第5課 正しい日光利用のすすめ

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日光の役割

日光は、地球上のすべての生命体にとり、何らかの形で必要不可欠です。人間をはじめさまざまな生命体が住めるように地球を暖めるだけでなく、酸素を作りだす過程においても必須ですし、人間の健康を保つ上でも重要な役割を果たします。

今回は、日光がどのように健康にかかわるかを見ていきましょう。

日光の効用

太陽光のうち、地上に届くのは可視光線および赤外線や紫外線の一部です。上空にあるオゾン層が、紫外線よりもさらにエネルギーを持った放射線を遮断し、地上に悪影響を与えないようにしているのはご存知の通りです。

赤外線は物を温める効果がありますが、可視光線や紫外線は人体に影響を与えることができます。ただし、可視光線は皮膚の細胞が反応しなければ影響を与えません(普通は反応しないとされる)。一方、紫外線は直接影響を与えます。

日光の人体への効用としてよく知られているのは、ビタミンDの活性化です。ビタミンDが活性化されるためには、腎臓の細胞が作る酵素と皮膚での紫外線の働きが必要になります。

活性化されたビタミンDには腸によるカルシウムやリン酸の吸収を促進する働きがあり、骨格形成、免疫の働きや血液細胞をつくる上で重要な働きをします。さらに、最近では大腸がんや乳がんの予防に関与しているというデータも出てきています。

仕組みがはっきりわかっているわけではありませんが、日光の効用は他にもいくつか知られています。直射日光には殺菌作用がありますから、洗濯物などは可能なら直射日光で干した方がよいです。日が射さない部屋は、室内の細菌をはじめさまざまな微生物が繁殖して、じめじめした不健康な環境になってしまいます。

2004年、日光のより強い時期に妊娠初期を過ごした胎児は産まれる時の体重がより重い、という統計が発表されました。さらに、お年寄りの腰の骨折が日照時間の少ない冬により起こりやすいという統計があります。また、心筋梗塞(こうそく)やうつ病のような病気は、冬の時期に増加することが知られています[1]

紫外線と日焼け

紫外線は便宜上波長によってUV-AとUV-Bに分けられます。波長の長いUV-Aは、既に上皮にあるメラニン(皮膚にある黒褐色あるいは黒色の色素)を活性化して日焼け色(sun tan)を作ります。これは、比較的早く日焼け色が出る代わりに、すぐに消えてしまいますが、皮膚の奥の方にある血管や組織に影響を与え、しわの原因になります。

波長の短いUV-Bの方は、線量が多いと皮膚が赤くなってやけどのようになります(sun burn)が、少量では新しくメラニンを作るように刺激しますので、数日後により強い日焼け色を作ります。これを利用したのが紫外線ランプで、日光浴をしなくても日焼けできるように世界各地で利用されています。

ところが、この紫外線ランプの普及と共に皮膚がんが過去30年間で急増し、世界保健機関(WHO)は2005年、18歳未満の若者は日焼けサロンなどの利用をしないようにと勧告を出しました[2]

その背景には、18歳までの間に一生分の紫外線線量の8割を被曝(ひばく)することで、後になって黒色腫(しゅ)のような皮膚がんになる確率が高くなるという疫学データがあります。実際、UV-AもUV-Bも共に皮膚がん発現に関与していることが知られていますが、紫外線のエネルギーがDNAに影響を与えるだけでなく、免疫機構にも影響しているということがわかってきました。

ときどき聞くのは、日焼けすればその後は紫外線から守られるのではないか、という話ですが、残念ながらこれは正しくありません。

確かに、皮膚が真っ赤になることは少なくなりますが、皮膚がんのような長期的な紫外線の影響があることに変わりはないのです。強い紫外線は皮膚の細胞を殺すか傷つけてしまいますが、その結果、皮膚の老化が早まったり、弾力性を失ってしわが増えたりします。

皮膚は、その上皮をより厚くすることでそれ以上のダメージを防ごうとします。日焼けとは、紫外線に傷つけられた皮膚細胞の防御反応なのです[3]

ところで、ビーチなどでときどき目が赤くなっている人を見かけますが、これはたいてい紫外線の影響で起こる角膜炎や結膜炎です。角膜炎や結膜炎は通常2~3時間紫外線にあたっているとあらわれ、非常に痛くなることもありますが、たいていは特に後遺症なく治癒します。

ただし、白内障も紫外線(特にUV-B)で進行しやすいとされており、こちらは手術が必要になることがあります。WHOは、世界中の白内障のうち20パーセントまでは過剰に紫外線にあたったせいだと推定しています[4]

紫外線の効用

さて、先に述べましたが、ビタミンDの活性化には紫外線が必要です。ただし、ビタミンDの活性化に必要な紫外線量はそれほど多くなく、夏であればわざわざ日焼けしようとしなくても、週に2~3回、5~15分間普通に手や腕、顔に日光が当たる程度で十分だといわれています。また、これは直射日光である必要はありません。

それから、日射量が少ない地域ほど大腸がんなど、消化器系のがんで亡くなる方が多いというデータが昨年末に発表されました。これは、47都道府県の1961~90年の平均日射量と発生部位別にみた2000年の都道府県別のがん死亡率を比較して関連を調べたもので、「美白ブームなどで極端に日光を避ける風潮が、消化器系がんを増やす危険もある」と指摘しています[5]

正しい日光の利用法

こうしてみますと、日光にまったくあたらないのは不健康ですが、あたりすぎて日焼けする程であってもいけないことがわかります。日焼け止めのクリームなどを使うと紫外線の影響をある程度和らげてくれますが、日焼け止めを塗ったからといって長時間直射日光にあたっていてよいというわけでもありません。

オゾン層の破壊が進めば、地上に届く紫外線の量も増えますから、なおさら気をつける必要があります。

時間帯を選び、帽子の利用や服を選ぶことで、過度に紫外線にあたらないようにすることが大切です。また、適度に日光にあたるように心がけ、日光の恵みを最大限に生かすようにしましょう。


[1] Ness, et.al. “Are we really dying for a tan?” BMJ 1999; 319:114-116

[2] WHO “Sunbeds, tanning and UV exposure” Fact sheet No 287, March 2005

[3] WHO “The known health effects of UV” http://www.who.int/uv/faq/uvhealtfac/en/

[4] 同上

[5] Mizoue, T. Ecological study of solar radiation and cancer mortality in Japan.Health Phys. 87(5):532-538;2004

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