第7課 おいしい空気は元気のもと

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空気とは

空気は、窒素が78パーセント、酸素が21パーセント、0.9パーセントのアルゴン、そして残りは二酸化炭素、ヘリウム、水素などの気体からなる混合気体です。人体のさまざまな活動にはこれらの気体が不可欠です。今回は、この空気の健康とのかかわり合いを見ていきましょう。

呼吸法

体内のさまざまな機能のうち、意識的にも無意識にもできるのは呼吸だけです。意識的な呼吸運動(腹式深呼吸など)により、ある程度無意識に反応する自律神経に影響を与えることができるとされていますが、これは病気の治療というよりはストレス時の対処や気分を落ち着けるといった意味のものです。

また、呼吸運動は気管支喘息(ぜんそく)の方にリハビリとして用いられることもありますが、肺の機能が低下している場合には、その病気に合った呼吸法が必要ですから、医師にご相談ください。

シックハウス症候群

「シックハウス症候群」という言葉をお聞きになったことがおありでしょうか。汚染された空気により頭痛、嘔気(はきけ)などのさまざまな症状が起こる病態で、換気の悪い室内で起こります。世界保健機関(WHO)の統計によれば、毎年200万人もの人々(主に女性や子ども)が、これが原因で死亡しているといいます。

日本では2003年に建築基準法が改正され、「シックハウス対策」が呼びかけられました[1]

実際には、「シックハウス症候群」は、主に新築や増改築をした後に起こることが多く、さまざまな環境因子の暴露によって起こる居住に由来する健康障害の総称[2]ですから、純粋に化学物質のみが原因というわけではなく、すべてが解明されたわけでもありませんが、よりそういった問題を引き起こしにくい建材を使うように義務づけ、換気の必要性がよりクローズアップされたことには、大きな意味があります。

換気が十分でない部屋に閉じこもっていると、説明のつかないさまざまな不快感が出現します。

くさい部屋では仕事も勉強もはかどりませんし、何かをする意欲もわきません。さまざまな粉塵(ふんじん)、ハウスダスト、ダニなどはアレルギーの原因になりますし、気管支炎などの呼吸器の病気になりやすくなります。

おいしい空気

これまでの研究では、換気率は高ければ高いほどよく、公害物質が少なければ快適さや仕事の能率も向上するとされています。

2000年にイギリスで発表された研究によりますと、空調設備のしっかりしている建物とそうでない建物を比較した場合、さまざまな症状が首尾一貫して発現した原因となったのは粉塵と低周波のノイズ(騒音)でした。空気の善し悪しは化学物質や粉塵だけでなく、さまざまな環境因子も大きく影響するわけです。

1998年に地域経済総合研究所が創設した「IEQ問題研究会」では、アンケート調査をもとに、室内で望ましい空気を「おいしい空気」としてまとめました。その中で「おいしい空気」は、3つの評価軸で表現されるとしています。(表1)清潔で適度に換気がされており、快適な温度・湿度の空気が「おいしい」空気だというわけです。

表1 おいしい空気のまとめ(評価一覧表)
評価軸  定義
フィジカル(物理的)因子       
気流(風速)    ・空気がよどんでいない。
        ・適切な換気がなされている。
        ・不快なドラフト(すきま風)がない。
        ・適度な気流がある。

温度           ・季節や着衣量に応じた適切な温度。
・冷房期を除いて、若干涼しい。

湿度(相対)    ・夏はやや低め。
・冬はやや高め。

浮遊粉塵       ・ほこりっぽくない。
・タバコの煙を感じない。

メンタル(精神的)因子  ・全体的にゴミゴミしていない。
・清潔感がある。
・1人当たりの空間が確保されている。
・自然に近い雰囲気がある。
・観葉植物やマイナスイオンの存在。

におい因子            ・不快な臭いを感じない。
・T P O に応じた快適な香りがある。

IEQ問題研究会(現在、室内空気研究会)報告
IEQ=Indoor Environment Quality
http://indoor-air.jp/

それでは、屋外ではどうでしょうか。公害は、肺の病気、特に喘息のある方々には大きな問題となるだけでなく、新生児の死亡に大きく関与しており、風邪などの呼吸器疾患が増加するとされています[3]

また、最近では、アレルギーの発症は、遺伝的な要素もあるが、公害がきっかけになりやすいという研究結果が出ていました。どの物質がどのような問題を引き起こすかという詳細は不明な部分が多いですが、汚染された空気が健康によくないことは確実です。

ダイキン工業というエアコンや空気清浄機をつくっている会社が「現代人の空気感調査」という調査を行っていますが、その第2回[4]で、「おいしい・快適な空気はどんな空気をイメージするか」という調査をしました。

その結果、高原や山の空気と答えた人がもっとも多く、次いで渓谷や滝などの空気、汚染されていない空気という答えが返ってきたそうです。室内であれ屋外であれ、清々(すがすが)しく、さまざまな化学物質に汚染されていない空気がおいしい空気であることは、だれもが意見の一致するところのようです。

マイナスイオンと空気清浄機

さて、さまざまな所で「マイナスイオン」という言葉を耳にします。電化製品店などでは必ずといってよい程宣伝文句に見かけますが、医学文献を検索してみますと、1991年にアメリカでなされた臨床試験など、数々の研究発表がされているものの、結局効能は有意には認められませんでした。

他の研究ではオゾンの発生が健康に有害な可能性もあると指摘されていることもあり、残念ながら「マイナスイオン」の効能については十分な根拠がないと言わざるを得ません。

空気清浄機については、埃などを除去する働きがありますから、目的が埃などの空中浮遊粉塵を除去することであれば有用と言えます。ただし、タバコの煙(副流煙)による害は防止できません。

これは2005年7月現在、販売されている空気清浄機がいずれも有害ガス成分を除去できないためで、タバコに限らず有害ガス(一酸化炭素など)が発生する環境では、空気清浄機に関係なく換気が重要です。もちろん、有毒ガスを発生させないに越したことはありません。

自然界に出て行き、きれいな海辺や清々しい山の空気を吸い込むと、なんとも言えない活力がみなぎってきます。普段意識して呼吸しているわけでなくとも、呼吸する空気の質が私たちの心身に大きく影響を与えていることがわかります。これを機会に、お部屋の空気を見直してみてはいかがでしょうか。


[1] 国土交通省 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sick.html

[2] 厚生労働省「室内空気質健康影響研究会報告書」からhttp://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/02/h0227-1.html

[3] WHO “Effects of Air Pollution on Children’s Health and Development” http://www.who.int/topics/air/en/

[4] ダイキン工業株式会社「空気の調査ライブラリ」からhttp://www.daikin.co.jp/kuuki/library/index.html

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