかい」水といった表現があります。重金属や細菌が含まれるような水は飲めないのが当然ですが、では、どんな水が健康にいいのでしょうか?

蒸留水には味がありませんから、飲料水の味はそれぞれにわずかに含まれる鉱物によって決まります。この鉱物がどのくらい含まれているかで、その水の「硬度」が決まります。通常、水中カルシウムイオンとマグネシウムイオンの量から算出される硬度が200度以上の水を「硬水」、それ以下を「軟水」と呼びます。

どちらかというと、軟水の方がやわらかい味、硬水の方が引き締まった味といわれますが、味の違いだけでなく、料理によっても水の向き不向きがあるといわれています。ちなみに、日本の水道水はほとんどが軟水です。

以前、厚生省(当時)が、「おいしい水」について研究発表していますが、これも軟水です。硬度が低い方がくせのない味だからだそうです。(表1)

硬水と軟水、どちらがより健康によいか、という研究はこれまでにもいくつかありますが、現在のところどちらがよい、という決定的なデータはないようです。

水分を摂るためには、水以外にお茶やジュースなどで摂ることもできます。ただしジュースや清涼飲料水は糖分に気をつけなくてはなりません。またさまざまなお茶が売られていますが、その効用については、いずれも医学的に確かなデータがあるものではないことを念頭に置いておく必要があります。

水の硬度計算

硬度=(カルシウム×2.5)+(マグネシウム×4)

カルシウムイオンとマグネシウムイオンの量を、それぞれ炭酸カルシウムの量に換算し、1L中に何mg含まれているかであらわす。

表1おいしい水とは

厚生省(当時)「おいしい水研究会」1985年4月24日より

硬度    30~100mg/L    カルシウムよりマグネシウムが多い水は苦い

残留塩素       0.4mg/L以下    

炭酸ガス       3~30mg/L      

酸素    5mg/L以上      

温度    20℃以下       

臭気度*       3以下  いろいろな臭いが水につくと、不快感からまずくなる

*臭気度:水のにおいを嗅覚で評価して表現する方法。採水した水を等量の無臭の水で希釈し、嗅覚でにおいを感じることのできる最後の希釈回数。「臭気度=3」は、「2の3乗=8倍」希釈を意味する。なお、水道水基準について、「臭気=異常でないこと」と定められている。

1日に必要な水の量

人体の働きは、水分なしには考えられません。その活動を維持するためには、人間は常に水分を循環させる必要があります。体内の水分が1パーセントなくなると、のどが渇きます。3~5パーセントなくなると、倦怠(けんたい)感や頻脈(ひんみゃく)などがあらわれ、さらになくなると体温の調節をはじめ、さまざまな働きに支障が出てきます。

どのくらいの早さで水分がなくなったかにもよりますが、一般に体内の水分の10~15パーセントがなくなると命にかかわるとされています。

さらに、水分は体内の不要な物質を排出するためにも用いられます。例えば、腎不全などで1日に出る尿が500ミリリットル以下になると、体内に不要な物質が貯まって、生命に危険な状態になってしまいます。

それでは、1日にどのくらいの水分が必要になるのでしょうか?

成人男性では、安静にしていても、汗や尿などで1日におよそ2.5リットルの水分が体外に排泄されます。なくなった分は補わなければなりませんが、食べ物に含まれる水分や新陳代謝で水分がつくられる量が平均するとおよそ1リットル弱になりますから、実際に補給すべき最低限の水分は、およそ1.2~1.6リットルです。

これはコップに6~8杯の水分に相当します。運動した時や暑い時は発汗量が増えますから、当然ながら、排泄される水分はもっと多くなるため、補給すべき量も増えます。ただ、たくさん飲めばよいというわけでもありません。

臓器に問題なくても多飲症といって水分を飲み過ぎて起きる病気もあります。また、1度にたくさん飲むのではなく、少しずつゆっくり時間をかけて飲む方がよいとされています。

何でもそうですが、昔から言われているように「過ぎたるは及ばざるがごとし」。適量の水を飲むように心がけましょう。


[1] Kasper,et.al.Harrison’sPrinciples of Internal Medicine,Sixteenth edition.McGraw-Hill,2005.

[2] 同上

[3] 「水web」、http://www.secom-alpha.co.jp/mizuweb/

[4] 「水資源機構」、http://www.water.go.jp/

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