敗れた敵、サタン【ヨハネの黙示録-イエスキリストの働きを知る】#8

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この記事のテーマ

黙示録12章から14章は、この書巻の終末に関する部分(黙15:1〜22:21)に私たちを備えさせます。

黙示録の前半(1〜11章)は、キリスト教の全時代を通じて、敵対する世界の中での教会の霊的戦いを描いていますが、残りの部分は、再臨と神の王国に至る諸事件に焦点を合わせています。

12章の目的は、世界史の最後の危機の裏側にある全体像を示すことです。それは、歴史を通じて、キリストとサタンの大争闘がいかに展開してきたのかを示しています。

黙示録において、サタンは神と神の民の大敵です。彼は実在し、宇宙の中のあらゆる悪と反逆の背後に立っています。彼は、再臨前に神に対して成功を収める最後のチャンスがハルマゲドンの戦いに勝つことだと知っています。それゆえ、この出来事への準備にあらゆる努力を集中します。

黙示録12章は、サタンが成功しないという確証を神の民に与えることを意図しています。またこの章は、サタンが心を固めていて、終末時代の神の残りの教会に全面戦争を仕掛けること、また残りの教会の希望と勝利するための力はキリストの中にのみ見いだされるという警告です。

女と竜

黙示録12:1〜4を読んでください。聖書で、女は神の民の象徴として用いられています(IIコリ11:2)。貞潔な女は忠実な信者をあらわす一方、淫婦は背教したクリスチャンをあらわします。黙示録12章の女は、まず旧約聖書のイスラエルを象徴していて、メシアはそのイスラエルに来られました(黙12:1〜5)。13節から17節では、女は残りの民を産む真の教会を象徴しています。

この女は太陽をまとい、月を足の下に置いていた、と描かれています。聖書で太陽は、キリストの御品性の輝き、キリストの義(マラ3:20〔口語訳4:2〕)をあらわします。キリストは「世の光」(ヨハ8:12)であり、彼の民は、神に愛情深い御品性をこの世に反映する必要がありました(マタ5:14〜16)。「小さい光」(創1:16、口語訳)である月は、福音時代のキリストの働きを暗示する旧約聖書の約束を指し示しています。

ヨハネが幻の中で次に見るものは、「火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があっ(た)」(黙12:3)。この竜はサタンであると(同12:9)、あとで特定されています。惑わすために用いられる道具を象徴する竜の尾は(イザ9:14、15、黙9:10)、天の星の三分の一を地上に投げつけました(黙12:4)。この行為は、サタンが天における高い地位から落とされたとき(イザ14:12〜15)、天使の三分の一を欺くことができたことをあらわしています。落とされたこの天使たちが、神と神の救済の働きに反対することで悪魔を支援している悪霊なのです(Ⅰテモ4:1参照)。黙示録はまた、「十本の角と七つの頭」を持っているとされるこの竜を、サタンによって利用されるこの世の代理人(異教ローマ〔黙12:4〕や心霊主義〔同16:13〕)の象徴としても用いています。「龍は、サタンであると言われている(同12:9)。救い主を殺すためにヘロデを動かしたのは、サタンであった。しかし、キリスト教時代の初期において、キリストと彼の民に戦いをいどんだサタンの主力は、ローマ帝国であり、そこにおいて最も有力な宗教は、異教であった。こうして、龍は、第一義的にはサタンを表すが、第二義的には異教ローマの象徴である」(『希望への光』1807ページ、『各時代の大争闘』下巻157ページ)。

黙示録12:9を読んでください。サタンは「年を経た蛇」と呼ばれています。創世記3:15と、「子を産もうとしている」(黙12:4)女の子孫を滅ぼそうとする年老いた蛇の企てとの間には、つながりがあります。最初から、サタンはメシア(サタンを滅ぼすために生まれてくる子ども)を待ち受けていました。メシアが生まれたとき、サタンは、(黙12:4において、同じく竜として象徴されている)異教ローマを用いて彼を滅ぼそうとしました(マタ2:13〜16参照)。しかし、その子は「神のもとへ、その玉座へ引き上げられた」(黙12:5)のです。

地球に投げ落とされたサタン

問1

天での戦いについて語っている黙示録12:7〜9を読んでください。天からのサタンの追放という結果に終わった戦争の性質は、どのようなものでしたか。

サタンが神の政府に反逆して、大争闘が始まったとき、天から投げ落とされました。彼は天の玉座を手に入れ、「いと高き者のようになろう」(イザ14:12〜15)と思ったのです。神に公然と反抗しましたが敗れ去り、地上に追放されました。しかしサタンは、アダムとエバをだますことで、この世に対するアダムの支配権を奪い取りました(ルカ4:6)。この世の自称支配者として(ヨハ12:31)、彼は地球を代表して天の会議に出席する権利を主張しました(ヨブ1:6〜12)。しかし十字架で敗北したのち、サタンと堕落天使たちは、罰を受けるまで、牢獄としての地球に閉じ込められてきたのです(IIペト2:4、ユダ6)。

イエスは御自分の死によって、失われたものを贖い、サタンの本当の品性が全宇宙の前で明らかにされました。「サタンは自分の仮面が引きはがされたことを知った。彼の統治は堕落していない天使たちと天の宇宙の前に公開された。彼は殺人者の正体を現した。神のみ子の血を流すことによって、彼は天の住民の同情をまったく失ってしまった。それからのち彼の働きは制限された」(『希望への光』1079ページ、『各時代の希望』下巻286、287ページ)。全宇宙の前で、地球の統治権はサタンからイエスに移され、イエスが地球の正当な支配者であると宣言されたのです(エフェ1:20〜22、フィリ2:9〜11)。

イエスはこの出来事を予告して、次のように言っておられます。「今こそ、この世が裁かれる時。今、この世の支配者が追放される」(ヨハ12:31)と。

サタンに対するこの裁きによって、「我々の神の救いと力と支配が現れた。神のメシアの権威が現れた」(黙12:10)のです。なおもサタンには、地上の神の民を害する限定的な力がありますが、「残された時が少ない」(同12:12)ことを知っています。確かに、その時間は「少ない」のですが、サタンは、痛み、苦しみ、破壊をここで引き起こすために可能なことを何でも行っています。

地上の戦い

黙示録12:13、14を読んでください。「兄弟たちを告発する者としてサタンを投げ落とすことは、キリストが御自分の命を犠牲にされるという大いなる業によって成し遂げられた。サタンの執拗な反発にもかかわらず、贖いの計画は実行されつつあった。……サタンは、彼が奪った帝国が最終的に取り返されてしまうことを知り、神が御自分のかたちにかたどって造られた被造物をできるだけたくさん滅ぼすために労を惜しむまいと決心した。サタンは、キリストが人間のためにこれほど寛容な愛と憐れみをあらわされたがゆえに人間を憎み、今や、彼らが滅ぼされるためのあらゆる種類の惑わしを彼らに行う準備をした。サタンは、絶望的な自分の状況のゆえに、さらなる情熱を注いで己の道を進み続けた」(『預言の霊』第3巻194、195ページ、英文)。

疑いもなく、サタンは、地上におけるキリストの大いなる愛の対象(教会)に激しい怒りを注ぐことによって、地上での活動を続けます。しかし教会は、預言期間1260日(年)の間、地上の人里離れた荒れ野の中で神の守りを見いだすのです。

サタンが迫害する期間は、「千二百六十日」(黙12:6)と「一年、その後二年、またその後半年の間」(同12:14)という言葉によって、黙示録12章の中で二度言及されています。いずれの時期も、ダニエル7:23〜25で触れられている小さな角の迫害活動の期間を指します。聖書において、預言的「日」は「年」を象徴し、この預言的時期に最も当てはまる歴史上の時期は、西暦538年から1798年です。この期間中に、教会国家権力としてローマ・カトリック教会が西洋諸国を支配しました。それは1798年までのことで、この年、ナポレオンの参謀長ベルティエがローマの圧制的な力を(少なくとも一時的に)終わらせました。

この迫害の長い期間の中で、竜は女を滅ぼそうと、川のように水を口から吐き出します。水は人々や国民の象徴です(黙17:15)。この時期に、神の忠実な民に対抗して、軍隊や国民がローマによって派遣されました。この預言的期間の終わり頃、友好的な大地がその水を飲み干して女を救い、彼女に安全な避難場所を提供してくれます。これは、宗教の自由とともにアメリカが提供した避難場所を指しているのです(同12:16)。

残りの者たちとの戦い

黙示録12:17を読んでください。「残り」という言葉は、大半の人が背教する中にあって(王上19:18、黙2:24)、神に忠実であり続ける人たちを言いあらわしています。時の終わりに、この世の大半の人がサタンの側につく一方、神が1798年以降に興された人々の集団は、サタンの激しい怒りに直面しても、キリストに忠実であり続けます。

問2

黙示録12:17の「残りの者たち」の二つの特徴は何ですか。自分が終末時代の神の残りの者たちに属していると、人はどうしたら確信できますか。

終末時代の残りの者たちは、神の掟を守っています。黙示録13章は、十戒の最初の板が終末時代の対立の中心になることを示しています。十戒の最初の四つの掟の主要な要素は礼拝です。最後の危機における中心問題は、だれが礼拝の対象か、ということです。この世の人々は、獣の像を拝むことを選びますが、残りの者たちは創造主なる神を礼拝するでしょう(黙14:7)。第四条、安息日は、神を私たちの創造主としてはっきり示しており、そのことが、最後の危機の中で極めて重要な役割を安息日が果たすであろう理由の一つなのです。

また、終末時代の残りの者たちの第二の特徴は、彼らが「イエスの証し」を持っていることであり、それは「預言の霊」であると、黙示録19:10が説明しています。この聖句を黙示録22:9と比較することによって、私たちは、「イエスの証し」を持つヨハネの「兄弟たち」が預言者であることがわかります。それゆえ、「イエスの証し」とは、イエスがヨハネを通してなさったように(黙1:2)、御自分の預言者たちを通して真理をあかししているイエスを指しているのです。黙示録は、終末時代に、神の民が「預言の霊」を彼らの中に持っていることを示しています。その霊は、サタンが彼らを惑わし、滅ぼすためにあらゆる努力をする困難な時期の中、彼らを導くためのものです。わたしたちアドベンチストは、エレン・G・ホワイトの働きと著作物の中に、預言的洞察という賜物が与えられました。

終末時代のサタンの戦略

黙示録12:17は、サタンがこの世の人々を勝ち取り、キリストの忠実な信者たちをだまそうとする際に、戦術を変えることを示しています。サタンはキリスト教史を通じて、教会内の目立たない妥協や外部からの抑圧や迫害によって神の救いの働きに対抗しました。歴史が示すこの戦術は、何世紀にもわたり成功しましたが、宗教改革と、神の民が聖書の真理を再発見したことによって妨げられました。しかしサタンは、時間が残り少ないことを自覚するにつれ、努力を強化し、終末時代の神の残りの者たちと「戦おうとして」(黙12:17)出て行きます。残りの者たちへの彼の攻撃には、多くの惑わしの要素が含まれます。奇跡や心霊術を行う悪霊が導入されます(同16:14)。サタンの戦術のこのような転換は、〔黙示録の〕焦点が歴史から終末へ移ったことと合致します(マタ24:24)。

「惑わす」という言葉が、サタンの終末時代の活動を描写するために、黙示録12章から20章でよく用いられている点は重要です。黙示録において、サタンの終末時代の活動の描写は、「惑わす」という言葉で始まり(12:9)、「惑わす」という言葉で終わっています(同20:7〜10)。

IIテサロニケ2:8〜12を黙示録13:13、14、19:20と一緒に読んでください。黙示録12章から20章は、この世の忠誠をだまし取ろうと努めるサタンを描いています。自分の仕事をするために、今度は、政治的勢力と一緒に、政治的、宗教的勢力を用います。竜によって象徴される異教ローマ(黙12:4、5)、あとに続く海の獣に象徴される勢力(同12:6、15、13:1〜8)、最後に陸の獣に象徴される勢力(同13:11)です。黙示録の残りの部分において、サタンのこの三つ(竜によって象徴される異教・心霊主義、海の獣によって象徴されるローマ・カトリック教会、小羊のようなものや陸の獣によって象徴される背教プロテスタント教会)は、この世での神の働きに反対することにおいて、密接に結束し続けます。彼らは、人々を惑わし、人々を神から引き離し、「大いなる日の戦い」においてサタンの側へつけるためにともに働きます(同16:13、14)。これらの偽の宗教制度は、再臨において滅ぼされ(同9:20)、一方、これらの地上の権力を通して働いた悪魔の象徴である竜は、千年期の終わりに滅ぼされます(同20:10)。黙示録は、終末時代の惑わしがひどいものであるために、多くの人が滅びの道を選ぶように導かれることを示しています(マタ7:13)。

さらなる研究

参考資料として、『各時代の大争闘』第32章「悪魔のわな」を読んでください。

黙示録12章の目的は、第一に、終末の諸事件がキリスト対サタンと悪の勢力との大争闘の一部であると、神の民に告げることです。黙示録は、彼らが現在直面していることと、さらにひどい形で将来遭遇するであろうこと(経験豊かで激しく怒っている敵)について警告しています。パウロは私たちに、「不法の者は、サタンの働きによって現れ、あらゆる偽りの奇跡としるしと不思議な業とを行い、そして、あらゆる不義を用いて、滅びていく人々を欺くのです。彼らが滅びるのは、自分たちの救いとなる真理を愛そうとしなかったからです」(IIテサ2:9、10)と警告しています。

黙示録は、未来を真剣に受け止め、神に頼ることを第一にするようにと促しています。その一方で、黙示録は私たちに、サタンは強く経験豊かな敵であるけれども、キリストに勝てるほど強くはないことを保証します(黙12:8参照)。神の民にとって、希望は、過去においてサタンとその勢力に誇らしくも勝利されたお方の中にのみ見いだされるのです。そしてこのお方は、忠実な信者たちと「世の終わりまで、いつも」(マタ28:20)ともにいる、と約束してくださいました。

*本記事は、アンドリュース大学神学科新約学教授ランコ・ステファノビック(英: Ranko Stefanovic)著、安息日学校ガイド2019年1期『ヨハネの黙示録 イエス・キリストの働きを知る』からの抜粋です。

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そのほかの訳の場合はカッコがきで記載しており、以下からの引用となります。
『新共同訳』 ©︎共同訳聖書実行委員会 ©︎日本聖書協会
『口語訳』 ©︎日本聖書協会 
『新改訳2017』 ©2017 新日本聖書刊行会

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