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この記事はこんな人におすすめ!
・予言と預言の意味の違いを知りたい
・ダニエル書や黙示録の預言をざっくり教えてほしい
・他の予言や占いと聖書の預言の違いを知りたい
みなさんは、占いや予言を信じていますか?
「占い?だまされそう」「予言といえば、ノストラダムス?」
そんな漠然としたイメージを持った人も、タロットやオラクルカードにハマっている人もいるかもしれません。
今日は、聖書の特にダニエル書の有名な預言をざっくりと見ていきたいと思います。
預言と予言の違いは?占いと何が違うの?
予言と預言の意味の違いとは?
予言と預言の意味の違いを、三省堂国語辞典第七版で見てみると次のようにあります。
予言とは
未来を予測して言う<こと/ことば>
預言とは
キリスト教などで、神の霊感に打たれた者が神託としてのべることば。
つまり、単に未来を予測しているのが「予言」であり、神からのメッセージとして語られるのが「預言」です。
そのため、「預言」は未来を予測していなくても、神からのメッセージであれば「預言」なのです!
予言者と預言者の違いは?占いとの違い
先ほど見た意味から区別するならば、一般的な「予言者」は「単に未来を当てる人」のことですが、聖書の「預言者」は「神のメッセージを伝える人」です。
また、占いの多くは「自分の未来を予想してほしい」「自分の選択にアドバイスがほしい」という理由で行われますが、聖書の預言は具体的な未来予想やアドバイスではありません。
では、どのような預言が聖書にはあるのでしょうか? いくつか聖書の預言を見てみましょう。
ダニエル書に預言されている世界の歴史
聖書に出てくるダニエルはどんな人?実在したの?
ダニエルは預言者で、王族の出身で若くしてバビロンに連れて行かれましたが、神の教えを守って多くの試練を乗り越えた、旧約聖書に登場する重要な人物です。
ダニエル書2章に預言されている世界の終わり
聖書のダニエル書の中には、当時の世界帝国であったバビロンの王ネブカドネザルが見た夢を、預言者ダニエルが解き明かすという話が登場します。
それは、頭が金、胸と両腕が銀、腹とももが青銅、すねは鉄、足の一部は鉄、一部が粘土でつくられた大きな像の夢でした。
やがて、人手によらず切り出された大きな石がこの像を打ち壊し、大きな山となっていくのです。
ダニエルは王に与えられたこの像の夢は世界の歴史を預言していると言います。
この像の夢の意味は次のようになっています。
金の頭=新バビロニア王国
あなたはあの金の頭です。
ダニエル書2章38節
ネブカドネザル王は、バビロンをその当時の最もきらびやかな都にします。
金が豊かに産出されたため、都市が建設されたときには大量の金が使用されました。
銀=アケメネス朝ペルシャ
あなたの後にあなたに劣る一つの国が起ります。ダニエル書2章39節
二本の銀の腕は、当初はメディアとペルシャだったのが、そこからペルシャ帝国に統一されていくことを示しています。また帝国は税制度に銀を使用しました。
バビロンが滅んだ後の世界を支配したのは、ペルシャ帝国でした。
青銅=ギリシャ(アレキサンダー大王)
また第三に青銅の国が起って、全世界を治めるようになります。ダニエル書2章39節
第三の国は、アレキサンダー大王率いるギリシャです。全世界を治めるとあるよに、この国は先の大国よりもさらに広大な地域を支配し、ほぼ全世界を手中に収めます。
また、取引において、また戦争においてギリシャは青銅を使用しました。特にギリシャ兵は青銅の武具で有名でした。
鉄=ローマ帝国
第四の国は鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべての物をこわし砕くからです。鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう。ダニエル書2章40節
アレキサンダー大王の死後、分裂していったそれぞれの国々を滅ぼしていったのが、ローマ帝国でした。
18世紀のイギリスの歴史家のギボンは次のように述べています。
諸民族及びその国王らを代表すべき金銀または真ちゅうの肖像は、ローマの鉄国によって次々に破壊された
エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史(五)』岩波文庫、401ページ
鉄と粘土=ヨーロッパ
あなたはその足と足の指を見られまいたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄であったので、それは分裂した国をさします。……あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、それらは婚姻によって、互に混ざるでしょう。しかし鉄と粘土とは相混じらないように、かれとこれと相合することはありません。ダニエル書2章41、43節
足が二本あるように、鉄で象徴されたローマ帝国は東西に分裂し、やがて滅亡していきます。
そしてその後、足の指のように、世界は統一されることなく、各国に分かれ、現在のヨーロッパの形へと至ります。
ダニエルはこの国が「婚姻によって混ざるけれども、完全に一つになることはない」と預言します。
その預言どおり、ハプスブルグ家を筆頭にヨーロッパの王室は政略結婚により、一つになろうとしましたが、完全に一つになることはできませんでした。
その後も、ヨーロッパは政治的にも経済的にも一つになりきれていません。
石=神の国とキリストの再臨
それらの王たちの世に、天の国は一つの国を立てられます。……そしてこの国は立って永遠に至るのです。ダニエル書2章41、43節
最後に登場する国は、神によって建てられる国であるとしています。
他の聖書の箇所を見てみると、「石」はイエス・キリストを象徴しています(1コリント10:4、イザヤ28:16、ルカ20:17ー18)。
「人手によらず切り出された石が像を砕く」とは、キリストの再臨と天国を象徴しているのです。
ダニエル書2章には、世界の強国の興亡とキリストの再臨が預言されています。そして、この預言はダニエル書7章でさらに詳しく描かれているのです。
ダニエル書7章に預言されている反キリストと終末
ダニエル書2章には、世界の歴史が預言されていましたが、これはダニエル書7章と8章にある預言で繰り返され、その象徴がどの国を指しているのかを明確にしています。
ダニエルは海から4つの獣が出てくるのを幻の中で見ます。この獣はそれぞれ、4つの権力をあらわしていました。
しし=新バビロニア王国
第一のものは、ししのようで、わしの翼をもっていた。
ダニエル書7章4節
この翼のあるライオンは、バビロンの守護神マルドゥクと共に戦う獣の姿の一つとして、よく美術品に描かれています。
有名なものでは、ネブカドネザル王によって建設されたイシュタル門に、この翼を持つライオンが描かれています。
ダニエル書2章に描かれた像でも、一番最初に登場した国はバビロンでしたが、7章でも同様にバビロンから預言が始まっていくのです。
熊=アケメネス朝ペルシャ
第二の獣は熊のようであった。これはそのからだの一方をあげ、その口の歯の間に、三本の肋骨をくわえていた。
ダニエル書7章5節
山に生息する熊は、メディアの山岳部から興ったこの国にふさわしい象徴となっています。
新バビロニアを滅ぼして登場するのが、ペルシャ帝国です。このとき、リディア、バビロン、エジプトの三国が滅ぼされますが、これが「三本の肋骨」で象徴されています。
また、この熊は「からだの一方をあげ」ているアンバランスな姿勢で描かれていますが、これはペルシャ帝国の成り立ちを示しています。
当時、メディアとペルシャの両国は姻戚関係であり、密な関係でしたが、次第にその関係は変化していき、最終的にペルシャがメディアから覇権を奪い、ペルシャ帝国が誕生しました。
このような見解にたいしては、行き過ぎとの反論も出されている。しかし、現状ではペルシア帝国がメディア「王国」を先行国家とし、草創期にはその領土的基盤のみならず、国家的な制度をも内に取り込んだとの見方に修正が余儀なくされている。
ひょう=ギリシャ(アレキサンダー大王)
その後わたしが見たのは、ひょうのような獣で、その背には鳥の翼が四つあった。またこの獣には四つの頭があり、主権が与えられた。
ダニエル書7章6節
ひょうと四つの鳥の翼で象徴されるこの獣は、ペルシャを滅ぼしたアレキサンダー大王の帝国を象徴しています。
アレキサンダー大王は、紀元前334年に遠征を開始。前332年にエジプトを、前331年にペルシャを滅ぼし、劇的なスピードで世界を統一していきました。
この出来事はダニエル書8章にも預言されており、そこには明確に国名が登場しています。
あなたが見た、あの二つの角のある雄羊は、メデアとペルシャの王です。また、かの雄やぎはギリシヤの王です、その目の間の大きな角は、その第一の王です。
ダニエル書8章20ー22節
またその角が折れて、その代りに四つの角が生じたのは、その民から四つの国が起るのです。しかし、第一の王のような勢力はない。
ダニエル書8章でもあるように、アレキサンダー大王の死後、後継者争い(ディアドコイ戦争)が発生し、国が分裂。第四次ディアドコイ戦争でアンティゴノス朝が滅びると、四つの国へと分かれていきます。
そして、その国々はどれもアレキサンダー大王時の勢力に匹敵することはありませんでした。
非常に強い獣=ローマ帝国とヨーロッパの国々
第四の獣は、恐ろしい、ものすごい、非常に強いもので、大きな鉄の歯があり、食らい、かつ、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは、その前に出たすべての獣と違って、十の角を持っていた。
ダニエル書7章7節
ディアドコイ戦争後に興った国々は、互いに敵対し合い、最後にはローマ帝国によって滅ぼされ、統一されていきます。
しかし、このローマ帝国もやがて分裂し、滅亡するのです。その後、前に見たダニエル書2章にも預言されていたとおり、ヨーロッパの原型を形成していきます。
十の角=ローマ帝国後に登場した十カ国
- 西ゴート(スペイン)
- アングロ・サクソン(イングランド)
- フランク(フランス)
- アレマン(ドイツ)
- ブルグンド(スイス)
- ランゴバルド(イタリア)
- スエビ(ポルトガル)
- ヘルール
- 東ゴート
- ヴァンダル
上の十カ国のうち、ヘルール、東ゴート、ヴァンダルはその後、滅亡していきましたが、これもダニエル書に預言されています。
わたしが、その角を注意して見ていると、その中に、また一つの小さい角が出てきたが、この小さい角のために、さきの角のうち三つがその根から抜け落ちた。見よ、この小さい角には、人の目のような目があり、また大きな事を語る口があった。
ダニエル書7章8節
東ローマ帝国の皇帝は、ローマの司教に反対していた三つのアーリア系部族の王国を滅ぼしていったのです。
またこの時に、10の角(ヨーロッパ)の地域から、小さい角と呼ばれる新たな権力が生まれることを聖書は預言しています。
小さい角=ローマ・カトリック
この獣の頭には、十の角があったが、そのほかに一つの角が出てきたので、この角のために、三つの角が抜け落ちた。この角には目があり、また大きな事を語る口があって、その形は、その同類のものよりも大きく見えた。……十の角はこの国から起る十人の王である。その後にまたひとりの王が起る。彼は先の者と異なり、かつ、その三人の王を倒す。
ダニエル書7章20、24節
小さい角の特徴はいくつかありますが、上の聖句に書かれている特徴を、大きくまとめると以下のようになります。
- この権力が要因となり、3つの勢力が滅びる
- 大きなことを語る口を持っている
- 他のヨーロッパ諸国よりも大きな力を持つ。
- 今までとは異なる権力
この特徴に該当する中世ヨーロッパに存在した勢力は、ローマ・カトリックです。
当時のカトリックの絶大な権威を見ることができる事件が、カノッサの屈辱です。
教皇グレゴリウス7世は、聖職者の叙任に世俗の権力者が介入すべきではないとし、1075年に『教皇令』を発布。これによりグレゴリウス7世は、教皇は世俗の権力者より上位にあるとしたのです。
これに対し、帝国の中心的な存在である司教の任命権を手放すわけにはいかない、皇帝ハインリヒ4世が反応し、大論争が始まります。
ハインリヒ4世は教皇の廃位を決め、それに対して教皇グレゴリウス7世は皇帝を廃位し、破門すると言って対抗。
当時の教会の教えでは、破門は地獄に落ちることを意味していました。
加えて、帝国内の諸侯が教皇に従わなければ新しい皇帝を選ぶという立場をとったために、ハインリヒ4世は1077年1月、グレゴリウス7世のいる北イタリアのカノッサ城に行き、許しを求めたのです。
今までとは異なる、宗教権力であるローマ・カトリックが、他のヨーロッパ諸国よりも大きな力を持ったことを如実に示した出来事でした。
ダニエル書の最後の預言
ダニエル書2章と7章の預言を見てきましたが、そのどちらも世界の歴史を預言したもので、最後には神によって天国が建てられる預言で締めくくられています。
ついには、いと高き者の聖徒が国を受け、永遠にその国を保って、世々限りなく続く
ダニエル書7章18節
ダニエル書にあるメシア預言!70週の預言とは?
数百年前から預言されていたキリストの働き
ユダヤ人であるダニエルがバビロン捕囚下にある時に、自国の復興を願って祈っていたときに与えられた預言が70週の預言です。
あなたの民と、あなたの聖なる町については、七十週が定められています。これはとがを終らせ、罪に終りを告げ、不義をあがない、永遠の義をもたらし、幻と預言者を封じ、いと聖なる者に油を注ぐためです。
ダニエル書9章24節
70週の預言とは、上の聖書の言葉にもあるように、イスラエルとメシアに関係している預言です。この預言は次のように続きます。
9:25それゆえ、エルサレムを建て直せという命令が出てから、メシヤなるひとりの君が来るまで、七週と六十二週あることを知り、かつ悟りなさい。その間に、しかも不安な時代に、エルサレムは広場と街路とをもって、建て直されるでしょう。 9:26その六十二週の後にメシヤは断たれるでしょう。ただし自分のためにではありません。またきたるべき君の民は、町と聖所とを滅ぼすでしょう。その終りは洪水のように臨むでしょう。そしてその終りまで戦争が続き、荒廃は定められています。 9:27彼は一週の間多くの者と、堅く契約を結ぶでしょう。そして彼はその週の半ばに、犠牲と供え物とを廃するでしょう。また荒す者が憎むべき者の翼に乗って来るでしょう。こうしてついにその定まった終りが、その荒す者の上に注がれるのです」。
ダニエル書9章25ー27節
いくつかキーワードをまとめると、このようになります。
- エルサレムの再建命令が出されてから油注がれた君(メシア)の到来まで、7週と62週ある
- 油注がれた君(メシア)は、半週でいけにえと献げ物を廃止する。
- その後、憎むべきものが荒廃をもたらす
つまり、これはエルサレムの再建命令が出てからキリストが来るまでの預言と、その後のエルサレムの滅亡を預言したものなのです。
70週の預言の図解
エルサレム復興の命令は、アルタクセルクセス1世(アルタシャスタ)の治世の第7年(紀元前457年)に出されました。
聖書の預言の解釈には、一日を一年と換算するという原則があります(民数記14章34節、エゼキエル書4章6節)。
そのため、7週は49年間を、62週は434年間をあらわします。
エルサレムの再建が開始した紀元前457年から、483年後は紀元27年になります。
このときに、「油注がれた者(メシア)」であるイエス・キリストは、バプテスマを受けて、公に活動を開始しました(ルカによる福音書3章1節を参照)。
「彼は……半週<3年半>でいけにえと献げ物を廃止する」とあるようにキリストは、活動を開始してから3年半後に十字架で死に、それまで続いていた動物をささげる犠牲制度を廃止しました(ヘブライ人への手紙10章1ー10節)。
この制度は、キリストの働きを象徴するものだったからです。
70週の預言についてのよくある質問
歴史に記録されているイエス・キリスト
イエス・キリストは本当に実在した人物なのでしょうか?
コルネリウス・タキトゥスは、有名な古代ローマの歴史家です。彼は『年代記』の中でキリスト(クリストゥス)に触れています。
ネロは、この風評をもみけそうとして、身代りの被告をこしらえ、これに大変手のこんだ罰を加える。それは、……『クリストゥス信奉者』と呼ばれていた者たちである。この一派の呼び名の起因となったクリストゥスなる者は、ティベリウスの治世下に、元首属吏ポンティウス・ピラトゥスによって処刑されていた。
タキトゥス(国原吉之助訳)『年代記(下)』岩波書店、269―270ページ
ここではキリストの実在とピラトによる死刑宣告、キリストの十字架がティベリウスの治世(紀元14―37在位)の間であったことが記録されています。
さらに聖書は「皇帝ティベリウスの治世の第十五年」(ルカによる福音書3章1節)と、公生涯の始まりが紀元27年頃であると、さらに明確に記録しています。
ダニエル書に預言されたとおり、紀元27年頃にキリストはその働きを始めたのでした。このダニエル書はキリスト誕生の約600年前に書かれました。
プトレマイオス・フィラデルフォス(紀元前285ー246)の治世のもとで、旧約聖書はギリシア語聖書(七十人訳聖書)に翻訳されています。
そのため、どれほど懐疑的な仮説を立てたとしても、ダニエル書の預言がキリストが生まれる250年前に書かれたことは事実です。
また、キリストが3年半活動したことは、ヨハネによる福音書で3回出てくる過越祭の記録から確認でき、キリスト教界内で広く受け入れられています。
キリストが誕生する数百年前からすでに、キリストの十字架での死は正確に預言されていたのです。
キリストの預言が成就する確率
サイコロを振って、15回連続で特定の目を出し続ける光景が、目の前で起きたとして、偶然に起きたと信じられますか。
先ほどのダニエル書9章の預言が成就する確率を、AIに推定させると1012分の1という数値を出しました。同じ目を15回連続で出すのと同じなのです。
数学者のピーター・ストナーは、600人の意見を参考にフェルミ推定のような方法で、キリストについての8つの預言が成就する確率を推定しました。
その結果、8つの預言をすべて成就する確率は1017分の1と推定されました。
1017枚の100円硬貨があるとして、日本のすべての面積をその100円硬貨が埋め尽くすと、約28センチの深さになります。
その中に印されたものを1枚だけ混ぜて、目隠しした人を連れてきて、印された100円硬貨をたった1回のチャレンジで探すように指示するのです。
その100円硬貨を見つけ出す確率と、8つの預言をひとりの人が成就する確率は同じなのです。
しかし、これでもキリストに関する預言のすべてではありません。旧約聖書の中にある救い主に関わる預言とされている記述は、61もあるのです。
仮に61の預言が4分の1の確率で成就するとしても、1037分の1の確率です。
そのほかに彼は、旧約聖書にある11の預言を同様に推定し、次のように結論づけています。
イザヤ書41章23節には、預言者イザヤが異教の神々に挑戦状をつきつけて言う。「後に起ころうとする事を告げよ。そうすれば、われわれは、あなたがたが神であることを知ろう。」
神は、この挑戦状に答えられた方である。将来に起こるであろうことの多くを彼は予告した。それらは予告されたとおりに、詳細に、実現した。……神はまことに、すべての知恵に満ちた、超自然の神である事を、自ら証明された。私たちには、信じること、ただそれだけが、残された唯一の道であるように思える。
キリストの復活は事実なのか
キリスト教の信仰で、最も大切なことはキリストの十字架での死と復活です。
これはダニエル書の70週の預言で預言されていたことでした。では、キリストの復活は実際に起こったのでしょうか?
コリントの信徒への手紙一は、使徒パウロが第3次伝道旅行で3年間(紀元54―57年)活動したエペソから書かれました。
キリストのバプテスマと公生涯の開始が紀元27年頃と考えられていますが、そこから3年半経った31年頃にキリストは十字架で処刑されました。
その後、わずか約25年後に次のように復活の記録がまとめられたのです。
15:3わたしが最も大事なこととしてあなたがたに伝えたのは、わたし自身も受けたことであった。すなわちキリストが、聖書に書いてあるとおり、わたしたちの罪のために死んだこと、 15:4そして葬られたこと、聖書に書いてあるとおり、三日目によみがえったこと、 15:5ケパに現れ、次に、十二人に現れたことである。 15:6そののち、五百人以上の兄弟たちに、同時に現れた。その中にはすでに眠った者たちもいるが、大多数はいまなお生存している。
さらに多くの聖書学者たちがこの部分は、キリストの死後3―8年後にすで存在していた口伝の信条をパウロが書いたものと主張しています。
紀元111年秋頃に小プリニウスは、ローマ皇帝に送った公的な書簡の中で、クリスチャンへの取り調べを報告し、その教えの広まりを警戒しています。
その中で彼はクリスチャンがキリストを神として扱っていることを記載し、その教えを「常軌を逸した俗信」としています(『プリニウス書簡集』423―424ページ)。
ローマ帝国がキリスト教の影響力を恐れ、救い主であるキリストの復活とそのメッセージを迷信であると否定しようとしていたことがわかります。
同じくユダヤの指導者たちもキリストの復活を否定しようとしました。マタイによる福音書28章12―15節では、弟子たちが死体を盗んだと吹聴したことが、「今日に至るまでユダヤ人の間に広まってる」と記されています。
これは後世のラビ文献にも記されているものですが、興味深いことに空の墓が事実であることを前提に話が進んでいるのです。
当時、弟子たちが死体を持ち出さないように、墓は警備されており、警備の失敗は死につながりました。一説には100名が配備されたとされています。
墓荒らしも重罪で死刑になる可能性もあったため、命がけです。キリストの死後、失意の中にいた弟子たちが行動を本当に起こせたのでしょうか。
キリストの実在、十字架での死の記録、空になった墓の事実。これらから浮かび上がるのは、復活の可能性です。そしてこれは預言されていたのです。
懐疑的な歴史学者でさえ、原始キリスト教にとって、……イエスの死からの復活は、歴史上の現実の出来事であり、信仰のまさに基礎であって、信者の創造的な空想から生じた神話めいた考えではないことに同意しています。
ヨハネの黙示録に預言されている世界の終末
ヨハネの黙示録とダニエル書のつながり
キリストの弟子の一人ヨハネが書いたヨハネの黙示録は預言書として知られていますが、このヨハネの黙示録にもダニエル書と同様、世界の歴史についての預言が書かれています。
ヨハネの黙示録には、フランス革命やアメリカの興りなども預言されており、有名な666の預言なども登場します。
黙示録もダニエル書と同様に、世界の歴史について預言した後、最後には神によって天国が建てられる預言で締めくくられています。
また、黙示録はダニエル書と密接な関係にあり、それはヨハネの黙示録13章に出てくる獣の特徴からもわかります。
13:1わたしはまた、一匹の獣が海から上って来るのを見た。それには角が十本、頭が七つあり、それらの角には十の冠があって、頭には神を汚す名がついていた。 13:2わたしの見たこの獣はひょうに似ており、その足はくまの足のようで、その口はししの口のようであった。龍は自分の力と位と大いなる権威とを、この獣に与えた。
ヨハネの黙示録13章1ー2節
この獣の特徴は、ダニエル書7章に出てきた獣と同じなのです。
4つの獣(ダニエル7章) | 海から上がった獣(黙示録13章) | あてはまる国 |
---|---|---|
獅子 | ししの口 | バビロン |
熊 | くまの足 | メディア・ペルシャ |
豹 | ひょうに似ている | ギリシャ |
10本の角を持つ獣 | 角が10本 | ローマ |
頭が7つ | 頭が7つ |
13:5この獣には、また、大言を吐き汚しごとを語る口が与えられ、四十二か月のあいだ活動する権威が与えられた。 13:6そこで、彼は口を開いて神を汚し、神の御名と、その幕屋、すなわち、天に住む者たちとを汚した。 13:7そして彼は、聖徒に戦いをいどんでこれに勝つことを許され、さらに、すべての部族、民族、国語、国民を支配する権威を与えられた。
ヨハネの黙示録13章5ー7節
これは、ヨハネの黙示録13章に出てくる獣についての預言ですが、同様の特徴がダニエル書7章にも登場します。
彼は、いと高き者に敵して言葉を出し、かつ、いと高き者の聖徒を悩ます。
ダニエル書7章25節
彼はまた時と律法とを変えようと望む。聖徒はひと時と、ふた時と、半時の間、彼の手にわたされる。
「ひと時と、ふた時と、半時の間」は、3年半で42ヶ月間となります。聖書の預言の解釈には、一日を一年と換算するという原則があります(民数記14章34節、エゼキエル書4章6節)。
そのため、この期間は1260年間となります。これは538ー1798年までの期間をあらわします。
533年に皇帝ユスティニアヌスは、ローマをすべての教会のかしらと認め、538年ローマを東ゴートの包囲攻撃から救出しました。これにより、実際的にローマ・カトリックの影響力が全世界的なものとなったのです。
1793年にフランス革命下で非キリスト教化運動が起こると、1798年にナポレオン軍によって教皇ピウス6世が捕えられ、投獄されます。
この出来事は、中世の教皇権の権威を考えるならば、ありえない事態でした。
また、この勢力は以下のことを行うとされています。
- 「口を開いて神を汚し」、「いと高き者に敵して言葉を出し」ていく
- 「聖徒に戦いをいどんで」、「聖徒を悩ます」
- 時と律法を変えようと望む
- 1290年間、全世界を支配する
これらの条件にあてはまる勢力は、ローマ・カトリックです。
たとえば、ボニファティウス8世は次のように述べました。
ボニファティウス8世は、ローマ・カトリック以外に罪からの救いはなく、……教皇との交わりのない者は、いっさい救いがないとまで豪語した。
浜島敏『宗教史からみた聖書翻訳の歴史』107ページ
そのため、プロテスタントの地位が確立されるまで、真摯な信徒たちが異端とされ、弾圧が行われていたのも事実です。
ヨハネの黙示録に預言されているアメリカ!?
ヨハネの黙示録13章には、さらに続いてもうひとつの獣が登場します。
わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た。それには小羊のような角が二つあって、龍のように物を言った。
ヨハネの黙示録13章11節
ダニエル書7章に預言されていた歴史は、ローマ帝国の崩壊からローマ・カトリックの台頭まででした。
ヨハネの黙示録では、ローマ・カトリックの後に出てくる勢力について預言しているのです。
ダニエル書7章とヨハネの黙示録13章に出てきた、今までの獣は「海」から出てきましたが、この獣は「地」から出てきます。
海は人々が集まっているところの象徴です(ヨハネの黙示録17章15節、イザヤ書17章12節、エレミヤ書46章7節)。
地は海と対義的な関係ですので、人が集まっていないところを象徴していると考えられます。
今までの預言の流れを踏まえて、この勢力は以下のような特徴があります。
- 世界的な影響力を持つ権力
- フランス革命と同時代に台頭する
- 新天地で発展した権力
- キリスト教との関わりがある(小羊のような角)
これらの特徴にあてはまる国は、アメリカ以外にないのではないでしょうか。
ロシアや第三次世界大戦はエゼキエル書38章の預言に書かれているの?
エゼキエル戦争とは?ゴクとマゴクとは?
エゼキエル書の38章と39章にある預言は、一部のキリスト教会の中で、ロシアに当てはめられて考えられています。
その根拠とされているのが、38章2節に登場する「マゴグの地のゴグ、すなわちメシェクとトバル<そしてロシュ(NKJV)>の総首長に対して」という言葉です。
音が似ているために、多くの人々は、この箇所に登場するロシュをロシアと結びつけ、メシェクをロシアの首都であるモスクワをあらわす言葉として解釈していますが、この解釈には無理があります。
今まで見てきたダニエル書の預言がさまざまな特徴から、その象徴が何を示しているのかを特定しているのに対し、音が似ているというだけでは、断定は難しいでしょう。
ロシュとロシアの音の類似は、純粋に偶然であると見ることができます。約10世紀以前のその国に、その名を当てはめる証拠は、ないと思われます。
戦争や紛争は、聖書の中ではキリストの再臨の前兆として預言されています。
しかし、聖書が強調してるポイントは、どの権力が前兆を引き起こすかではなく、キリストがどのように私たちの世界に終止符を打つのかという点です。
聖書にあるキリストが預言した世界の終わり
マタイによる福音書24章にあるキリストの再臨の預言
どうぞお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。あなたがまたおいでになる時や、世の終りには、どんな前兆がありますか」。
マタイによる福音書24章3節
キリストがエルサレムの神殿の崩壊について言及したときに、弟子たちは神殿の崩壊と世の終わりを関連づけて、キリストに質問をします。
実際には、神殿の崩壊とエルサレム陥落は紀元70年に起きたため、世の終わりとは別の預言ですが、ここでキリストは二つの出来事の前兆に共通点が見られることから、二つの意味を持たせて答えられているのです。
そのため、マタイによる福音書24章には、紀元70年に起きたエルサレム陥落の預言と世の終わりの預言という二つの預言が書かれています。
戦争のうわさと偽りの宗教の台頭
多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がキリストだと言って、多くの人を惑わすであろう。また、戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。……民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。
マタイによる福音書24章6―7節
現代においても、内戦や戦争は絶えず、国際的な危機に直面していますが、ローマ帝国の支配下にあったイスラエルでは、偽預言者が人々を扇動して反乱を起こす事態が発生していました。
また、現代においてもカルト宗教の問題は絶えません。これもまた、世の終わりの前兆の一つなのです。
地震や飢饉、感染病の流行
またあちこちに、ききんが起り、また地震があるであろう。
マタイによる福音書24章7節
エルサレム陥落絵の紀元41ー54年には、合計4回の大飢饉があり、紀元31年からA.D.70年にかけて大地震が続きました。最もひどかったのはクレタ島(46年か47年)、ローマ(51年)、フリギア(60年)、カンパニア(63年)で、加えてタキトゥスも、65年に特に激しいハリケーンと暴風雨が起こったことを記録しています。
また、ルカによる福音書21章11節にある記録では、このときにキリストは感染症の流行についても言及しています。
現代においても、大地震や飢饉、また世界的な感染症の流行が起こっています。
モラルの低下と人間関係の崩壊
また不法がはびこるので、多くの人の愛が冷えるであろう。
マタイによる福音書24章12節
現代社会の大きな問題の一つは、モラルの低下と人間関係が希薄になっていることが挙げられるでしょう。
これらの再臨の前兆が陣痛のように徐々にその間隔と強度を増していくと聖書は述べています(マタイによる福音書24章8節)。
そして、最後の状態を聖書は次のように表現しています。
人々は世界に起こうとする事を思い、恐怖と不安で気絶するであろう。
ルカによる福音書22章26節
では、未来が見えなくて不安に苛まれるとき、わたしたちはどうしたらよいのでしょうか?
その答えを知りたい方は、下記の記事も合わせて読んでみてください!
まとめ
一般的な「予言」は「単に未来を当てる」ことですが、聖書の「預言」は「神のメッセージを伝える」ことです。
「自分の未来を予想してほしい」「自分の選択にアドバイスがほしい」という占いとも異なり、聖書の預言は具体的な未来予想やアドバイスではありません。
むしろそのポイントは、「キリストがどのように私たちの世界に終止符を打つのか」なのです。
それは同時に、この激動の世界も神が支配しており、最終的には勝利をおさめるというメッセージでもあるのです。
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参考文献
Nichol, F. D. (Ed.). (1980). The Seventh-day Adventist Bible Commentary (Vol. 5). Review and Herald Publishing Association.
エリアス・ブラジル・デ・ソウザ『21世紀のダニエル書講解』
ゲルハルト・ファンデル『ダニエルーバビロンの先見者』
辛 啓勳『よくわかるダニエル書』
辛 啓勳『闇は光に勝たなかった』
Habermas, G. R. (1996). The historical Jesus: ancient evidence for the life of Christ. Joplin, MO: College Press Publishing Company.
ロン・E・Mクルーゼ(ミラー・ジョエル訳)『神学博士が伝えたい神のことば。』福音社
プリニウス(國原吉之助訳)『プリニウス書簡集』講談社
エレン・ホワイト『各時代の希望 下巻』「第80章 ヨセフの墓の中に」福音社
ピーター・W・ストナー(池田光男訳)『科学は語る』いのちのことば社
アドベンチスト・ニュース・ネットワーク2022年3月10日配信