子、教会、竜(黙示録12章)【ダニエル書と黙示録—重要な黙示預言】#8

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この記事のテーマ

黙示録12章は大いなる敵、悪魔に勝利するキリストについての章です。この章で、悪魔は天において戦いを始め、それを地上に持ち込む凶暴な竜として描かれています。この章はキリストとその教会に対するサタンの攻撃を描いていますが、ほかにもいくつか目的を持っているように思われます。

第1に、善と悪の大争闘に登場する女、子、竜、残りの者を紹介しています。第2に、神の民の勝利を保証しています。キリストに従う人々はこの勝利にあずかります。第3に、最終的な戦いを紹介しています。それは神の残りの民に対する戦いであり、ヨハネ黙示録の後半にさらに詳しく述べられています。

黙示録12章は女が子を産む場面から始まり、次に竜が女と子を攻撃し、さらに女の子孫の残りの者たちを攻撃するところで終わります。激しい攻撃、戦いの中で聞こえてくるのは勝利の声です。それはキリストの勝利であり、「小羊の血……で、彼〔竜〕に打ち勝った」信仰者たちの勝利です(11節)。

女と子

問1

黙示録12:1にある女は何を象徴していますか。

女は天の輝きをまとっており、衣は「義の太陽」の光を反映しています(マラ3:20、マタ13:43、17:2)。12の星は彼女が代表する神の民を象徴します(ダニ12:3参照)。天体の太陽と月は季節の変化を示すために用いられますが(創世1:14、15)、ここでは子の誕生による新時代の始まりを宣言しているように思われます。

これらの聖句に用いられている象徴もまたメシア的な意味を持っています。キリストは明けの明「星」(民数24:17)であり、太陽と月の永続性はダビデの王座の永続性を表します(詩72:5、89:35~37)。

問2

女から生まれた子とは誰のことでしょうか。イザ7:14、9:6、7、ガラ4:4

聖書に書かれている最初の福音は「女」から生まれた救い主を遣わすという神の約束でした(創世3:15)。キリストは女の子孫でした。彼は人間の性質を取り、人間のひとりとなり、私たちを罪から救ってくださるのでした。アダムとエバに与えられたこの救いの約束のおかげで、人類は永遠に神から切り離されずにすみました。

「神の御子は、人類の救い主になることに同意し、アダムをその創造主との新たな関係の中に置かれました。アダムはなお堕落したままでしたが、希望の扉が彼に開かれました。神の怒りはなおアダムの上にとどまっていましたが、死の執行は延期され、神の怒りは抑制されました。キリストが人の救い主になるという働きを開始されたからです。……キリストは人のための避け所となられました。人は確かに犯罪者であり、神の怒りを受けるべき者ですが、キリストに対する信仰によって、備えられた避難所に逃げ込み、助かることができました。人がもし主を受け入れるなら、死に直面しようとも命があったのです」(エレン・ホワイト『現代の真理とレビュー・アンド・ヘラルド』1巻141ページ、1874年2月24日)。

子と竜

問3

黙示録12:3、4を読み、竜の特徴をいくつか挙げてください。「天の星の3分の1を地上に投げつけた」とはどういうことですか(イザ14:12~15、ユダ6参照)。

竜の持つ特徴の一つは7つの頭と10本の角です(黙示12:3)。黙示録17:9、10によれば、7つの頭はこの権力が神の民を圧迫するために用いる主要な王国であり、10本の角はダニエル7:24で分裂した王国、多様な政治権力の象徴として出現します。これと同じ象徴が終末時代に神の敵に加わるすべての国民に対して用いられています(黙示17:12、13)。竜は明らかに地上的で、政治的な特色を帯びています。

子に対する竜の攻撃はヘロデがイエスを殺そうとしたとき(マタ2:13)、またイエスが試練に遭われたときに(ヘブ4:15)加えられました。竜はサタンそのものです(黙示12:9)。サタンは多神教ローマ帝国(竜の7つの頭の一つ)を用いたと同様に、必要ならば個人、団体、組織といった人間的な手段を用いるでしょう。竜であるサタンは神に対して「昼も夜も」私たちの罪をあげて非難し、「告発する者」として描写されています(黙示12:10)。

問4

神はみ子をどのような立場に最終的に導かれますか。黙示12:5

子は3つの経験をします。第1に彼は約束された者として女から生まれ、人となりました。第2に彼は竜の攻撃を受けますが、竜に勝利しました。第3に彼は天にある神の王座に昇りました。彼は十字架の屈辱を受けた後に栄光を受け、王位に就きました。彼は王として全世界を支配します。「鉄の杖で……治める」(黙示12:5)という表現は審判者としての働きを表しています。彼の裁きは揺らぐことのない確固とした真理に根ざしています。

天における戦い

黙示録12:7によれば、罪は地上で始まったのでないと教えています。罪の性質と結果はこの地上世界を含めた宇宙規模の意味があるのです。私たちはこの大争闘の中に立たされています。

ヨハネはキリストとサタンの2つの対立を述べています。

第1は、天においてルシファーが神の統治に反逆したときです(イザ14:12~14、エゼ28:12~17)。彼は「いと高き者のように」なろうとして天の王座を望みましたが(イザ14:13、14)、追放され(12節、エゼ28:14、16)、その後、天での戦いに完全に敗北した後で、地に投げ落とされました。

第2は主のご生涯、特にゲッセマネと十字架において最高潮に達しました。黙示録12:10に記された救いの宣言は、キリストの十字架の死によって実現しました(『各時代の希望』下巻286,287ページ参照)。キリストとサタンは改めて〔十字架において〕対面しましたが、再びキリストが勝利しました。こうして、サタンは永久に天から「追放」されました(ヨハ12:31、ルカ10:18)。

問5

天上におけるキリストの勝利に宇宙はどう反応しましたか。悪魔はいかがですか。黙示12:10~12

キリストの勝利が意味するものは、第1に、天には私たちを告発する者がいなくなったということ。第2に、私たちの勝利が小羊の血によるということ。第3に、私たちの救いが完成に近づいているということです。サタンの最終的な運命はすでに決まっています。彼は残された時間が短いのを知っています(12節)。

「全天は救い主の勝利に凱歌をあげた。サタンは敗北し、彼の王国が失われたことを知った。天使たちと他世界の住民たちにとって、『すべてが終った』という叫びは深い意味があった。大いなるあがないの働きがなしとげられたのは、われわれのためばかりでなくまた彼らのためでもあった」(『各時代の希望』下巻282ページ)

女と竜

問6

竜と女とのその後の戦いをたどってください。黙示12:13、15

子を産んだ女は竜から攻撃を受けますが、女が旧約と新約の神の民を代表していることを暗示しています。サタンはキリストを打ち負かすことができませんでした。そこで彼は第2の攻撃目標として地上におけるキリストの代表者である民を責めます。

問7

黙示録12章には2度預言の期間が書かれています(6、14)。この期間は何を象徴し、何が起こりましたか。(ダニエル7:23~25も読んでみましょう。同じような内容の記録や表現が用いられています)

問8

神はどのように女を助けましたか(16節)。

ダニエルは神の民に対する迫害とその結果を強調していますが、ヨハネは神の民のための神の守りを強調しています。出エジプト記の表現がこの守りについても用いられています。神は再び、御自分の民を「鷲(わし)の翼」に乗せて荒れ野に運ばれました(出エ19:4)。教会は攻撃を受けますが、神は必要を満たしてくださいます。ダニエルも認めているように、教会は損害をこうむりますが(ダニ7:25)、結果として教会は滅びることがありません。キリストがそれをお許しにならないからです。

迫害はまた竜の口から流れ出る川のような水の象徴によって表現されていますが、神の摂理によって大地は水を飲み干し、女を助けます。エジプト軍がイスラエルの民に迫ったとき、主が右の手を伸べられると「大地は彼らを呑み込んだ」(出エ15:12)とあります。神は敵が御自分の民を滅ぼすのをお許しになりません。

竜と残りの者たち

黙示録12章は神の勢力への3つの攻撃が描かれています。

(1)イエスに対する竜の攻撃について(黙示12:4、7)

(2)1260年間における教会に対する竜の攻撃について(13節)記しています。

(3)しかし12章の終わりにもう一つのグループ、つまり「その子孫の残りの者たち」(17節)が出てきます。この民、残りの者たち(17節)は、6節と14節に預言的に描かれている1260年の期間の後(1798年以降)に現れる人々です。竜はこれらの人々を攻撃します。

問9

「その子孫の残りの者たち」の第1の特徴を挙げてください。黙示12:17

黙示録において十戒は重要な役割を果たします。初めの4戒は礼拝を中心主題とする点できわめて重要な意味を持ちます。礼拝の真の対象者は竜でも獣でもなく(黙示13:4、14:9)、神だけです(14:7)。主を冒することと同様(黙示13:6)、獣の像を拝むこともまた非難されています(14:9、10)。神を礼拝する理由は、神が「天と地、海と水の源を創造」されたからです(7節)。この言葉は安息日の戒めである出エジプト20:11から来ています。

問10

最後の時代に問題となる課題は神の律法のどの部分と思いますか。出エ20:1~11

残りの者たちのもう一つの特徴は、彼らが「イエスの証し」を持つということです。黙示録19:10はその意味を明らかにしています。「イエスの証しは預言の霊なのだ」。「預言の霊」という言葉は、ヨハネの時代においては「預言の賜物」を意味しました。ヨハネによれば預言の賜物は終わりの時代の、神の残りの民のうちに生き続けます。

まとめ

宇宙的規模の霊的な戦いはまだ終わっていません。竜は天においてキリストに敗れ、十字架上で敗れましたが、今も告発を続けており、教会を滅ぼそうと活動しています。彼は最後の攻撃として残りの教会に向かいつつあります。神の愛の摂理は過去に教会にありました。未来にもあります。勝利は確実です。

ミニガイド

【イエスとミカエル】

ミカエルは大天使と呼ばれています(ユダ9)。このことからミカエルが天使、また天使の長であることがわかります(黙示12:7)。天使は天の存在者の働きを示しており、彼らは「使いmessenger」です。「主の御使いthe Angel of the Lord」を除けば彼らは被造物です。「主の御使い」が神と同等であるという事実から(出エ3:2、4、士師6:12、14参照)、多くのクリスチャンは彼を受肉以前のキリストと考えます。彼は遣わす者であると同時に、遣わされた者です。ミカエルは戦士また士師として民を守る(ダニ10:1)イスラエルの長として描かれています(13、21節)。おそらく彼はダニエル8:10にある「天の万軍」の長であって、祭司として天の聖所で日ごとに奉仕しておられます。ヨシュア5:14では、この人物が主御自身と同一視されています(2節)。「大天使の声」をもって再臨し、命と悪の勢力に対する勝利を与えられるのはこの方です(Ⅰテサ4:16)。ミカエルとキリストが同一人物であることを裏づける聖書的な根拠は十分あります。

*本記事は、神学者アンヘル・M・ロドリゲス(英: Angel Manuel Rodriguez)著、安息日学校ガイド2002年2期『重要な黙示預言』からの抜粋です。

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