アメリカとバビロン【終末時代への備え】#10

今回の記事のテーマ

私たちは先週、「偽の三位一体」に目を向けましたが、このサタン（竜）と地上の二つの勢力は、一緒になって神の民に迫害をもたらすでしょう。これらの勢力の一つである海の獣（黙13：1〜10）は、豹、熊、獅子の複合体（ダニエル7：4〜6からそのまま採られた比喩）として描かれています（同13：2）。私たちは第6課において、バビロン（獅子）、メディアとペルシア（熊）、ギリシア（豹）が興ったあと、最後の地上の権力であるローマが登場するのをダニエル7章で見ました。それは異教ローマとして始まり、やがて法王制ローマ（ダニエル7：7、8、19〜21、23〜25の小さな角）に変わりました。それは第四の獣から直接生じたものです。私たちはまた、ダニエル7章のこれらの聖句の中で描かれている法王制ローマの特徴の多くが、黙示録13：1〜10の海の獣の中に再びあらわれているのを見ました。それゆえ聖書学者たちは、黙示録13章の終末の筋書きの中でローマが中心的な敵対勢力の一つであると、これまでみなしてきました。

しかし、ローマだけではありません。もう一つの勢力が描かれています。私たちは今回、黙示録13章とそこに描かれている諸事件や勢力にもっぱら注目します。これらの事件は何を意味し、私たちはそれにどう備えることができるのでしょうか。

治った致命的な傷

問1　
黙示録13：1〜10を読み、なぜこの箇所が法王権（過去と未来におけるその役割）への言及であるのか、その理由を調べてください。特に、説明されている一つの役割が際立っていることに注目してください。それは終末の諸事件との関連において、何を意味しますか。

神はあらゆる教会の中に忠実な民を持っておられますが、聖書は、この制度が歴史の中で果たしてきた特別な役割、また終末の諸事件の中で果たすであろう特別な役割を指摘しています。

黙示録13：3を読んでください。何世紀にもわたって、ローマ教会は支配的な宗教であるとともに、さまざまな意味で、西洋諸国の政治的な中心でした。その権力のわかりやすい例は、法王グレゴリウス7世を怒らせた神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世が、和解するために法王の城へ行ったという物語〔カノッサの屈辱〕の中に見られます。ローマ皇帝は、法王から入城を許されるまで、冬の寒さの中、3日間も外庭で待たされました。自分の勝利で気を大きくしたグレゴリウス7世は、王たちの高慢を打ち砕くことが自分の義務である、と豪語しました。

それにもかかわらず、宗教改革、啓蒙主義、フランス革命などの影響によって、ローマの政治的、宗教的な支配権は、18世紀の終わりまでに粉砕されました。実際、法王の1人ピウス6世は、1798年にフランス軍によって捕らえられ、翌年、流刑中に亡くなりました。

しかし、黙示録13章は再起について、つまり「致命的な傷」が治ったと述べています。今日のローマは、グレゴリウス7世時代に振るったような政治的力は持っていませんが、最近の法王たちの人気のお陰で、宗教的にも政治的にも影響力のある勢力です（例えば、法王フランシスコが2015年にアメリカの上下両院合同会議で演説したのは、史上初めてのことでした）。預言によれば、この影響力は大きくなる一方でしょう。

預言の中のアメリカ合衆国

もっともなことですが、人々は「どうしたらローマは、黙示録13章に描かれているような影響力を今日、あるいは将来、持つことができるのだろうか」と問うてきました。かつてのように、ローマが軍隊に命令することのできた日は、とうの昔に過ぎ去りました。が、先の問いの答えも黙示録13章の中にあります。

黙示録13：11、12を読んでください。この獣に先行する獣、つまりプロテスタント教会によってローマだと長らくみなされてきた獣は、「四十二か月の間」（黙13：5）力を与えられたと記されていました。「四十二か月の間」は、ダニエル7：25の「一時期、二時期、半時期」や黙示録12：14の「一年、その後二年、またその後半年の間」、黙示録12：6の「千二百六十日の間」と同じであり、法王の力が敵を押さえつける期間です。この（1日が1年に相当するという原則を用いている）預言の期間は、法王制の至上主義をもって西暦538年に始まり、法王が捕虜となった年の1798年に終わりました。この時、法王権は使命的な傷を受け、預言は成就しました。

「四十二か月の間」の終了（1798年）が近づいた歴史上のこの頃、もう一つの勢力が登場します（黙13：11、13：1）。今回は地中から上って来ました。それは、〔次の聖句が説明するように〕大衆の象徴である海の中から上って来たこれまでの多くの勢力とは対照的です（ダニ7：2、3、黙13：1参照）。—「あなたが見た水、あの淫婦が座っている所は、さまざまの民族、群衆、国民、言葉の違う民である」（黙17：15）。

これやあれやの理由で、この勢力はアメリカ合衆国に違いありません。アメリカは、世界の中で比較的人口の少ない場所からあらわれ、その登場のためにいずれの大帝国も打倒する必要がなかったからです。

「1798年に、新世界のどんな国が、勢力を伸ばし、将来強大な国家になる可能性を示して、世界の注目を集めていたであろうか。この象徴が、どの国に適用されるかは、実に明白である。この預言の指示するところに合致する国は、ただ1つしかない。それは、疑いもなく、アメリカ合衆国を指している」（『希望への光』1808ページ、『各時代の大争闘』下巻159ページ）。

この勢力は、当初（穏やかさを象徴する）小羊のような2本の角を持っていたと描かれているものの、いつしか「竜のように」（黙13：11）ものを言うようになります。それは、先の勢力の下で起きたような迫害の時代を示しています。こうして次に、黙示録13：11〜17は、どうしたらローマが預言の告げる影響力を振るうことができるのかという疑問に答えます。ローマは、アメリカ合衆国の力を背後に持つことになるのです。そういうわけなのです。

礼拝の問題

聖書に記された歴史を通じてずっと、主は偶像礼拝やほかの形の偽りの礼拝に陥った人々に絶えず対応なさらねばなりませんでした（マタ4：8〜10参照）。黙示録13章に描かれている終末の危機において、礼拝の問題が再び浮上します。ここにおいても神の民は、だれを礼拝し、だれに仕えるかに関して、選択をしなければならなくなるでしょう（ヨシュ24：15参照）。

「ダニエルと終末時代」と題した第2課で、私たちは「金の像（を）拝め」（ダニ3：5）と命令された3人のユダヤ人青年の物語を研究しました。私たちはまた、神の民が終わりの時に遭遇するであろう迫害を描くために、ダニエル3章の言葉が黙示録13章でいかに使われているかも見ました。つまり私たちは、ダニエル3章で起こったことを、（黙示録13章で獣の勢力という背景の中で描かれているように、）終わりの時に起きるであろうことの先駆けと見なすことができるかもしれません。すべての人が金の像を拝むように命じられ、さもなければ彼らは燃え盛る炉に投げ込まれて殺されたのです。同様に黙示録13章では、「獣の像を拝もうとしない者があれば、皆殺しにさせた」（黙13：15）とあります。

黙示録14：9〜11、16：2、19：20、20：4を読んでください。礼拝の問題が重要になることに関して述べられています。バビロンは、常に偽りの礼拝の中心地でした。バベルの塔は、ルシファーのように、「雲の頂に登って／いと高き者のようになろう」（イザ14：14）という建設者たちの強い願望とともに、地球規模の大洪水が起きた際に彼ら自身を救おうとする努力を証明していました。そのようにして彼らは、二度と洪水で地球を滅ぼさないという神の約束を信じることを拒絶したのです（創9：8〜11）。

同様に、新しいバビロン帝国は人間の手による働きを称賛します。ネブカドネツァルは、「なんとバビロンは偉大ではないか。これこそ、このわたしが都として建て……（た）ものだ」（ダニ4：27〔口語訳4：30〕）と自画自賛しました。のちにベルシャツァル王は、宴会のためにソロモンの神殿から金銀の器を取って来て、「酒を飲みながら、彼らは金や銀、青銅、鉄、木や石などで造った神々をほめたたえ」（同5：4）ました。神殿の本物の器が、人を酔わせるぶどう酒で満たされ、その器から酒を飲んだすべての人の感覚を麻痺させたことに注目してください。結果としてバビロンが倒れたとき、その町にいた多くの人が滅びました。外見が真理であるものが、致命的な「バビロンのぶどう酒」を偽装することによって、私たちを惑わしうるのです。偽りの礼拝や偽りの考えは、サタンの王国の特徴です。

「大バビロン」

バビロンについて教えている次の聖句を読んでください（エレ51：6、7、53、57、ゼカ2：11、黙17：5、6、18：2、3）。きのう触れたように、バビロンは偽りの礼拝の中心地として長い歴史を持っています。ですから、人々を惑わす終末の勢力にふさわしい象徴なのです。

竜、海の獣、赤い獣を比較してください（黙12：3、13：1〜3、17：3）。これら三つの獣は七つの頭と10本の角を持っており、それはダニエル7章の獣たちの頭と角を合計した数です。代々の帝国は、先行する国の上に築かれました。同様に赤い獣は、（異教ローマと法王制ローマをそれぞれ象徴している）竜や海の獣とともに、陸の獣（黙13：11〜14）の要素を併せ持ち、「（すべて神の敵である）三つの勢力を現実の同盟」（ジャック・Ｂ・ドゥカーン『黙示録の秘密—ユダヤ人の目を通して見た黙示録』162ページ、英文）にまとめています。黙示録17章で追加されている要素は赤い獣にまたがっている女で、それは、宗教的権力と政治的権力の野合を象徴しています。この女は黙示録12章の清い女とは、まったく対象的です。

清い女（黙12章）	大淫婦（黙17章）
天において 身に太陽をまとっている 12の星の冠をかぶっている 竜に攻撃される 残りの者たちの母	水の上において 紫と赤の衣を着ている 金と宝石と真珠で身を飾っている 竜に支援されている みだらな女たちの母

「みだらな女たちの母」として、バビロンは精力的に自己増殖してきました。背教の母なる教会は、多くの背教の娘たちを持っています。しかし、背教のキリスト教によって広められた過ちやなされた残虐行為を、神はお認めになりません。神の真の民はサタンに攻撃されますが、何世紀にもわたって生き残ります。

黙示録14：8は、バビロンが倒れること、つまり真理からの背教をすでに人々に警告していました。その背教が最終的に、結果として獣の刻印となる最後の惑わしをもたらします（黙14：9〜11）。この警告は、はるかに力強く繰り返されるでしょう。そしてそれが、バビロンに残っている神の民に対して、そこを離れ去り、終末時代の神の残りの教会と一緒になりなさい、という最後の訴えになるのです（同18：1〜4）。

「わたしの民よ、彼女から離れ去れ」

長年にわたって、聖書の預言の研究者たちは世界中の出来事を、とりわけ終末に関係すると思われる出来事を興味深く見守ってきました。例えば、アメリカ合衆国の役割について考えてみてください。さかのぼること1851年に、何人かのアドベンチストは、アメリカを第二の獣の勢力（黙13：11〜15）とみなしていました。当時の合衆国の地位を考えるなら、それは非常に見事な同定でした。19世紀の中頃、大国は依然として旧世界の国々（プロイセン、フランス、オーストリア・ハンガリー、イギリスなど）だったからです。当時、アメリカが平時に持っていた軍隊は2000人ほどで、それはワーテルローの戦い（1815年）だけ見ても、その戦闘員数の約十分の一にすぎませんでした。ほんの40年ほど前の1814年には、イギリスが侵攻してワシントンＤＣを焼き払い、1867年には、ラコスタ・スー族の酋長シッティング・ブルの戦士たちがカスター将軍の第七騎兵隊を全滅させました。このように、ある聖書注釈者たちがアメリカ合衆国を、いつの日か「獣の刻印」をこの世に強要する勢力とみなしたあとでさえ、この国はまだ自分の領土で先住民と戦っており、しかも常勝ではありませんでした。

疑いなく、世界中の出来事は、私たちがそうなると信じてきたとおりの道をたどっています。しかし、私たちが終わりに至るまでに、明らかになるべき事柄はまだあります。それゆえ、例えば「獣の刻印」について語る際に、今現在、（第四条を守っているかいないかにかかわらず）だれにもその刻印が押されていないということを強調するのは、とても重要です。このほかにも、多くのことが明らかになります。

黙示録18：1〜4を読んでください。これらの聖句は、政治的に、道徳的に、霊的に殺伐としたこの世の実態を描いています。この世における、偽りの宗教の教えの有害な影響力を示しているのです。しかしその一方で、大きな希望も与えています。なぜなら、天から降って来たもう1人の天使が栄光で地上を輝かすからです。さらに、神の忠実な民、知るべきことをまだ学んでいなかった人たちが、バビロンから離れ去るようにと召されます。つまり、最後の最後まで、すでにバビロンを出た神の民には、まだ中に残っている人たちのためになすべき働きがあるということです。

さらなる研究

神の律法に対するサタンの攻撃は、神御自身への攻撃、つまり神の権威と統治の両方に対する攻撃です。それゆえ終わりの時に、終末の危機のクライマックスとなる諸事件の中で、サタンは「神の掟」（黙12：17、14：12）を守る者たちを攻撃するでしょう。なぜなら、地上で彼らだけがサタンの代理人たちを通してサタンに敬意を払わないからです。昔、サタンが天で神に仕掛けた戦いは、この地上で継続され、彼は天で負けたように、地上でも敗北します。

「天における大争闘のその最初から、神の律法を覆すことがサタンの目的であった。彼が創造主に対する反逆を始めたのは、この目的を達成するためであった。そしてサタンは、天から追放されたけれども、この地上で同じ戦いを続けてきた。人を欺き、それによって神の律法を犯すようにさせることこそ、サタンが着々と追い求めてきた目的である。このことは、律法全体を廃することによって成し遂げられても、あるいはまた、戒めの1つを拒むことによって成し遂げられても、最終的な結果は同じである。『その1つの点』でも犯す者は、律法全体に対する軽べつをあらわすのであり、その影響と手本は罪に味方するものであって、『全体を犯したことになる』のである（ヤコブ2：10）」（『希望への光』1882ページ、『各時代の大争闘』下巻343ページ）。